ぞうきばやしのすもうたいかい
勇ましい虫たちの、迫力満点の相撲大会です!昆虫が大好きな子にピッタリ!本物のようなリアルな虫たちに、ドキドキハラハラ…元気いっぱいの闘いを応援したくなります。
☆3つのおすすめポイント
- 昆虫同士の闘い!どちらが勝つのでしょうか。結果も気になりますし、両者どちらも応援したくなります。
- 本物のような描写に、つい触れてみたくなるような気分になってきます。リアルな質感を、イラストから感じることができます。
- お子さんは虫が好きですか?虫が好きな子も、実際に見るのがちょっと苦手な子も、昆虫のいろんな姿を見て、楽しめる内容です。
☆あらすじ
雑木林の相撲大会が始まります。
一番はじめの試合は、カナブンとタマムシです。切り株の上で、両者じっと見合っています。どちらも体がきれいな色で光り輝いています。
勝負は、カナブンがタマムシを追い出し、カナブンの勝ちです。タマムシはひっくり返ってしまっています。
次の試合は、ダンゴムシとカマキリです。カマキリの視線が鋭く、臨戦態勢に入っているようです。
結果は、ダンゴムシの勝ちです!なんと、ダンゴムシがカマキリの前足にしがみつきました。カマキリはビックリしてしまいました。
次は、オサムシとカメムシです。
こちらは、お互いに臭いにおいを出して、両者ひっくり返ってしまい、引き分けとなりました。
今度はミドリシジミとオオムラサキです。お互いにじっくり見つめ合っています。
ミドリシジミが、オオムラサキの周りをぐるぐると飛び回りました。オオムラサキは、目が回ってひっくり返り、負けてしまいます。というわけで、ミドリシジミの勝ち。
最後にクワガタとカブトムシの闘いです。2匹並ぶと、切り株から落ちてしまいそうな大きさで迫力満点!いざ勝負!
どちらも強いです。クワガタが、大きなあごでカブトムシのツノを捕まえました。クワガタが先手を打った…と、思いきや…太いツノで、クワガタを放り投げました。
カブトムシの勝ち!
雑木林では、相撲大会がまだまだ続くようです。
☆際立った特徴
どのページにも、いろんな昆虫が出てきます。昆虫好きにはたまらない内容です。
昆虫の描写もとてもリアルで、形、飛び方、羽の質感、体の光沢まで手をかけ描かれていて、昆虫のリアルさに対するこだわりを感じます。
昆虫の特性を知ることができるような内容もあり、昆虫同士がまるで力士のように土俵上で闘う姿がかっこいいです。両者どちらが勝つのか気になってしまいます。
絵本の大きさは22㎝✕21㎝となっています。
☆書店員の感想
●昆虫同士の闘い!どちらが勝つのでしょうか。結果も気になりますし、両者どちらも応援したくなります。
表紙をめくると、いろんな種類の昆虫たちが、相撲大会の会場となる切り株のまわりに集まってきています。出場する虫を応援してあげるのか、はたまた自分自身が挑戦するのか…、とてもにぎやかです。
第1試合のカナブンとタマムシがすでにスタンバイしています。
カナブンとタマムシが向き合っています。大きさで比べるとタマムシのほうが大きいですが、相撲は何が起きるかわかりませんね。大きさは関係ないのかもしれません。カナブンがタマムシを押し出しました。両者真剣勝負、本当の力士のように見えてきて、勇ましいです。
ダンゴムシとカマキリの闘い。大きさでは圧倒的にカマキリが有利です。鋭いかまのような手の武器もありますので、カマキリにとっては余裕の闘いのように思っていたかもしれませんね。しかし!そのカマキリに果敢に飛びかかっていったダンゴムシ。ダンゴムシにこんな力があったとは!ビックリしました。カマキリもビックリして、尻もちをついてしまいました。ダンゴムシの作戦勝ちだったのかもしれません。
