えらいこっちゃのいちねんせい
もうすぐ小学1年生になる子、早く小学生になりたい子にピッタリ!小学校ってどんな所かな?
☆際立った特徴
- 「えらいこっちゃ」は、主人公がよく呟いている言葉。自分を励ます言葉!
- 小学1年生らしい困りごとや驚いたこと、不安な事、嬉しい事を、1日の学校生活の中に描いている。
- 小学校に入学したばかりの子『アルアル』も描いている。こんなことを繰り返しながら慣れていくんだなと、読者も感じることが出来る。
- 就学前の子には小学校ってどんな事をするのかの予習になるし、「きっと楽しい事が待っている!」と勇気が湧く作品。
★作者かさいまりさんが本書の中に、保護者に向けてメッセージを書いています。
「学校に慣れるまで必死な1年生。どうしよう!びっくりしたー!こまったー!と色んな不安な気持ち全部込めて「えらいこっちゃー」と主人公は呟いています。(中略)そんな一生懸命な子どもの気持ちをゆったりと受け止めてあげたいですね」
☆読み聞かせのポイント
- 「えらいこっちゃ」はどうしよう!びっくり!困ったなー!など、不安な気持ちを込めて主人公の男の子が呟きます。主人公は1日に何度も呟くのですが、これは彼なりに自分への励ましの言葉。「頑張らなきゃ!」と一生懸命なんです。
- 小学校入学目前の子に、ぜひ読んで欲しいと思います。どんな事が小学校であるのかな?もちろん年中さんや年少さんも楽しめます。「小学校に行ったらね」と話してあげましょう!きっと楽しい事が待ってるよ★
- トイレ事情や給食は時間内に食べるなど、就学前とは違う小学生アルアルが沢山描かれています。こんな時はこうしたらいいね。と事前に教えてあげることが出来ますよ。
☆あらすじ
僕は1年生になったばかり。
教室の壁に貼ってある時間割が勉強!勉強!で、驚いた。
4回も勉強して、それからようやく給食だ。
勉強時間は勉強の事だけ考えるんだけど…はっ!気がついたら、違う事を考えてしまった。そしてまた、勉強の事を考えていたら・・・はっ!気がついたら寝てしまっていた。
皆が僕を見て笑ってる。はー勉強の事ばっかり考えていられないよ。
休み時間。みんなやりたい事を言い合って、ようやく鉄棒に決まった。
僕らは校庭の向こう側にある鉄棒に向かってトロトロしてたら、遊びの終了を知らせるチャイムが鳴ってしまった。時間の事、すっかり忘れてた。
授業がまた始まったんだけど、僕は急にトイレに行きたくなった。
先生に手をあげて言えばいいんだけど、先生はしゃべってるし、タイミングが分かんない。
でも我慢するしかなくて踏ん張ってたら、顔にそれが出てたみたい。
「どうしたの?」と僕に声を掛けた先生。もう限界!と「トイレ!」と言って教室を飛び出した。
すると後から後から何人も僕みたいにトイレについて来た。
やっと給食の時間。夢中で食べていたら、気がついたら周りのみんなはもう食べ終わっている。
「早く食べなきゃ!」と僕は焦った。みんなどうしてあんなに食べ終わるのが早いのかな。
昼の休み時間。色んな教室を見て回っていたら迷子になってしまった。
チャイムの音が聞こえる。もう休み時間が終わる。どうしよう。わかんない・・・!!!
あった!僕の教室!と思って飛び込んだら、あれ?先生が違うぞ?
