ぶーちゃんとおにいちゃん
お兄ちゃんのことが大好きなぶーちゃん。それが少し気になるお兄ちゃんと、兄弟らしいやり取りの中でのお話です。お兄ちゃんと弟、あ〜こんなことってあるある!と思えてきます!
☆3つのおすすめポイント
- ぶーちゃんはお兄ちゃんのことが大好き。けれどその気持は少し一方通行で…。だけど、思いがけないことでお兄ちゃんにいっぱい遊んでもらえます。
- 兄と弟って、なんとなくこんな感じかもしれません。親目線からでも、兄・弟の視点からでも楽しめそうなお話です。
- 絵が隅々まで細かく描かれていて、どこを見ても楽しめます。兄弟の似ている表情も見ていてほっこりする気持ちになってきます。
☆あらすじ
ぶーちゃんはお兄ちゃんが大好きです。大好きすぎて、お兄ちゃんの真似ばかりしてしまします。歯みがきをしていたら、ぶーちゃんも一緒に歯みがき。絵を描いたり、本を読んだり、居眠りだって一緒です。大盛りご飯だって一緒!
今度は目隠しもまねっこしていると…
いつの間にかお兄ちゃんがいない!
お兄ちゃんは別の部屋で自分のおもちゃを出して遊び始めていました。ぶーちゃんも、お兄ちゃんのおもちゃがとっても気になります。
しかし、お兄ちゃんは絶対に貸してくれません。何をしてもだめですが、ぶーちゃんが諦めきれずにお兄ちゃんにお願い攻撃をしていると…
お兄ちゃんはしつこく思い、外に行ってしまいました。お兄ちゃんは、一人で思い切り遊びたかったようです。
しかし、思いっきり遊びすぎて、ボールでお母さんの大切な鉢植えを割ってしまいました!
お兄ちゃんもぶーちゃんもビックリ!
ぶーちゃんに見られてしまったおにいちゃん、これはしまったとばかりに、ぶーちゃんの相手を始めます。お母さんに内緒にしてもらうために…。
そして家の中でおもちゃを全部出して、いっぱいいいっぱい二人で遊びました。ぶーちゃんは大喜びです。お母さんに鉢植えのことを話すヒマもないくらいにたくさん遊んでもらいました。ぶーちゃんは、ますますお兄ちゃんのことが大好きになりました。
☆際立った特徴
「バムとケロ」シリーズの作者・島田ゆかさんが書かれた絵本です。
兄と弟の何気ない日常を切り取ったようなお話です。その中で、ぶーちゃんのお兄ちゃん愛があふれていて、読んでいてなんだか愛おしい気持ちになってきます。お兄ちゃんも真似されていますが、嫌な顔をせず付き合っているときもあって、兄弟の関係性が見ていて面白く感じます。
また、二人のおもちゃや部屋の中、家具なども可愛らしくて、隅々までポップでじっくり見入ってしまう細かさです。兄弟の似ている表情も見ていて癒やされます。
また、細かいところに「バムとケロ」にも出てくるキャラクターや、ぶーちゃんとお兄ちゃん以外の小さなキャラクターが描かれていますので、探しつつ読みすすめることでこの絵本をさらに楽しめそうです。
☆書店員の感想
●ぶーちゃんはお兄ちゃんのことが大好き。けれどその気持は少し一方通行で…。だけど、思いがけないことでお兄ちゃんにいっぱい遊んでもらえます。
ぶーちゃんはおにいちゃんのことが大好きです。いつもお兄ちゃんのことを見ているし、どんなことでも真似をしています。歯みがきをするときはポーズも一緒です。二人ともちょっと腫れぼったいような特徴的な目と、閉じているのに口から舌が出ている表情が本当にそっくりで、兄弟らしさが出ています。何をするにもお兄ちゃんと一緒、お兄ちゃんが大好きだから、お兄ちゃんのすること、持っているおもちゃも全部大好きです。
はじめは真似されて、そんなに気にしていないような表情をしているお兄ちゃんですが、だんだんと気になってくるのですね。ぶーちゃんが目隠しを真似しているスキに、部屋から逃げ出しました。お兄ちゃん、ちょっとずる賢いですね。そんなところも世のお兄ちゃんらしさを感じました。
お兄ちゃんは自分のおもちゃで遊び始めますが、ぶーちゃんには決して貸しません。ひとのおもちゃ、ましてやお兄ちゃんのものとあっては、興味津々になってしまうのも無理ありません!ぶーちゃんが手を伸ばしますが、絶対に貸してくれません。このときの、ぶーちゃんがぽつりと立っている姿。なんだか切ない気持ちにもなってきますが、ぶーちゃんはそんなことではめげません。お兄ちゃんに自分のおもちゃを差し出したり、耳に噛み付いたりしましたが…だめでした。あっかんべーをして部屋を出ていくお兄ちゃん。お兄ちゃんのおもちゃも、箱にフタをしてその上から他のおもちゃで重しにされて出せなくなってしまっています。
寂しそうに横目でお兄ちゃんを見るぶーちゃん。外に行ったお兄ちゃんにこっそりついていき、入り口のところからこっそりようすを見ています。ぬいぐるみを握りしめて体が半分しか見えませんが、じっと立っているぶーちゃんと、外で開放的に遊び始めたお兄ちゃん。
