おでかけのまえに
ピクニックに行く日の朝、あやこは嬉しくて大張り切り!おでかけの前の家族の準備が身近な描写で描かれ、ドキドキハラハラ、けれどほっこりするストーリーです。小さなお子さんにも、大人の方にもピッタリ!です。
☆3つのおすすめポイント
- ピクニックの日の朝です。とっても楽しみなあやこは、準備の手伝いも張り切りますが…!?あやこなりに一生懸命頑張って準備をしていきます!
- 色鉛筆で色が塗られているようなふんわりとした描写に、優しい日常の様子が写し出されています。
- お子さんの朝の支度は時間との勝負のようなときもありますね。そんなときにとんでもハプニングが起こってしまったりしませんか?そんなときの対応に困ってしまうときもありますが、うちもあるある~!と共感できる部分も多いお話です。
☆あらすじ
日曜日の朝。あやこは飛び起きて、外を見ました。
とってもいい天気!今日はピクニックに行く日です。
台所では、お母さんがお弁当を作っているところでした。おいしそうなおかずがたくさん並んでいます。そのすみであやこは朝ご飯を食べています。
あやこはいいことを思いつきました。
お母さんがおかずを作っている間に、テーブルに並んでいるおかずをお弁当箱に詰めるお手伝いをします。「お母さん、見て!」とあやこは誇らしげ。ですが、お弁当の中やテーブルの上はぐちゃぐちゃになってしまっています。お母さんはビックリ!
あやこはお手伝いしたことをお父さんに教えてくるね、と、お父さんのもとへ向かいます。
お父さんは髭剃りの真っ最中。あやこはお父さんのバッグを見つけました。まだ口が閉まっていないので、閉めてあげようとしますが、ひもが邪魔になり、なかなか閉まりません。
あやこがそのひもをひっぱると…中身が全部飛び出してしまいました。
お父さんにそのことを伝えます。すると、お父さんは怒ることなく、あとはしておくからあやこは着替えなさい、と話します。
お母さんと一緒にお着替えをしました。あやこが一番気に入っている洋服を着せてくれました。
もうすぐで出かけるから、お手伝いはもう結構よ、とお母さん。
あやこは鏡の前に座り、静かに待っています。鏡を見ているあやこ。
もっとキレイにして出かけよう、と…お母さんの見様見真似でしょうか、お化粧を始めました。あやこの顔は真っ赤な頬紅と口紅、おしろいで白いお顔になってしまいました。
お母さんがタオルでごしごし拭いてくれました。
お父さんに言われて靴を履いたあやこ。待ちきれず、外に飛び出しました。
すると、転んでしまい洋服は泥だらけ。洋服を着替え、いよいよ出発します。
ばんざい!とニコニコ満面の笑みであやことお父さんとお母さんは出発しました。
☆際立った特徴
絵本の大きさは22㎝×21㎝で、正方形に近いかたちです。大人の片手を広げたくらいの大きさの絵本となっています。
あやこがお父さんとお母さんと一緒にピクニックに行く日の朝が、あやこ目線で描かれている絵本です。小さいお子さんを育てている方にとっては「あるある!」な日常風景なのかもしれません。子どもがこんなことをしてしまったとき、どうしましょう。温かく考えさせられるような、子どもの失敗も見守ることの大切さも考えさせられるような、ちょっとハラハラ、けれどほっこりするようなお話です。
☆書店員の感想
●ピクニックの日の朝です。とっても楽しみなあやこは、準備の手伝いも張り切りますが…!?あやこなりに一生懸命頑張って準備をしていきます!
