はるのワンピースをつくりに
仕立て屋さんで春にぴったりのワンピースを作ってもらう、さきちゃん。着せ替えなど、おしゃれに興味がある子にピッタリ!
☆3つのおすすめポイント
- 「春の花ってどんな花?」あなたの思う春を教えてねと仕立て屋のミコさんは、さきちゃんに沢山の質問します。春をもっと感じたくなります。一緒に「あなたが感じる春はどんな春?」と考えてみましょう!
- ミコさんが、さきちゃんを想って作ったワンピース。今度はさきちゃんがおばあちゃんを想って、自分に出来る春の届け方を考えて行動しました。
- 洋服を丁寧に作り上げていくミコさん。生地やボタンを選んだり、さきちゃんの生活に合うように考えられたポケットや襟。世界に一着だけのワンピースづくりの中に、手作りの楽しさや良さを伝えています。
☆あらすじ
うさぎのさきちゃんは、春のワンピースをきつねのミコさんの仕立て屋さんで作ってもらうことにしました。ミコさんの仕立て屋さんは、全てオーダーメイド。その人にピッタリの服を仕立てます。さて、さきちゃんにはどんなワンピースを作れば良いのかな?さきちゃんの話をきかせてもらったミコさんは、素敵なワンピースをイメージしていきます。
採寸して、型紙を作って、仮縫いをした所で、さきちゃんは帰っていきました。
ミコさんはその後も、さきちゃんの好みや話を思い出しながら、春にワンピースを着たさきちゃんが野原を駆け回るのを想像しながら、カタカタカタ・・・とミシンで仕立てていきます。完成したワンピースはたんぽぽ柄のピンクのワンピース。ベルトには赤いちょうちょの飾りがついています。
とっても素敵なワンピースに着替えたさきちゃんは、両手にカゴいっぱいのお花を摘んで、おばあちゃんの家に向かいます。家の前で、ドアをノックします。
「こんにちは。春を届けにきましたよ。」
☆際立った特徴
オーダーメイドで春のワンピースを作ってもらう、さきちゃん。ミコさんの沢山の質問をさきちゃんは丁寧に素直に答えていきます。
ミコさんは、依頼主の気持ちを聞き取りながら、何が必要で、どんな気分で着る服なのか、好きな物やその時の空気まで盛り込んで、その人だけのピッタリなお服を作ってくれます。採寸して型紙をおこして、すごく大変な作業の中で、相手をとことん考え想いながら作るワンピース。手作りって愛情がこもっていることが伝わります。とっても素敵です。
付録に、さきちゃんと4種類のワンピースが描かれた紙がついています。切り取ると着せ替え遊びが出来ます。一着は真っ白なので、色塗りをして自分だけのワンピースを作ることが出来ます。
☆さらに細かくストーリーを深堀り
うさぎのさきちゃんは、風が運んできたすみれの香りで目を覚ましました。出かける準備をしたさきちゃんは森へと向かいます。行き先はきつねのミコさんの仕立て屋さん。ミコさんの仕立て屋さんは、大きさも形もピッタリな服を作ってくれると評判です。
「こんにちは、あら、なんだか嬉しそうね」ミコさんがさきちゃんを見て言いました。「春が来たから春のワンピースが欲しくなったの」さきちゃんが言うと、早速ミコさんはさきちゃんの気分を知るために、色々な質問をします。その時、開いた窓から花の匂いがしてきました。「ああ、いい匂い」ミコさんは歌うようにさきちゃんに訪ねました。「さきちゃん、春の花ってどんな花?」
暖かな日差しが窓から降り注ぎます。「さきちゃん、春の色ってどんな色?」
窓からミツバチが入ってきました。「さきちゃん、春の色ってどんな音?」
「さきちゃんは春になったら誰に会いたい?」冬の間会えなかったお友達を思い浮かべました。
「さきちゃんは春になったら何がしたい?」やりたいことをたくさん思い浮かべて話したら、さきちゃんはじっとしていられない気分です。
でも、ミコさんの質問はまだ続きます。「ワンピースのポケットに何を入れたい?」ミコさんはポケットの形をイメージします。
『ねぇミコさん、襟はどうしようか?』今度はさきちゃんがミコさんに聞きます。ミコさんはさきちゃんに似合う襟の形を提案します。
今度はボタンです。沢山のボタンが入っている棚の前に行きました。ボタンの引き出しには貝殻・フルーツ・木の実・小石など、様々な種類のボタンがあります。その中からさきちゃんが選びます。木苺のボタンに決めました。
「最後は飾りを選びましょう!」リボンにレースに飾りボタンなど、たくさん!!
