どろんこハリー

3歳頃から読み聞かせにピッタリ!お風呂嫌いなハリーが泥んこになるまで遊んだよ。自分からお風呂に駆け込んだのはなぜでしょう?
☆特徴
- 1956年アメリカ合衆国で白黒版で出版された絵本。
- 2002年に原著で絵を担当したグレアム自身が色彩をくわえて再版。
- 色は白・黒・オレンジ・グリーンの4色。
- 日本では1964年に出版。180万部のロングセラー本。
- 「どろんこハリー」シリーズ4作品。
- 31㎝×22㎝の縦長の絵本。上半分から2/3が絵、下が文章。
☆読み聞かせのポイント
- 最初どうしてハリーはお風呂が嫌いだったのかな?後半自分からお風呂に入ったのはどうしてかな?ハリーの気持ちの移り変わりを考えてみましょう!
- 町の風景や暮らしは、日本少し違っている部分もあります。「街中に機関車が通っているね」とか、「家の中でも靴を履いているね」など、発見を楽しむのもおススメです!
- 自分がハリーだと気がついてもらえない時、最後に気がついてもらえた時のハリーの気持ち、体を洗う家族はどんな気持ちなのか、絵を見ながら想像してみましょう!
☆あらすじ
ハリーは黒いブチがある白犬です。
なんでも好きだけど、お風呂は大嫌い。
ある日、お風呂にお湯を入れる音が聞こえると、ハリーはお風呂のブラシを持って逃げだしました。
裏庭にブラシを埋めて、それから庭の外へ出かけたハリー。
道路工事をしている場所や鉄橋の上で遊んで、その後空き地で他の犬と鬼ごっこを楽しみました。
しかし気がついたら白犬だって事が分からない位、汚れで体が真っ黒になってしまいました。
そろそろ家に帰らないと家の人が心配するなと思ったハリーは、急いで家へ帰りました。
家につくと、ハリーはじっと座って、庭から家を見ていました。
しかし、そんなハリーを家の中から見た家の人は、ハリーだとは気がつきません。
ハリーは一生懸命知っている芸を見せて「僕だよ!」と伝えようとするのですが、気付いてもらえません。
とうとうみんなは家に入ってしまいました。
ガッカリしたハリーがトボトボ歩いて外へ出て行こうとした時、庭に捨てたブラシを思い出しました。
ブラシを掘り返すと、嬉しそうにワンワンと吠え、ブラシをくわえて家へ駆け込み二階のお風呂場に向かって一目散に走り出しました!!
その行動に驚いた家の人は、ハリーの後を追ってお風呂場へ。
浴槽に飛び込んだハリーは、口にくわえたブラシを家の人に渡して「洗って下さい」とアピールします。
ハリーだとまだ気がついていない家の人でしたが、真っ黒いハリーを洗ってあげる事にしました。
泡ぶくまみれのハリーは、魔法みたいに体の汚れが取れていきました。真っ黒だった体が白に戻っていきました。
すると家の人は「君はハリーだったんだね!」と、ようやく気がつきました。
ハリーもしっぽをブルンブルン振って応えました。
お風呂から上がって夕ご飯を食べたハリーは、自分のお気に入りの布団で丸くなりました。とっても気持ちがよくて、幸せな気持ちです。
布団の下にブラシを隠したのを忘れて、眠りにつきました。
☆書店員の感想
●アメリカで66年前に出版された絵本。日本でも約60年愛され続ける絵本!!
66年前にアメリカで出版された時は白黒だったそうです。それが2002年に、絵を担当したマーガレット・ブロイ・グレアムさん自身によって色彩が加えられたそうです。
全く古さを感じさせない魅力のある絵本で、私は最初そんな事は知らずに読み始めたので驚きました!
もしかしたら白黒バージョンでは印象がだいぶ違うのかもしれませんが、カラーバージョンは、機関車が町を走っているなど現代では見ない光景はある物の、それでも今のアメリカを描いたようにも見える所が、時代を飛び越える本書の魅力であり、人間とペットの家族愛を感じさせる内容だと思いました。
●ハリーはお風呂嫌い
お風呂の音がするだけで警戒してしまう程、お風呂嫌いなハリー。ブラシを持って逃げ、庭に埋めちゃう所が犬らしくもあり、賢い犬なんだろうと想像しますね。
そして、そのまま外へ出かけて、自由にのびのびと遊んで、真っ黒になって、白犬なのに真っ黒く汚れて・・・なんて犬らしいのでしょう。きっとこの時だけではなく、普段からやんちゃな犬なのでしょう。
だからこそ、ハリーの家族は時々ハリーをお風呂に入れてやりたいと思うのでしょうね。
●飼い犬だけど、行動は自由!?
本書の中で、ハリーだけで道を散歩して遊びまわるシーンが描かれています。もちろん飼い主もいないし、リードもはめていません。自由に庭から出て歩き回るのです。
今の飼い犬には考えられない自由さが、この時代の犬たちにはあったという事なのでしょうね。私も野良犬に今まで出会った事がないので、時代なんだろうと思いました。
しかし、そんなハリーの行動を気にするのは大人だけ。きっと子ども達は不思議にも疑問にも感じないと思います。
逆にハリーが自由に遊びまわる様子を自分自身と重ねて、泥んこ遊びを楽しむ事が出来るのではないでしょうか。
●自由に遊んだ後は、やっぱり家が恋しくなるもの。
ハリーは沢山遊んだ後、家族の事を思い出します。しかし、早く帰らないと!お腹もすいたぞ!と思った反面、こんなに汚れてしまって、家の人はどう思うだろう?と心配に思っているシーンがあります。自分に気がついてくれるかな?家に入れてくれるかな?そんな心配が表情からにじみ出ています。
家についたハリーは、家の中をじっと見て、誰か自分に気がついてくれないかと信じて待っています。しかし、残念ながら気がついてもらえず、よその犬だと思われてしまいます。
そこでハリーが僕だよ!と自分の知っている芸を見せるのですが・・・。はりきりすぎたのでしょう。「ハリーみたいだけど、なんか違う」と言われてしまいます。『いつも通りにしていたら、もしかしたら気がついてもらえたのにね。頑張ったのにね。』と、読者はハリーに感情移入して、少し切ない気持ちになるシーンです。
●どうしてハリーは自分からお風呂場に駆け込んだのでしょう?
庭に埋めたブラシの事を思い出し、掘り返したハリー。ブラシをくわえたかと思ったら、家へ駆け込みお風呂場に一目散に向かいました。
お風呂嫌いなハリーがどうして自分から、お風呂に入る道を選んだのでしょう。
それは・・・お腹が空いていてエサが欲しかったから?汚れを落として白犬に戻りたかったから?・・・でもやっぱり1番は自分がハリーだと気がついて欲しかったからなのでしょうね。
だってハリーの家族はこんなにも優しくて温かいんですもの。自分をこんなにも愛して、受け入れてくれる家族の側に帰りたかったのでしょうね。
ハリーはその夜、お腹がいっぱいになると、お気に入りの布団の上で丸くなって、「自分の家ってなんて気持ちがいいんだろう」と感じながら眠っていきました。そしてまた夢の中で泥んこ遊び♩幸せそうなハリーの寝顔がとっても可愛く描かれていますよ。
しかし・・・。よく見ると布団の下にブラシが見えます…。あれ?もしかしてまたお風呂から逃げようとしているのかな?克服した訳じゃないんだね。とクスッと笑わせてくれるラストシーンになっていますよ。隠されたブラシを、お見逃しなく♩