あやこは、絵を見た感じでは3歳から4歳ごろの女の子でしょうか。ピンクの可愛いお人形を抱いて、朝起きました。
今日はピクニックです!ピクニックに持っていくリュックサックも大切そうに持っています。窓を見て、晴れたことを確認すると、「ばんざい!」と嬉しそうです。
ピクニックといえば、楽しみなのはやっぱりお弁当ですね!お母さんは朝からせっせとお弁当のおかずを作っています。その後ろのテーブルで、あやこは朝ご飯を食べ始めました。
忙しそうにおかずを作っているお母さんのために、と思ったのでしょう。あやこはテーブルの上に並んでいるおかずを、あやこなりにお弁当に詰めました。
長い菜箸を使い、おにぎりや煮物、からあげ、卵焼きなどのおかずをぎゅっと詰め、リンゴはまるごと入っています。おたまや菜箸、あやこの手にはご飯粒がいっぱいついていて、おにぎりの形が崩れているものもあります。お母さんはこのようすを見て、とってもビックリしたのかなと想像しました。牛乳はこぼれていて、ジャムのビンも倒れています。イラストを見て読んでいた私もビックリしましたが、なんだか絵本の世界の中だけとは思えないリアルな感じが伝わってきました。このあと、お弁当はどうしたのでしょうか…とっても気になります。
そのあとも、お父さんのバッグをしめようと手伝って中身を散らかしてしまったり、お着替えしたお洋服を汚してしまったりとハプニングは続きます。けれど、あやこはピクニックが楽しみで楽しみで仕方がない、といった気持ちもとても伝わってきます。
いつもとは違う特別なおでかけは、いつも以上にワクワクしますね!
ワクワクした気持ちが先走って、とっても張り切ってしまうあやこなんだろうな、と見ていて微笑ましい気持ちになってきました。
●色鉛筆で色が塗られているようなふんわりとした描写に、優しい日常の様子が写し出されています。
絵は主に右側と左側で、絵と文章が分けられて描かれています。お話を読みながら、あやこの行動がじっくり見られ、お父さんとお母さんと一緒に準備をしているところでは、どんなお話をしているのかな、と想像が膨らみます。
絵は全体的に色鉛筆で描かれていて、濃淡もあり、あやこのほおの赤みなども優しく塗られ、ふわっと優しい印象です。あやこの家族の温かい雰囲気が伝わってくるように思いました。
また、あやこがお気に入りの洋服を着たり、靴を履くシーンでは、あやこがピックアップして描かれ、後ろ側にいるお母さんやお父さんは背景と同化して塗られているような描写があります。一生懸命に頑張っているあやこに注目がいくような感じでもありますし、ほかの絵との違いも引き出されているようでつぎつぎとじっくり見たくなるような絵です。
準備段階ではあやこの表情が中心で描かれていますが、最後の出発の絵では、お父さんもお母さんも優しく微笑んでいます。みんなで一緒に笑顔で出発する姿がすてきな雰囲気で、ハプニングが続きましたがほっと安心するようなシーンに思いました。
●お子さんの朝の支度は時間との勝負のようなときもありますね。そんなときにとんでもハプニングが起こってしまったりしませんか?そんなときの対応に困ってしまうときもありますが、うちもあるある~!と共感できる部分も多いお話です。
あやこが準備するシーン、見ていてドキドキしました。(笑)
お弁当がぐちゃぐちゃになってしまっているところでは、つい「あ~!せっかくおかず作ったのに…」と思ってしまいました。あやこのお母さんはビックリして「まあ!」と言った表現しかありませんでしたが、私だったらついつい怒ってしまいそうだな…と思いました。(笑)
お化粧をしているあやこにもビックリ!です。けれど、実際にしていて、振り向いたときにこの絵本のあやこのようなお顔になっていたら、笑ってしまいそうです。
親から見ると、準備中のハプニング、となってしまうかもしれませんが、あやこにとっては「お手伝い」なのかな、と思いました。とても楽しみな気持ちがあやこを動かしたのかもしれません。洋服を着たのに、汚してまた着替える…というのも、本当に日常茶飯事です。我が家はお出かけの時にお気に入りの服を着たい、と言って準備をしたときには必ず出発の直前に着替えます。(笑)赤ちゃんの時は出発直前になってうんち、それも腰から漏れている…なんてことがなぜかしょっちゅうあったので、毎回必ず時間に余裕を持って準備していました。
お子さんとおでかけは、準備の段階から何があるか分かりませんね。
けれど、あやこのようすを見ていて、子どもには子どもの考えがあるのだな、困らせよう、いたずらしようと思ってやっているのではないんだから、叱る必要はないんだな、と感じました。あやこなりに一生懸命身支度をしている様子が微笑ましく思えてきます。
おでかけの前のお子さんとのやりとり、いかがですか。成長していくとだんだん手がかからなくなり、大きいお子さんがいる大人の方が読むと、懐かしい気持ちにもなるかもしれません。
「おでかけのまえに」、各家庭それぞれのストーリーがあるように思います。お子さんもあやこと同じ目線で一緒に準備しているような気持ちになり、ピクニックに行くワクワクな朝を思い出しながら、同じように楽しめるように思いました。