廊下に出たら、隣のクラスから僕の先生が呼んでいる。あービックリした。
学校の終わりのチャイムが鳴った。
僕はランドセルをしょって玄関へ行った。すると先生が追いかけてきた。
「ランドセル空っぽだよ!」
えっ!?どうりでランドセルが軽いと思った。
その時、同じクラスの男の子が待ってるから一緒に帰ろって声を掛けてくれた。
僕は急に嬉しくなった。
走って玄関に戻り、校門まで一緒に行って、気がついた。
僕は左の道、あいつは右の道。「また明日な!バイバイ!」と手を振って別れた。
一緒に帰る友達が出来て嬉しいな。
☆書店員の感想
「えらいこっちゃ」はどうしよう!びっくり!困ったなー!など、不安な気持ちを込めて主人公の男の子が呟きます。1日に何度も呟くのですが、これは彼なりに自分への励ましの言葉。「頑張らなきゃ!」と一生懸命なんです。
まず、掲示板に貼ってある時間割を見て、勉強が4回も続いて(4時間目まであるという事)ようやく給食になると理解した彼は「えらいこっちゃ」と呟きました。
私は主人公の牧野君の気持ちがすごく分かるなと思いました。
今まで保育園や幼稚園では時間割表なんて物は無く、先生がざっくりとした今日のスケジュールを『朝の集り』で口頭で説明して1日を過ごすという形だったのではないかと思うのですが、(ボードにスケジュールを書いて示すという園もあるかもしれませんね)小学校では一週間の時間割が表にズラリと書かれていて、なんだか毎日勉強ばっかりしなくちゃいけない感じがするのではないかと思います。
今日も勉強ばかりするんだなと改めて感じた彼は「えらいこっちゃ」と驚いたのでしょうね。
余談ですが、私が6年生の子どもの授業参観に行った時の話です。私は時間割を見て目が点になりました。牧野君と同じく、勉強だらけの時間割に「えらいこっちゃ!!」と思ったんです。こんなに勉強するのかとビックリしました。
きっと牧野君は、時間割を見ながら給食まであと何回の授業があって、そしたら休み時間がある…頑張るぞ」と、自分にエールを送っているのでしょうね。
1年生アルアルが沢山描かれます。時間の感覚に慣れていなかったり、45分の勉強に集中できなかったり・・・。
45分の授業、1年生の初めの頃は座っているのがやっとだと、小学校の入学説明会の時に聞いたことがあります。先生方は子ども達が集中が続くように、様々な工夫を取り入れながら授業をしてくれているのですが、ウトウト寝てしまったり、休み時間にトイレに行かずに授業中にトイレに行きたくなる子がいたり、給食時間内に食べられない子がいるのも・・・どれもよく聞くので、これはもう『1年生アルアル』ですね。
これから先、彼らは少しずつ生活に慣れて、45分の授業を最後まで頑張れたり、休み時間内にトイレに必ず行くようにしたり、食べるスピードがだんだん上がって余裕で食べれるようになったりしていくのでしょうね。
1年生は毎日が頑張る事だらけ。だから失敗は笑わず、叱らず、優しい心で見守ってあげたいですね。
一緒に帰る友達が出来たラストシーン。今日一日の「えらいこっちゃ!」が全部チャラになる程、嬉しい出来事です。
最後には、ランドセルに荷物を入れないまま玄関へ行って先生に呼び止められるという今日最後の「えらいこっちゃ!」をしてしまいます。しかし!おそらく同じクラスの子なんでしょう。『待っててあげるから一緒に帰ろう!』と声を掛けてくれた子がいました。なんて嬉しい誘いでしょう!荷物を入れ忘れてしまったという”失敗”なんて気にしていられない!早くランドセルに荷物を入れて玄関へ戻らなくちゃ!!と思った事でしょう。
素敵な出来事ですね。一緒に帰る友達ができた!と喜ぶ牧野君です。
さあ、ランドセルの準備が出来て急いで玄関へ!友達が待ってくれています。「おまたせー!」の声に私は牧野君の嬉しさが溢れ出ているように思いました。
実は帰り道が別々で校門で別れることになるのですが、校門へ行って初めてその事に気がついた二人。それでも二人にとって校門までの帰り道がとっても嬉しい帰り道だったでしょうね。
「じゃあね!」「また明日ね!」の言葉が、二人にとって、明日への活力になるような、明日の学校が楽しみになるようなラストシーンだったと思いました。
今日1日牧野君は沢山『えらいこっちゃ』と思う事が起きたのですが、そんなことは忘れるくらい、この帰り道は嬉しい事だったと思います☆
- 作品名:えらいこっちゃのいちねんせい
- 著者名:文 かさいまり 絵 ゆーちみえこ
- 出版社:アリス館