おおきい ちいさい
「大きい」と「小さい」の違いが視覚で楽しめます。シンプル、だけど独特の絵とその変化が面白い、ファーストブックにもピッタリの絵本です!
☆3つのおすすめポイント
- 「大きい」「小さい」ってなに?大きさの比較、どちらが大きくて、どちらが小さいか、楽しい絵と一緒に自然と身に付きます。
- ページごとに変わる絵の雰囲気と、不思議な形の絵たち。何に見えるのかは見る人次第…の面白さが詰まっています!
- 文章の読み方一つで雰囲気が変わります。お子さんとの絵本コミュニケーションにおすすめです。楽しい読み方で、お子さんの笑顔が引き出されること間違いなし!
☆あらすじ
青い背景に、黄緑色の大きな縦長の楕円が左側に、右側にはその大きなものの30分の1ほどの大きさの同じ楕円が描かれています。「おおきい」と大きい字で書かれ、小さいほうの絵の近くには「ちいさい」と小さい文字で書かれています。
つぎは、黄緑色の背景に、朱色のような色と白色のグラデーションで描かれた四角があります。その右側には同じ絵で描かれた小さい四角が描かれていて、きゅっと小さく隅っこのほうにあります。
つぎはオレンジ色の背景に、中が真っ黒の大きい丸みを帯びた塊のようなものが。上や左側には、付箋のようなものが赤・緑・紫・青の4つついています。そしてそれを小さくしたものが右側に小さく描かれています。今度は黒くハッキリした字で、「おおきい・ちいさい」が書かれていますよ。
また、つぎは2ページ続いているページの中央に大きな山のように赤く突出したものが描かれていて、その山を横切るように、2本のオレンジ色の線のようなものがあります。その線と線の間は山の色が黄緑色に変化しています。そして、これと同じものを小さくしたものが右側にあります。
今度は、水色の空に大きな雲が浮かんでいます。その右斜め下には小さな雲が。ぷかりぷかりと浮かんでいるようです。
次のページは帽子のような、雲のような、かわいいUFOのようなかたちのものが、赤い背景に目立っています。白い物体で、中は5色ほどの線が縦に10本と横に4本引かれていて、チェックの模様のようになっています。見開き2ページの横に目いっぱいぎりぎりまで描かれていて、横長の絵です。この絵もその下に、同じ絵が小さくなったものがあり、中に描かれている線も同様に描かれています。
次の絵は、クラゲのような物が横長に描かれています。紫色の背景に、山吹色のクラゲのようなかたちのものが浮かんでいるようです。その下には同じようなかたちのものが6個描かれていて、一緒にぷかぷかと浮いているように見えます。
今度は赤い楕円を半分にしたような形のものに、その下の両はしに黒い楕円を半分にしたものがついていて、赤い楕円の上には黄緑色の楕円が2つと、細長いものの先をくるんと曲げたようなものが中心についています。
つぎは、緑色で先がとがっておらず角がない太い棒が、くるんと1回転したようなものあります。それが、左側から右側に向かって順に小さくなるように4つ描かれています。だんだんと小さくなっています。そして最後のページには、オレンジ色の背景に、黄緑色の縦長の物体。大きいものと小さいものとが向かい合って、まるで会話しているようにも見えます。言葉も、「おおきいよ」と声をかけているようなセリフのようです。

☆際立った特徴
大きい、小さい、の対比が視覚からハッキリと分かり楽しめます。
そして、「これ」という明確なものがないような不思議な絵に、なんの絵だろう?という興味がそそられ、見るたび、見る人ごとにいろんなものに見える面白さもあります。
また、「おおきい」「ちいさい」の書き方も絵によって違い、声に出して読むときにいろんなアレンジをして読むことで楽しみ方が広がります。
絵本の大きさは21㎝×20㎝で、丈夫なボードブックの作りになっています。小さなお子さんから長く楽しめる絵本で、成長して少し大きくなってからは「おおきい」「ちいさい」の文字にも親しみやすく、文字でも絵でも楽しむことができます。
☆書店員の感想
●「大きい」「小さい」ってなに?大きさの比較、どちらが大きくて、どちらが小さいか、楽しい絵と一緒に自然と身に付きます。
この絵本は、「0,1,2えほん」シリーズの絵本で、0歳から楽しめる絵本としてすすめられています。小さい月齢のうちは、おおきい、ちいさい、ということにピンとこないかもしれませんが、不思議な絵を見ながら自然と頭の中に入ってくるように思いました。
どのページも、大きいものと小さいものとが描かれています。丸だったり、四角だったり、面白い形だったり…。対比するものが同じ形・色で描かれているので、比較もしやすいように思います。「どちらが大きい?」「小さいほうはどっち?」とお子さんに声をかけながら楽しめますね。
大きいものもいいし、小さいものも可愛らしい。どちらも素敵、と感じるような絵だと思いました。
●ページごとに変わる絵の雰囲気と、不思議な形の絵たち。何に見えるのかは見る人次第…の面白さが詰まっています!
