はるのうた
出会いと別れの春にピッタリ。しまりすとゆきうさぎの、心温まる友情のお話。
☆際立った特徴
- 独り立ちしたしまりすとゆきうさぎの出会い、冬の間のお別れ、春の再開…。お話の展開に心が温まります。
- 羊毛フェルトで作られたイラスト!ふんわりとした質感と、繊細な色の変化に目が離せません。
- 秋の切なさ、冬の静けさ、春の伊吹…。ページいっぱいに背景も羊毛で作られ、季節の特徴を表現しています。
- しまりすとゆきうさぎの、お互いを思いやる気持ちが描かれています。相手の気持ちを考える大切さ、友達というステキな存在について感じることができます。
☆読み聞かせのポイント
- お話の中で、秋、冬、春、と季節が変化していきます。それぞれの季節を想像し、感じながら読むと、お話をもっと身近に感じられそうです。
- 冬の間、巣の中でくるまって眠るしまりす。そんなしまりすを待つゆきうさぎ…。それぞれのセリフはありません。どんな夢を見ているのかな、ゆきうさぎは何を考えているのかな…ぜひ想像を膨らませてみましょう。
- 冬になる前の準備は、動物によって違いますね。わたしたちはどんな準備をするのかな?ほかの動物は…?寒い寒い冬、みんなそれぞれどんな風に過ごすのか、調べてみるのも楽しそうです。
☆おすすめ注目ポイント!
ゆきうさぎは冬、雪が降るころに向かって体の毛が生え変わり、だんだん体の色が変わっていきます。その色の変化も羊毛で自然に表現されていますので、お子さんと一緒にぜひ注目してご覧ください。
☆あらすじ
しまりすのチョコは、春生まれの男の子。秋になり、大きくなったので、お母さんと離れてひとりで暮らし始めました。
そんなチョコがどんぐりを食べているとき、ふゆうさぎのネネに出会います。
ふたりはかくれんぼをして遊んだりチョコの冬支度をしたり…。
チョコがお母さんが恋しくて寂しいときには、一緒に眠ったりもしました。
そして、だんだん冬が近づき…。
冬ごもりをするチョコ、冬の間あたたかい毛に包まれて冬眠せず過ごすネネ…。
冬の間、少しのお別れです。
春が待ち遠しい冬…
可愛いサプライズとともに冬の眠りにつくチョコなのでした。
またふたりは会えるでしょうか…。
☆書店員の感想
・しまりすのチョコとふゆうさぎのネネがとってもほっこり可愛らしい。二人の出会い、つながり…。お話にどんどん引き込まれます。
しまりすのチョコは、大きくなったので親元から離れ、ひとりで暮らし始めた…、というところからお話が始まります。お子さんが聞くと、『えっ、お母さんと一緒じゃないの?』『ひとりで寂しくないの?』と思うかもしれませんね。
そんなチョコのもとに、ふゆうさぎのネネが現れます。チョコは、『独りぼっちじゃないんだ…』とホッとした気持ちになります。
二人で駆けまわったり、寂しいときには寄り添ったりして過ごします。
そんな関係に、お友達との楽しくて温かいようすを思い出しそうです。
・お友達とのステキな関係も感じられます。相手を思いやる気持ち、優しさ、関わりなどにも癒されます。
チョコとネネはステキなお友達の関係になりました。お母さんと離れたチョコの寂しさは紛れましたが、実は…。
冬眠しないネネは、冬の間ひとりになることに寂しい気持ちを感じていたのでした。
その気持ちに気付いたチョコ。自分は冬眠するけれど、しない子もいる。そして、寂しい気持ちにもなる…。
自分以外の誰かの境遇や気持ちに気付き、共感する。そういう視点にも、自然と触れられるお話だなと感じました。
また、リスって冬眠するんだね、うさぎはしないのか…。という動物の生態についても親子で知るきっかけにもなりそうですね。
・なんといっても羊毛で作られたイラストから、温かさを感じます。
そして、チョコとネネの可愛さは、この羊毛フェルトで作られたイラストでさらに引き立っているように思いました。ふんわりとした質感、温かさ、それぞれの毛並み、立体感。羊毛で作られているからこその優しい風合いを感じます。
そこから、友情の温かさを益々感じますし、背景も全部羊毛フェルトで作られていますので、背景からも季節感、温度感、それぞれの気持ちまで感じるように思いました。
ネネが冬になる前、体の毛がだんだん冬になる準備を始めます。その毛の変化も羊毛で表現されていて、羊毛ならではのリアルな表現だなと感じました。
また、羊毛だけでなく、ちいさなビーズやスパンコール、フェルト、レース、刺繍も使われていて、とてもロマンチックな演出です。大人が見ても、キュンとするような世界観で、細かいところまでじっくり見たくなりますよ。
作家のもちなおみさんのホームページでも、絵本についてこう説明が書かれています。
『友だちと別れること、まためぐりあうこと。
互いを信じることの大切さを描いています。色づく秋から真っ白い冬景色へ、
そして光と緑あふれる春へと移りゆく季節をふわふわな羊毛フェルトで紡いでいます。』
友情と季節の移ろい、温かさや希望あふれるようすを羊毛で表現されていますが、羊毛で『紡いでいる』という表現が、とてもすてきだなと感じました。
そして、同じページの下のほうに、この絵本ができる前に制作された動画が載っています。そちらも、羊毛の雰囲気とチョコとネネのすてきな友情を感じることができますので、ぜひご覧ください。
・春が待ち遠しくなるお話。寒くてちょぴり寂しいイメージの冬から、あたたかい春へと描かれています。
こちらのお話は、作者のもちなおみさんが構想から完成まで12年かけて作られたそうです。
じっくりと丁寧に作られたようすが、絵本から伝わってくるように感じました。
秋から始まるこのお話ですが、秋の木枯らしが吹く様子、落ち葉や木の実のようすも秋を感じられます。
冬には、スパンコールで雪が表現されていて、雪で真っ白で寒そうな世界。そしてそこにぽつんとたたずむネネ。文章もなく、シーンという静かな空気感が自然と流れます。
そこには、ネネのどんな気持ちがあったでしょうか。
お子さんと一緒に話してみるといいかもしれませんね。
走り回る二人、シーンとひとりたたずむネネ。そんな『静と動』も、羊毛でたっぷり表現されています。
そして、春。また会えた喜び、生命が息吹く季節…。温かさと色どりと、新しい季節への期待がたくさん詰まって表現されているように感じました。
- 作品名:はるの うた
- 著者名:もち なおみ
- 出版社:イマジネイション・プラス