ちゅうしゃなんかこわくない
注射が苦手な子にピッタリ!痛くない注射はどんな注射なんだろうね?注射嫌いがほんの少しでも和らぐような、不思議で面白いストーリーです。
☆3つのおすすめポイント
- 注射が嫌いな”僕”は、診察室で「今すぐ逃げ出したい」と思うと気持ちがにゅっ!と抜け出して、注射の痛くない国へ行ってしまいました。
- 自分だけかと思ったら、友達もみんな本当は怖かったみたい。さあ、痛くない注射っていったいどんな注射?本当にあるのかな??
- 大人でも怖い注射、子どもだって怖いし痛いし逃げ出したいのです。注射が大嫌い&怖くて仕方ないという気持ちが少しでも楽になるような和らぐようなストーリー。
☆あらすじ
今日は注射をしなくちゃいけない日だ。注射は痛くて怖くて大嫌いだ。
「痛くない注射ってないのかな?」注射が痛くない国があったら、飛んでいきたいな。
病院へ行くと、他の友達も来ていた。「おまえ注射怖いんだろ?」みんなが僕を見て笑った。僕は、本当は怖いけど「怖くない!」と言い返した。僕の番がやってきて、診察室へ入ったけど、やっぱり怖い・・・。「ちゅうしゃはいたい。ちゅうしゃはいたい・・・。」すると体から僕の気持ちがにゅ~と飛び出した。注射の痛くない国へ着いた僕を、お医者さんが待っていた。マスクを外したお医者さんは、さっき嫌味を言ってきた”あいつ”だった。なんであいつがここにいるんだろう。そうか、あいつも注射が怖くて逃げてきたんだな。
あいつは今まで見た事のない位大きな注射を僕にブスッと刺した。「ぎゃーん!痛いよー!」僕は大きな声で泣いた。
悔しいのでやり返したら、あいつは僕よりも大きな声で「ぎょえーん、痛いよー!」と泣いた。泣いている僕たちのところへ本物のお医者さんが来た。『さあさ、痛くない注射をしますよ!』痛くない注射って一体どんな注射だろう?
そこへ、ちょうちょとてんとう虫が、今まで見た事のない小さな小さな注射を運んできて、そして、あいつにブスッと注射をうった。『ほらね、あんまり痛くないだろ?』「ほんとだ」とあいつは泣き止んだ。
すると病院にいた他の友達もみんないっせいにやってきた。みんなもここで打ってもらう気だ。なーんだ、みんなも本当は注射が怖かったんだね。
今度は僕の所へちょうちょとてんとう虫が飛んできた。僕の番だ。僕は目をつぶった。ほんとうだ、ちょっとチクッとしたけど、それほど痛くない。
「ほら、注射もう終わったよ」お医者さんの声がする。目を開けるとそこは元の病院。
注射なんか怖くないもん。僕もあいつもニッコリ笑った。
☆際立った特徴
「注射はいたい」」と自分自身に暗示をかけているようなシーンがあります。そんな僕の”気落ち”が、にゅ~と抜け出し、「注射の痛くない国」へ飛んで行ってしまいます。
どうせするなら痛くない方がいい!でもどうやって?答えを見つけることが出来るでしょうか。年に何度か経験する注射。怖いし痛いし、嫌いだって言っている主人公の男の子。じゃあ、どんな注射なら痛くないのかな?怖くないのかな?不思議だけど楽しい、ほんの少し注射嫌いを克服するヒントがかくされているような絵本です。
☆書店員の感想
注射が嫌いな”僕”。診察室で「今すぐ逃げ出したい」と思うと気持ちがにゅっ!と抜け出して、注射の痛くない国へ行ってしまいました。
頭の中でいくら「今日は注射を打たなくちゃいけない。」「もう逃げ出せない」と分かっていても、診察室で先生の前に座った時が一番緊張する時間ですよね。逃げたい、怖い、打ちたくない!と強く思った彼の気持ちがよくわかります。
そして幽体離脱のようになって「注射が痛くない国」へ向かいます。注射の痛くない国で彼を待っていたのは、彼をからかって笑っていた”あいつ”でした。”僕”より早くそこに居た”あいつ”は、もしかしたら”僕”よりも、誰よりも注射が嫌いで怖いと思っていたのかもしれませんね。笑
自分だけかと思ったら、友達もみんな本当は怖かったみたい。さあ、痛くない注射っていったいどんな注射?本当にあるのかな??
”注射が痛くない国”で注射をしてくれたのは、なんとちょうちょとてんとう虫でした。小さな小さな注射器だから痛くなったのかな?白衣を着た先生が打ったんじゃなかったから痛くなっかのかな。それとも、病院にいたみんなも本当は怖かったのだと知って安心したからなのかな。
もしかしたら、みんなも怖くて本当は嫌なんだ。自分だけが心が弱いわけじゃないんだと知ったことが、一番彼に勇気をくれたのかもしれないなと私は思いました。
私も注射が苦手です。就学前に一度逃げ回ったことがあります。だから、彼の気持ちが抜け出てしまうほど怖いと感じた思いが痛いほど分かります。
大人でも怖い注射、子どもだって怖いし痛いし逃げ出したいのです。注射が大嫌い&怖くて仕方ないという気持ちが、少しでも楽になるように考えた我が家の方法
本書を読んでいると、きっと注射が苦手な子に「怖いのは自分だけじゃないんだな」と伝わるように思います。そして、ちょっぴり勇気をくれますね。
注射ってどうしてこんなに怖いと思ってしまうのでしょうね。私は痛さよりも針が自分に刺さることそのものがとにかく怖いです。でも3度の出産で採血を何度もしていくうちに、予防接種は克服できてきました。採血は未だに苦手ですが・・・。ちょっとだけ先に克服できた先輩として、必死に嫌がる我が家の子ども達には注射の時にアドバイスしている事があります。それは深呼吸する事。打たれる前に息をすって、ゆっくり吐くことで腕の力が抜けます。
怖いと思うとすごく腕に力が入ってしまいます。専門家では無いので、これは正しいのかどうかは分からないのですが、私は緊張した子どもの腕の力を少しでも抜かせてあげたくて、この声掛けをしています。暗示にかかったかのように、「思ったより痛くなかったー」と言ってくれるので、不思議なものだなと内心思います。
どんな方法でも良いと思います。目を閉じるでも、針を見ないでお母さんを見ているでも、なにか子どもが安心できるような暗示をかけてあげて、少しでも痛みが和らいでくれたら、嬉しいですよね。
- 作品名:ちゅうしゃなんかこわくない
- 著者名:作 穂高順也 絵 長谷川義史
- 出版社:岩崎書店