表紙から大きいものと、小さいものとが描かれています。表紙をめくった内側に描かれているものと同じ形をしています。色は違って、表紙のものはオレンジ色のグラデーションです。表紙の内側は黄緑色のグラデーションで、下のほうが白っぽくなっています。上から三分の一くらいのところにまっすぐの横線が入っていて、その先には黒い丸がちょこんと描かれています。横向きの顔のようにも見えますが、見る人によっては違うものに見えるのかもしれませんね。
この絵のように、輪郭がペンなどでハッキリ描かれておらず、ふんわりと色がつけられた絵もあれば、黒い大きな岩のようなものが描かれていたりもします。黒い大きな岩のようなものは、中が本当に真っ黒に描かれていて、印象的です。中に吸い込まれそうな、真っ黒な物体にじわじわと興味が湧きそうな雰囲気を感じます。
高い山のようなところを横切るようにしてオレンジ色の線が描かれている絵も、生き物でもなく、何かの模写でもなく、山かな…?何かな?と想像が広がります。線も色もハッキリとしていて、パッと明るい印象です。また、ページをめくるごとに絵の雰囲気が変わって、ふんわりグラデーションが優しい印象の絵や、ハッキリとした色が楽しい絵など、つぎつぎと楽しめます。
どの絵も、背景とのコントラストがハッキリしていて、小さいお子さんからでも見る楽しさを味わえそうです。
動物や、これ!とハッキリ分かるものではないこの絵本独特のイラストですが、どの絵も大きいものと小さいものが並んでいて、親子のようにも見えてきます。最後のページの黄緑色の山のようなものが向かい合っているように見えるものも、ちょっと離れているところから親子で呼び合っているような感じに見えてきて、どことなくほのぼのとした雰囲気がします。大きいものがあって、小さいものがある。小さいものが大きいものに寄り添って、温かく見守られて、包まれているようにも感じました。
この絵本を描かれた元永定正さんは、戦後の日本の美術界を象徴する人物の一人で、抑揚のある線や形、豊かな色彩に溢れる作品を数多く作られてきたそうです。そんな元永さんが手がけた絵本は、アートそのものなのですね。元永さんのインタビューにもありますが、絵本の依頼を受けたときも、型に当てはまらない、誰もやったことのないものをやるそうです。新しいアートは、アートの外からやってくる、と。また、新しいものは変なもの、だから不安や非難が生まれる、けれど、それは新しい時間が動き出す始まりであって、それが面白いと話されています。そんな元永さんの魅力がたくさん詰まった絵本、「おおきい ちいさい」。見る人によっていろんな楽しみ方があり、正解はない。子どもも大人もアートに親しみ楽しめる、シンプルなようで深い絵本のように感じました。
●文章の読み方一つで雰囲気が変わります。お子さんとの絵本コミュニケーションにおすすめです。楽しい読み方で、お子さんの笑顔が引き出されること間違いなし!
「おおきい」「ちいさい」という言葉も、絵によって書き方が変わっています。
「お、お、き、い」や、「おーきい」、「おーきーい」など、同じ大きいという言葉でも、声に出して読むときの読み方ひとつで印象がガラリと変わりますね。
長男、次男ともにこの絵本が好きで、ちょっと早く言ってみたり、ゆっくり言ってみたり、高い声や低い声、耳元で言ってみたり、抑揚をつけてみたり…など、ちょっとの変化でも楽しく感じるようで、読み方を変えて読んでみるだけでよく笑っていました。
ちいさい、という言葉も、「ち ち ち … ちっちゃい」や、「だん だん ちいさい」などのバリエーションもあり、最後のページに近づくにつれてさらに新たな刺激・楽しみに出会えます。
ただ読むだけでなく、読む人によって十人十色の読み方があって、お子さんの反応を見ながら親子で楽しみつつ読み進められますので、お子さんとのコミュニケーションの時間にピッタリです。
絵本は角が丸く作られていて、ボードブックでどのページも丈夫に作られているので、0歳の頃から長く楽しめます。0歳のころは色や絵の形が目に楽しくうつりそうです。少し大きくなってからは大きさの比較が楽しめ、3歳後半の次男は久しぶりにこの絵本を見て、文字を読んで「読めた!」という体験に喜びと楽しさを感じていました。タイトルの文字も、「おおきい」が大きく書かれ、その下に「ちいさい」と小さく書かれていて、文字からも大きい・小さいが区別して分かりやすく書かれています。文字の字体もページごとに変わっていて、絵も文字もいろいろな変化を楽しめます。
見るたびに新しい面白さに出会えるように思います。その時々の月齢でいろいろな楽しみ方ができる絵本のように感じました。