それぞれの葛藤があるようにも感じました。お兄ちゃんと弟、きっとそれぞれの思いがありますよね。
しかし、お兄ちゃんは開放的になりすぎて、お母さんの植木鉢を割ってしまい、ぶーちゃんにその現場を見られてしまいます。おんなじ顔でビックリする二人!お花も曲がってしまっています。これはまずいとばかりに、そそくさとぶーちゃんを連れて家の中に入っていくお兄ちゃん。ぶーちゃんは、部屋の中央に特別なお客様のように座らせられます。お母さんに鉢植えのことを聞かれても答えられないくらいに、いっぱいいっぱい遊んでもらったぶーちゃん。まさかそういう魂胆とは知らずのぶーちゃんですが、お兄ちゃんのことがますます大好きになりました。いっぱい遊んでもらって満足そうな表情のぶーちゃんがまた可愛らしいです。
●兄と弟って、なんとなくこんな感じかもしれません。親目線からでも、兄・弟の視点からでも楽しめそうなお話です。
私には8歳ともうすぐ4歳の男児がいます。毎日必ずけんか、大抵「お兄ちゃんが〇〇した〜!」と、弟が泣いてきます。ですがお兄ちゃんに泣かされるけれど、少ししたら結局また一緒にくっついて遊んでいます。お兄ちゃんとぶーちゃんのお話を読んで、「我が家の兄弟みたい…」と思いました。お兄ちゃんのことが大好きな弟、別の遊びをしていてもだいたい同じ空間にいますし、夏の暑いときでもふたりでソファーでくっついて座っているのを見たときにはビックリしました。(笑)ソファーにまだ余裕があるのに、そんなにきゅっとくっついていなくても…。ほほえましくもありましたが。
そして、弟は必ず兄のことをチェックしています。ご飯のときも、遊びのときも、じっと見ています。そして兄はそれを全く気に留めず、マイペースに過ごしています。休みの日に半日くらい別々で過ごすと、お互いなんだか寂しそうにしていますし、兄弟ってこんなかんじなんだなぁ…と、見ていて発見が多くて面白いです。
兄から見ても、絵本のぶーちゃんは弟みたいだそうです。いつもくっついて真似してくるし…けれど嫌ではないと言っていました。弟にこの絵本を読んだあとに、「お兄ちゃん、好き?」と聞くと、「大好き!」と答えていました。それ以上は話していませんでしたが、このお兄ちゃんを見て、自分のお兄ちゃんと重なって見えた部分はあったのかもしれません。おもちゃで遊ぶシーンも見ていて楽しかったようです。
長男は、お母さんの植木鉢を割ってしまったら素直に謝らないといけないよね〜とも言っていました。(笑)慌ててごまかした絵本の中のお兄ちゃん。少ししてからお母さんに謝ったかもしれませんね。ぶーちゃんが大きくなったら、二人でなにかしでかしているかも…。
●絵が隅々まで細かく描かれていて、どこを見ても楽しめます。兄弟の似ている表情も見ていてほっこりする気持ちになってきます。
洗面所の洗面台、踏み台、壁面のインテリア、お部屋のソファーや椅子、クッションやコップなどの雑貨、ポップなおもちゃたち…。ホットケーキのようなクッションや、可愛いアヒル柄のお布団、お庭のベンチなど、どこを見ても可愛い、ステキなもので溢れています。
また、ぶーちゃんとお兄ちゃん以外にも、コウモリやうさぎ、白い小動物がちらりと登場していたりするので、ページごとに、どこにいるのかな?など探しながら見ると楽しそうです。みんないろいろと自由に過ごしていますよ。
そして、お兄ちゃんが自分のおもちゃを出して遊んでいた部屋では、入り口にバービーの人形が置いてあって、その足元に木くずが落ちているのですが、その木くずがページを追うごとに増えていたりします。また、白い小動物用のような小さい出入り口がところどころあったり、コウモリが木の幹に同化するようなかんじでくっついていたり、「バムとケロ」のワンシーンを思い出させるようなおもちゃもあります。お兄ちゃんのおもちゃ箱についている扉もまさにそうで、そこに登場しているキャラクターもページごとに変わっていますが、バムとケロの絵本のキャラクターがこっそり描かれていますので、必見です。
ぶーちゃんとお兄ちゃんの、何をするにも同じような表情をしているのが、さすが兄弟!といった感じがします。遊んでいるときも、変顔も、植木鉢を割ってびっくりしたときの顔も…。これが姉と妹だとまた違った関係性になってくるのでしょうか。いろいろと想像が膨らみます。
作者の島田ゆかさんは、絵の具で絵を描かれているようです。何で、どうやって描かれているのか気になってしまうくらいに細かくキレイに描かれています。カーペットや芝生、樹木の葉っぱもひとつひとつ丁寧に描き込まれています。キャラクターもさることながら、その周辺にあふれるものたちにもぜひ注目して御覧ください。
- 作品名:ぶーちゃんとおにいちゃん
- 著者名:島田 ゆか
- 出版社:白泉社