おとうさんがおとうさんになった日
子どもの誕生日の読み聞かせにピッタリ!産まれた喜びを伝えるチャンスです★
☆3つのおすすめポイント
- お父さんがお父さんになったと感じた出来事を、その時の思い出と共に紹介。
- 3人目の赤ちゃんを自宅出産で迎える家族と、産まれるその瞬間の喜び。
- 生まれて来てくれた事に感謝を伝えるきっかけにもなります。誕生日の読み聞かせに◎もうすぐお兄ちゃんお姉ちゃんになる子ども達にもぜひ読んであげて!
☆あらすじ
もうすぐ3人目の赤ちゃんが産まれる、ある家族のお話。
お父さんは、赤ちゃんを迎える為に職場で休暇をとりました。上のお兄ちゃんと妹も、家族が集って嬉しい!今からどんな事が起きるんだろうとはしゃいでいる様子です。
お母さんとお父さんは、自宅で赤ちゃんを迎える決心をして、準備を進めてきました。いよいよ予定日間近。お母さんのお腹ははち切れそうな程大きく膨らみ、移動するにもヨッコラヨッコラとゆっくり歩きます。お父さん遊んで!とべったりくっつきます。
そうだ!せっかくお父さんがいるんだからと、子ども達はお父さんに聞いてみました。
「お母さんは赤ちゃんが生まれてお母さんになったの?」「じゃあ、お父さんはいつおとうさんになったの?」「お父さんは赤ちゃん産まないのにどうしてそう思ったの?」質問攻めです。
「教えて教えて!お父さんがお父さんになった日のこと」
「まいったなぁ」と笑い、お父さんはお兄ちゃんの生まれた時の病院での立ち会い出産の事を話します。
「お父さんがお父さんになった日って、眩しいんだ。震えるんだ。」
2人目のあこちゃんが生まれた日の朝、里帰り出産で立ち会えなかったものの、産まれたと電話をもらった朝の事を話します。
「お父さんがお父さんになった日っていつもの景色が輝いてみえるんだ」
病院にとんで行ったら、お父さんにそっくりで、くすぐったい気持ちになったことも話します。
「お父さんがお父さんになった日ってなんだかくすぐったいんだ」
そんな事を思い出していると、お母さんのお腹が痛くなってきました。いよいよ陣痛。赤ちゃんが産まれる時がきました。さて、3人目の誕生の瞬間、お父さんはどんな気持ちになるのでしょう。一緒に立ち会う子ども達は、何を感じるのでしょうか。元気いっぱい、新しい命。みんなで迎える新しい家族。
赤ちゃんが生まれて嬉しい日の物語・・・★
☆際立った特徴
「おかあさんがおかあさんになった日」の続編です。
本書は、お兄ちゃんお姉ちゃんがいる家族の、3人目の赤ちゃんの誕生を”自宅出産”という形で迎える物語。
お父さんがお父さんになるタイミングっていつでしょうか。赤ちゃんを授かったとわかった時?赤ちゃんが生まれた時?初めてお父さんと呼ばれた時?
主人公のお父さんは、その素晴らしい”お父さんになった時”の話を教えてくれます。このお父さんの場合は、どんなタイミングでしょうか。
本書は色鉛筆で描かれています。絵にそれぞれの人物が話している言葉が書き込まれているのが特徴的です。1人1人の細かな感情の変化を、話し言葉でも表情を見ていても伝わってきます。
そして、なんといっても”目”です!その時の感情をむき出しにしているように思います。
特に、陣痛が始まった時のお母さんの目、グーッと力が入って、見ているだけで痛くなりそうです。
陣痛が進み、目も開けられないほどの痛みが襲ってきた時、おそらく陣痛にこらえるお母さんの手をぐっと握るお父さんも、「お母さん頑張れ!」と力が入った目をしています。思わず、見ているこちらまで泣きそうになります。
そばで見守る子ども達も、心配そうにお母さんを見ています。
「産まれる瞬間を見逃すまい。でもお母さん痛そうだな。」と心配し、怖い気持ちを抑えて、見守り続ける頑張ってる目。
”赤ちゃんの誕生”という、かけがえのない瞬間を家族で迎えます。その日は「お兄ちゃんはもっとお兄ちゃんに、あこちゃんはお姉ちゃんになった日」となったのです。
☆書店員の感想
たいていのお母さんは、赤ちゃんを授かってから、出産までの月日の間に、徐々にお母さんの自覚が芽生えます。
つわりを乗り越え、だんだん出産に向けて体が変化し、胎動も感じ、心の準備が少しずつ出来てきた頃、いざ出産となります。
赤ちゃんが産まれた時には「私はお母さんになったんだ」ということを、はっきり心から感じます。
お父さんは、どうなのでしょうか。私は今まで考えたことがなかったので、そう聞かれると・・きっと世のお父さん方も困ってしまいますね。
でも、主人公のお父さんには、3回の明確にお父さんになった瞬間があったようです。純粋に、素敵なお父さんだと思いました。
主人公の家族は、どうして自宅出産を選んだのでしょうか。その決断は、上の子ども達への、そして生まれてくる赤ちゃんへの愛情からの選択だったのだろう私は思いました。
自宅出産の醍醐味は、なんと言っても家族がすぐ側で、出産の瞬間に立ち会えるということです。
出産の瞬間は、私なりに正直に表現すると”異常”な体験です。
陣痛の痛みの波に合わせてお母さんがいきんだり、痛みが収まればシーンと静まる時間があったり、その繰り返しでどんどん赤ちゃんがどんどん降りてくるのですが、そばで見ている家族にとって、それは異常で怖さも感じる時間ではないでしょうか。私なら、怖くて逃げ出してしまうかもしれません。
でも、主人公の子ども達は側で見守り、眠い目をこすって、その瞬間を目に焼き付けようとしている。『すごいなー強いな』と関心するばかりです。
お父さんお母さんは子ども達に『生命が産まれる』という素晴らしい瞬間を体験・体感してほしかったのでしょうね★
おぎゃーおぎゃーと赤ちゃんの元気な声が部屋に響き渡り、ようやく安心して喜ぶ家族。本当に素敵です。
●子どもの誕生日の読み聞かせにピッタリ
私には3人子どもがいますが、事あるごとに出産時の話をします。「あなたが生まれた時は、こうだったんだよー」「君はとっても時間がかかって大変だった。」なんてお話してあげると、僕は?私は?と何回も話しているのに、何度も同じように聞きたがります。かなり手こずった出産だったって事が、なぜか面白いらしく、1人ずつ違う大変だったことを話すと、喜びます。皆がテッパンで笑い合うネタでもあります。
私が大変だったことが、「自分も精一杯頑張って産まれた」事に結びつくのかもしれません。何歳になっても自分だけの特別な誕生日は、産まれたことの喜びを伝える大チャンスです!
本書は、産んだお母さんではなく、側で見守ったお父さん・子ども達の目線で出産時の細かな様子や、気持ちの変化を描いています。読んだ子どもも一緒に生命の誕生を、体感できるように思います。
「おとうさんがおとうさんになった日」は、上の子どもにとって「お兄ちゃんお姉ちゃんになった日」でもあります。ぜひ読み聞かせのあとに、その子の誕生の瞬間も話してあげてくださいね★
家族みんなに不思議と明日への力が湧いてくる、”誕生”の1日を覗いてみませんか?
- 作品名:おとうさんがおとうさんになった日
- 著者名:長野ヒデ子
- 出版社:童心社