いってきまあす!
歩き始めた頃の子にピッタリ!近所を冒険したくなります!
☆3つのおすすめポイント
- くまの子の毛1本の描写からも、ワクワクした気持ちが伝わってくるような生き生きとした絵本。
- どんなに近場のお散歩でも、子どもにとっては全てが楽しい冒険!
- 遊んで帰った後の、くまの子の表情が、「とっても楽しかったー‼」と言っているよう。嬉しい気持ちになります。
☆あらすじ
ある日、くまの子が元気よく1人でお散歩に出かけます。
「いってきまあす!!」「どこへ行こうかな?」
くまの子は、今から小さな冒険に出かけるように、ワクワクドキドキして出発したのです。
玄関からなんて出かけません。冒険への出発口は、「お庭の柵」なのです。ちょうどくまの子が通れる幅に板が外れています。
さぁ、出発です。
山を登り(小さな砂場の山)、橋を渡り(ベンチの座面を歩いて進み)ピヨーン!と飛んだなら、そこにいた鳩たちがいっせいに飛び立っていき、くまの子は怪獣にでもなった気持ちです。
水たまりをジャブジャブ、ズボンが破れちゃっても気にしません!
塀だって登ります。気分は忍者なのでしょうか。あっとととっと・・・降りられないやって困っていた時に、くまのお父さんの助けが入りました。はーよかったね。
今度は二人で、冒険の続きです。さぁ2人はドコへいくのかな?
☆際立った特徴
地面や水たまり、信号のある交差点など、すべて色鉛筆の優しい筆致で描かれています。
きめ細かな色合わせは、この世界が優しく包み込んでくれるような暖かな世界観を表しています。そして、毛並みの描写一本一本から、くまの子の楽しそうな様子が伝わってくるようです。
ジャンプしたくまに驚いて、鳩がいっせいに「バタバタバタ」と飛び立つ様子や、くまが水たまりの上を「バシャー」と弾むように歩く様子は、本当に音が聞こえてくるように、生き生きと描かれています。
☆書店員の感想
とってもやんちゃな、くまの子が主人公の本書は、背景に色がありません。なんでなんだろうと考えてみました。正解は分かりませんが、私は、主人公のくまの子の見える世界を表現しているのかなと思いました。
視野が狭いというわけではなく、興味があるものにしか目がいかないような。 子どもは、周りなんか見ないで、好きな所に行って好きな遊びをして、大人は簡単に気づく”危険”があっても、へっちゃらでどこにでも行ってしまいます。
主人公のくまの子も同じように、鳩が居ることに気が付かずジャ~ンプ!したり、水たまりにジャブジャブはいってみたりと、やんちゃぶりを発揮しています。
とても、可愛らしいキャラクターに、「どんどん好きなことをして、楽しんでいる姿を見せてね!」と期待してしまいます。
自分の思うように遊んでいたくまの子ですが、お父さんと信号を渡る時は、そうもいきません。
横断歩道を、もっとゆっくり歩きたいのか・・・お父さんが手を引っ張るのに反して、くまの子は体を斜め後ろに倒して歩いています。グイグイっとお父さんが引いているように見えます。
外には楽しくてワクワクするような事が多くある一方で、交差点や走ってくる車のように、危険も沢山あります。
しかし、安全な所ばかりにいさせる訳にはいきません。危険が減っていくために、ルールを1つずつ親が教えていかなくてはいけません。
そんなことも、著者は伝えているように思いました。
裏表紙では、冒険から帰ったくまの子が、お母さんに楽しそうに話しています。
どんな話をしているのでしょうか。
楽しかった怪獣ごっこでしょうか、お父さんと信号を渡る練習をしたことでしょうか。
そばに行って聞いてみたくなりました。
- 作品名:いってきまあす!
- 著者名:文 渡辺茂男 絵 大友康夫
- 出版社:福音館書店