ぼく、まってるから
春の読み聞かせにピッタリ!冬眠に入った仲良しの友達を待つねずみ君の、サプライズプレゼントが素敵!!
☆際立った特徴
- ねずみ君とクマ君の花畑で出会い、どんどん仲良くなっていく。
- 出会った日から晴れた日は一緒に遊ぶようになった二人。
- 1人だった時には知らなかった春・夏・秋の楽しみをお互いに知っていく。
- クマには冬眠があり、しばらく会えなくなる二人。
- でも、二人はいつもお互いの事を考えている。夢に出てくるくらい。声が聞こえるくらいに。
- 冬眠から覚めたクマ君へしてあげられる事は…と考えたねずみ君のサプライズが素敵!!
- ハッキリとした色ではなく、全体的に色がフワフワとぼやけたような雰囲気で描いている。なにより印象的なのは菜の花の黄色の優しい黄色。主役を引き立てながら優しく温かい春の訪れを絵本全体から感じさせる。
☆読み聞かせのポイント
- 「春には菜の花を見に行きたいね。ピクニックしたいね。」「夏は川で遊んでみたいね。」など、春夏秋冬の楽しみをクマ君ねずみ君達と一緒に楽しみ、ほかにどんな面白さがあるか話を膨らませても面白いですね。
- 冬眠に入ったクマ君を思ってねずみ君が何をしたのか、ぜひ推理してみてください。出会った時にクマ君が言っていたことがヒントですよ!
☆あらすじ
ねずみ君が春風をフンフンと、いっぱい吸いながら気持ち良く歩いていくと、
ドン!と誰かにぶつかりました。
相手は大きなクマ君でした。
ここで何をしているのか聞くと、大好きな菜の花を見ていたと話しました。クマ君は「菜の花が大好き!春の匂いがするんだもの」と教えてくれました。
その日から二人は友達になりました。
次の日にはねずみ君が作ったイチゴをクマ君に届けてあげたり、夏にはクマ君が川で採った魚を焼いて食べたり、ネズミの作ったとうもろこしを食べて遊びました。
秋には二人とも大忙し!冬は食べ物が無くなるから沢山木の実や畑の芋を掘り起こさなければなりません。
ある日、ねずみ君がクマ君の家に行くと昼だというのにまだ眠っていました。
ねずみ君は起こそうと声を掛けましたが、クマ君は眠くて眠くてたまりません。
「僕は冬になるといつもこうなるんだ。でも大丈夫、春になったら起きるからね。」
眠り始めたクマ君を、ねずみ君はしばらく顔を見ていましたが、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っています。
クマ君に毛布を掛けなおしたねずみ君は、家から出てドアを閉めました。
「春になったら、また会いに来るからね。」
それからねずみ君はクマ君の事ばかり思い出し寂しくて、元気をなくしてしまいました。
そういえば、クマ君に最初にあった時なんて言ってたっけ?ちょっと遅いかもしれないけどやってみよう。
ねずみ君はクマ君の家の前に種を植えました。クマ君を想いながら。
雪が降った時、クマ君の家の周りに雪だるまを作りました。クマ君を想いながら。
ねずみ君は小さな声で呟きました。
「クマ君いっぱい眠っていいよ。でも雪が溶けたら、また遊ぼうね。春が来たら、また会おうね。」
長い冬が終わりかけた頃、クマ君は夢を見ていました。菜の花畑の中からねずみ君の顔が出てきて、こちらに向かって手を振っています。
僕を起こしに来てくれたと思ったクマ君は、目を覚ましました。そして、玄関のドアを開けると・・・目の前に菜の花畑が広がっています。すると、菜の花の間から懐かしいねずみ君の顔が覗きました。
「ねずみ君!僕ねずみ君の夢をいっぱい見たよ。声も聞こえたよ。」
二人は久しぶりに会えて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
二人の春が、また始まりました。
☆書店員の感想
カゴいっぱいにじゃがいもを持ったねずみ君の登場から始まる物語。クマ君との出会いはドーンとぶつかる所からです。
春が嬉しくてニコニコウキウキしながら菜の花畑の中を歩いていたねずみ君。勢い良く曲がったところでクマ君にぶつかりました。
クマ君は菜の花の匂いが大好きで、ここでのんびり座っていました。お互いにこの春を感じさせる菜の花が大好きという事が分かると、二人は意気投合。その日から毎日遊ぶようになりました。
体の大きさがずいぶん違う二人。どんな風に遊ぶのか読者も楽しみになりますね。
友達になったからこそ、初めての味にも出会います。
ねずみ君は畑を耕すのが得意なようです。イチゴを収穫してクマ君の家に持って行ってあげたり、夏にはとうもろこしを一緒に食べるシーンがあります。秋にはさつまいもの収穫の話や、豆を干すのを忘れていた!とクマ君と話すシーンがあります。
クマ君は、魚釣りをして魚を焼いて食べたり森にできた栗や柿、梨などを収穫するのが得意なようですよ。
ねずみ君とは食べ物を集める方法が真逆のように思いませんか?
