いいから いいから 2
何か上手くいかない事が起こった時に読んでごらん。「いいから いいから」は君の心を優しく強くする言葉。4・5歳頃からの読み聞かせにピッタリ!
☆際立った特徴
- シリーズ5作品中の1作。
- 温泉旅行へ行ったおじいちゃんと”僕”の様子を描く。
- 「いいから いいから」は、おじいちゃんのお決まりの台詞。
- おかしいな?困ったなな出来事も、おじいちゃんは全て受け入れる。
- おばけが出てきても驚くのではなく、おもてなしをして招き入れる。
- 26.6cm×20.4㎝の縦型の絵本。
☆読み聞かせのポイント
- 何があっても「いいからいいから」と受け入れるおじいちゃん。どうしてこんなにも優しく受け入れることが出来るんだろう。
- 「いいから いいから」に込められた作者長谷川義史さんの思いとは。

☆あらすじ
ある日おじいちゃんと僕は温泉旅行に行った。
すると、仲居さんはテーブルに3人分の食事を用意した。あれ。変だな。
夜になり布団へ入ると、急に苦しくなって目を開けたら、枕元でおばけが笑っていた。
僕は慌てておじいちゃんを起こすと、おじいちゃんはこういった。
「いいから いいから。ゆっくりしていってください。」
おばけが『うらめしやー!」って言うもんだから、おじいちゃんはお腹が空いているのでは?と心配した。
きっと体が疲れているのでは?とスペシャルコースのマッサージをしてあげた。
着物もしっとりしているからと、露天風呂に誘い、一緒に入って温まった。
そして、温泉から出ると、部屋で晩酌トーク。
冷蔵庫の中身が高いのでは?と心配するおばけに、「いいから いいから。おつまみも食べましょう!」とおじいちゃんは笑った。
二人の声を聞きながら、僕は眠りについた。
次の日起きると、おばけはいなくなっていた。
もう会いたくないような、もう一度会いたいような、不思議な気分で家に帰った。
家はやはり落ち着く。お母さんが冷たいお茶を出してくれた。
そして、安心した僕はトイレに急いだ。しかしトイレを開けると・・・
昨日のおばけがトイレに座っていた。僕はビックリした!
するとおじいちゃんは、「いいから いいから。ついて来たんですか。これもまた賑やかになっていいもんじゃ。」と笑った。

☆書店員の感想
温泉宿で2人のはずが3人分の食事を用意されても、お化けが寝床に現れたって、おじいちゃんは丸ッと受け入れます。男の子はえー!?の連続。でも次第に僕もお化けに慣れるからすごい。…人間って面白いね。
旅館でもしも人数に合っていない料理が運ばれてきたら・・・自分だったらどうしますか?私ならすぐに仲居さんに言ってしまうかもしれません。
寝ている時に枕元にお化けがいたらどうしますか?私ならもちろん「どっかいってー!!」と叫ぶか、必死に寝げることでしょう。だって怖いですもん。
でも、おじいちゃんは「いいからいいから」と両方を受け入れました。しかも料理に関しては「3人分も運んでくれて嬉しいね」といった感じですし、お化けに関しては招き入れて「ゆっくりしていって下さいね。」と、おもてなしまでしちゃうから、ビックリです。
おじいちゃんの孫の僕は始めは私達読者と同じ思いだったようなのですが・・・次第におじいちゃんペースというか、お化けを受け入れていきます。
怖がったり拒絶しないおじいちゃんに勇気づけられ、『大丈夫だな』と安心したのかもしれません。
おじいちゃんの「いいからいいから」精神や、僕のお化けへの”慣れ”を見ているだけでも面白い展開になってきました!

お化けの今までの苦労を労うおじいちゃんの姿は、お化けに対してリスペクトを感じます。”お化け”としてではなく、自分に出会ってくれた人を(出会いを)大切にしているように感じます。
旅館で出会ったお化けとは初対面のはずが、マッサージをしてあげたり混浴風呂に一緒に入ったり、しまいにはお酒とおつまみでまったりと二人で語り合い、親睦を深めていきます。お化けの今までの苦労や思い出を聞いてあげるおじいちゃんの姿は、カウンセラーのよう。沢山話を聞いてもらったお化けは「ありがとう。少し気が晴れました」と感謝するのでした。
朝になるとお化けはもう部屋にはいませんでした。
大人はここで、きっと沢山話を聞いてもらったお化けは満足して、この後成仏するんだろうなと思いますよね・・・さあ、どうなんでしょう♩

「いいから いいから」が口癖のおじいちゃん。おじいちゃんは、そもそも争い事を嫌う性格なのか、それとも出会いや面白出来事を楽しむ性格なのか。きっとそれはアンハッピーではなく、ベリーハッピー♩への合言葉なのかもしれません。
おじいちゃんは実はお酒を飲みながら「こんな私で良かったらいつでも話し相手になりますよ」とお化けに言っていたのですが・・・なんと旅行から帰った二人に、ついてきちゃっていました。でもお化けの姿は旅館にいる時の『どよ~ん』とした雰囲気と違います。
トイレの中にいたお化けは、ニコニコと気持ちの晴れやかといった表情で、「ついてきちゃった!」と男の子をビックリさせて遊んでいるように見えます。
なんだかお化けにとっておじいちゃんとの出会いは、とても素敵な物だったようですね。
一緒について行きたくなるほど、おじいちゃんは優しくて自分を受け入れてくれる存在になったという事でしょう。
男の子は、お化けがついて来た事に驚いていますが、家で待っていたお母さんはニコニコな笑顔です。きっとこの家で楽しい居候生活が始まるのでしょうね。
家族が増えることは嬉しい事。おじいちゃんの言う「いいから いいから」は、アンハッピーをハッピーに変え、さらに大きく大きくハッピーを膨らませる力があるのではないかと思いまいした。
- 作品名:いいから いいから 2
- 著者名:長谷川義史
- 出版社:絵本館