ミコさんがサイズを測って型紙をおこし、仮縫いをします。さきちゃんはお姉さんになったみたいで、くすぐったい気持ちです。
さきちゃんは出来上がりを楽しみに帰っていきました。ミコさんはさきちゃんを思い浮かべながらミシンをかけます。さきちゃんが野原を走る様子を想像し、カタカタカタカタ・・・ミシンの音が部屋に響いています。
次の日です。ミコさんの仕立て屋さんにさきちゃんが行くと、出来上がったワンピースを広げて見せてくれました。『わーすてき!!ミコさんありがとう!』
出来上がったワンピースは薄ピンクの生地に黄色の大柄のたんぽぽがプリントされています。襟にはピンクの蜘蛛の糸で編んだレース。スカートの下に履いたパンツの裾にも同じレースがついています。さきちゃんが選んだ木苺のボタンと摘んだお花や小石・ハンカチが入る丈夫なポケット、ウエストの深緑のベルトには赤いちょうちょの飾りもついています。とってもおしゃれで、春らしく、そして動きやすそうなデザインです。
さっそく着替えて、赤いパンプスを履いて、頭にもピッタリの髪飾りをつけて。
ひとまわり。それから、ぴょんとかけていきました。春風が吹き、花々が咲き、さきちゃんが”はるのワンピース”を着てかけていきます。両手にはカゴ一杯のお花。ウキウキとした気持ちで、暖かい光の中、春の花と香りと風をひきつれて、たどり着いたのはさきちゃんのおばあちゃんのお家。
とんとんとん。ドアを開けたさきちゃん。『おばあちゃん、こんにちは。春を届けに来ましたよ。』まるで春の妖精さんみたいに素敵で可愛いさきちゃんです★
☆書店員の感想
昔、私が子どもの頃、時々手芸店へ母に連れて行ってもらった事がありました。ほとんど見るだけで、買うことはそうそう無かったのですが、カラフルなボタンや糸・生地を見るだけで、ドキドキワクワクしたことを思い出します。今みたいに100円均一で手軽に購入は出来なかった時代です。その分、買ってもらうと嬉しくて、ビーズやフェルトを大事に使った記憶があります。
つい最近、娘の人形の服を作ったり、娘がおままごとやお料理のお手伝いで着れるようにとエプロンや手提げ袋を作ったりして楽しみました。お人形の服を作る時は、たいていお買い物から、娘も連れて行って、どれが好きか聞きながらボタンやレースを購入するようにしています。手軽に購入できるので、昔に比べると私としてはパラダイスのように感じます。
いざミシンの前に座ると必ず娘がミシンのそばに来て、「何を作ってるの?」「このボタンがいいな」「レースつけてー」と興味津々で見に来てくれます。もしかしたら昔の私のドキドキ・ワクワクした気持ちと同じなのかな?と感じたりします。
本書のミコさんと同じように「どんな服が好きかな?どんな飾りをつけたら可愛いかな?」と考えながら作る時間は、私にとってもリラックスする時間でもあり、出来上がりを見た娘がどんな表情をするのか、どんな風に遊んでくれるのか、楽しみに思う時間でもあります。
改めて考えてみると、私にとって娘の事を考えてあげられる、大切な時間だったんだなって思いました。
- 作品名:はるのワンピースをつくりに
- 著者名:文 石井睦美 絵 布川愛子
- 出版社:ブロンズ新社