クマ君は背が高いし力があるからこそ出来る収穫方法だし、体の小さく根気がありまめな性格のねずみ君だからこそ出来る畑仕事だと思いました。二人は友達になり、お互いに食べ物を分け合い、初めて知る味があったようです。これも、友達になれたからこその嬉しさや楽しさなんだろうなと思いました。
クマ君の冬眠。お話の後半では、お互い会えない期間ではあるけど、お互いの事を思い合っていることがよく分かるストーリーです。
「寒いけどまだ雪も降っていないし、外で遊ぼうよ!」と声を掛けにクマ君の家に行ったねずみ君。お昼過ぎなのに眠るクマ君を見て、クマには”冬眠”という眠り続ける期間があるのだと初めて知りました。
今日を最後にクマ君とは春まで会えません。
頭では理解できたけど、今まで毎日のように遊んでいた相手に会えないのはやっぱり寂しくて、クマ君の事ばかり頭に浮かびます。「会いたいな。お話したいな・・・」
そんなねずみ君は、クマ君と出会った瞬間を思い出しました。そしてある事を思い出し行動し始めました。さあ、何を始めたのでしょう。
いよいよ雪が降ってくるとクマ君の家の周りに雪だるまを作りました。クマ君の形をした大きな雪だるまと、横には小さなネズミの雪だるま。
ねずみ君は「春になったら会えるね。またいっぱい遊ぼうね!クマ君!」と眠るクマ君に小さな声で呟きました。ねずみ君の気持ちが伝わりますね。クマ君は本当は寝ているのだけれど、いつもねずみ君の心の中にいて、一緒に遊んでいるような気持ちで過ごしているのでしょう。春になったら本物のクマ君と遊べる日を心待ちにしているねずみ君です。
いよいよ雪解けの季節。春がやってきましたよ。
冬眠中のクマ君、夢の中で菜の花畑の中からねずみ君がこちらに向かって手を振る夢を見ました。「クマ君待っているからね!沢山寝てもいいよ」とニッコリ笑顔で言っています。
クマ君は、はっ!と気がつくのです。ねずみ君が起こしに来てくれたんだと。
でも目を覚ましても部屋の中にはねずみ君はいませんでした。でもなんだかいい匂いがします。
玄関のドアを開けたクマ君は目の前に菜の花の海が広がっている事に驚き、とても喜びました。だって菜の花の匂いがクマ君は大好きなんです!もしかしたら菜の花の匂いと、夢に登場したねずみ君の声が、クマ君を起こしたのかもしれませんね。その菜の花畑から大好きなねずみ君の顔が現れました。
「待っていたよ!また一緒に沢山遊ぼうね♬」とねずみ君。クマ君は大喜びでねずみ君の元へ走りました♬
さて、ここで、雪が降る前にねずみ君が何を植えたのか答え合わせをしましょう。
そうです。クマ君の家の周りに菜の花を植えたのはねずみ君でした。大好きな菜の花に囲まれたクマ君の気持ちを考えると、とっても嬉しくなりますね。クマ君がきっと喜んでくれるぞ!とねずみ君は考えたのでしょうね。素敵なプレゼントだなと私は思いました。
裏表紙にはちょうちょと蜂が描かれています。きっと違う場所へも花粉を運んで、どんどん菜の花畑が広がっていくことでしょう。
さあ春は始まったばかりです。
これから一緒に色んなお話をして、遊びをして楽しむのでしょうね。「どんな夢を見たの?」「冬の間何をしていたの?」と、きっと話は尽きませんね。
二人の今後が楽しみになるラストシーン、そして春が待ち遠しくなるお話でした。
- 作品名:ぼく、まってるから ●フレーベル館の編集部ピックアップ絵本として、詳しく紹介しています)
- 著者名:作 正岡慧子 絵 おぐらひろかず
- 出版社:フレーベル館