オサムシとカメムシ。カメムシは、実家によく出ました。カメムシが大量発生した年は大雪になるという噂もあったり、とにかく臭い虫代表ですね。この本のカメムシは、オレンジ色に黒っぽい模様があります。実家によくいるカメムシは茶色なので、いろんなカメムシがいるんですね。臭いけれどこの本のカメムシはキレイな色だなと思いました。対戦の結果は、お互いに、お互いのニオイでやられてしまい引き分けに。お互いに強烈なニオイなんですね。
蝶々対決は、ミドリシジミが勝ちましたが、オオムラサキが負けたときに羽の裏側を見せてくれました。とってもキレイな紫色で、名前の由来はここから来ているんだなと感じました。
クワガタ対カブトムシは、男の子の夢の対決ですね。2年生の長男も、結果がどうなるのか、ドキドキしているような表情で真剣に読んでいました。絵の迫力もあるので、カブトムシが勝ったシーンを見て、「すごい!!」と感動していました。大物同士の対決、見応えがありました。
●本物のような描写に、つい触れてみたくなるような気分になってきます。リアルな質感を、イラストから感じることができます。
虫たちがたくさんでてくるのですが、本当にどれも本物のようです。クワガタとカブトムシの光沢感は、写真では?と思ったくらいでした。何で描かれているんだろう?と、じっくり見れば見るほど、2匹の光沢感と質感に引き込まれていきます。体がちょっとかたそうな、強さを表現しているような体で、2匹の勇ましさが伝わってきます。
表紙で2匹がまるで睨み合っているかのように描かれていて、このときから相撲大会は始まっているのかもしれないと感じました。お互い、ライバルなのでしょうか。
また、蝶々の羽の繊細さも絵のタッチから感じられます。そっと触らないと壊れてしまいそうな、けれどとても優雅で美しい色と模様が描かれていて、昆虫の奥深さを感じます。
ダンゴムシとカマキリのようすも本物のようで、カマキリはぎろっと睨んでいるかのような表情に強そうな手、細くて長い足。そんな強そうなカマキリがひっくり返っている姿をあまり見かけることがありませんので、ダンゴムシに負けてひっくり返っているようすは、カマキリのイメージとは違い、新鮮な感じがします。
カナブンとタマムシの光沢感も素晴らしいです。お互いに光り輝いているのを見せつけているような、そんな感じにも見えてきます。カナブンは、緑の体に黄色の照り、カナブンは緑の体に紫色の筋のような模様が入り、どちらの体もピカピカとしています。どちらも眩しいような体の光沢感です。
また、最後の闘いはセミ対カミキリムシのようですが、裏表紙のセミはおしっこをしながら飛んでいっています。勝ったのでしょうか、それとも負けてしまったのでしょうか。想像が膨らみます。
●お子さんは虫が好きですか?虫が好きな子も、実際に見るのがちょっと苦手な子も、昆虫のいろんな姿を見て、楽しめる内容です。
うちの長男も次男も割と虫は好きで、長男は全体的にじっくり昆虫のようすを見ていましたが、次男はダンゴムシに興味津々でした。あとは、蝶々とクワガタ・カブトムシも気に入って、指をさして名前を言っていました。
昆虫が大好きな子も楽しめますし、ちょっと苦手な子もこの絵本を通して昆虫を楽しめると思いました。この本に描かれた昆虫ですと動きませんし、じっと見ることができます。また、羽の柄や、昆虫の触覚や節々、体のようす隅々までじっくり見ることができます。
少し毛が生えているようすや、ずっしりとした手足、瞳もなかなかじっと見られないので、1匹1匹細かいところまで観察するのも楽しいように思いました。
強そうな昆虫が小さい昆虫に負けてしまうちょっと意外な姿や、土俵の上でお互い見つめ合っている姿は、虫以上に大きい存在にも見えてきます。切り株が土俵なのもステキですね。
自然界に行くと、もしかするとそんな緊迫した場面に出会うこともあるかもしれません。この本をきっかけに、観察をしに外に出かけるのもいいかもしれませんね。
- 作品名:ぞうきばやしのすもうたいかい
- 著者名:広野多珂子 作/廣野研一 絵
- 出版社:福音館