よるくま
眠る前の読み聞かせにピッタリ!クリスマスのプレゼント絵本にもオススメです。暖かなお母さんの愛情が伝わるストーリーです。
☆3つのおすすめポイント
- お母さんを探しに来たよるくま。男の子は一緒に探しに出掛けます。よく行く場所、家も探すけど見つからず、不安になったよるくまの涙が周りを真っ暗にしていきます・・・。
- 真っ暗な中に流れ星が一つ。その流れ星が大好きなお母さんの元へ連れて行ってくれます。すると、真っ暗だった景色が、明るい夜の色に一気に変わりました。お母さんに会えて安心したのです。
- 男の子のお母さんの愛情と、よるくまのお母さんの暖かさを感じながら眠りにつく2人。優しい気持ちになること間違いなし!
☆あらすじ
「ママ、あのね・・・」
男の子が眠る前にお母さんに昨日の出来事を話し始めました。
「あのね、昨日の夜ね、うんと夜にね、可愛い子が来たんだ・・・・」お母さんが話を聞いています。男の子が話します。
トントンとドアをノックしてドアの前に立っていたのは、くまの子。くまの子は「よるくま」という名前です。よるくまは夜みたいに真っ黒くて、外に出ると胸の月だけが光っています。よるくまはお母さんを探しに来たそうです。男の子も一緒に探してあげることにしたのだけど、ハチミツを買いによく行くお店も、よるくまとよく行く公園も、探すのだけど、どこにもいなくて・・・。もしかして家に帰ってるかも?と家にも探しに行きました。
よるくまの家は土と草で出来ていてフワフワでとても暖かいです。しかし、テーブルの下やベッド、トイレを探してもいません。
よるくまはとうとう、我慢していた寂しさや心配な気持ちが溢れ出て、泣き出してしまいました。そして、よるくまの涙は真っ暗で真っ黒なんです。泣いているとだんだん涙で周りがどんどん黒く、どんどん暗くなっていきます。とうとう辺りが一面真っ黒になってしまいました。
そこに流れ星がひとすじ・・・流れるのが見えました。「助けて流れ星!」
その流れ星に男の子がつかまりました。するとそのまま引っ張られて行きます。その先に待っていたのは、なんとよるくまのお母さん。よるくまのお母さんは、その星でお魚を釣る仕事をしていたのです。流れ星だと思っていた星は、釣りで使っていたエサでした。
星の形の目をした大きな魚がすでに釣れています。「ほらごらん、こんなに釣れた。明日の朝食べようね」とよるくまのお母さんは言いました。
そして、よるくまを抱っこして、男の子を背負って、よるくまのお母さんは家に帰ります。「ああ、あったかい。お前はあったかいねぇ。」と言いながら。
よるくまと男の子は暖かでフカフカなベッドの中です。よるくまのお母さんは優しく話しかけながら、布団をかけてあげます。暖かいお布団に2人は気持ちがよさそうです。「明日はお魚を焼こうね。朝ごはん食べようね。それからバスに乗って自転車屋さんにいって、どんなのがあるか見ようね。だから今日はもう・・・おやすみ」
男の子が、自分のベッドで、くまのぬいぐるみを抱えながら眠っています。男の子のお母さんは布団をかけて、男の子が幸せそうに眠る顔を見ています。 『おやすみ』
☆際立った特徴
男の子の昨日あった出来事を「ママ、あのね・・・」と話す所から始まります。男の子が出会った真っ黒いクマの”よるくま”はお母さんを探して男の子の所へ来たそうです。
お母さんはどこにいるのかな?よるくまの不安な気持ち・お母さんに会いたい気持ちがどんどん募っていくと、周りもどんどん暗くなっていきます。
どうなるのかな?と心配になるような場面があり、その中に一筋の光が!流れ星がよるくまとお母さんを引き合わせてくれ、周りは一気に明るい夜の色になりました。
安心して眠りにつくよるくまのシーンから、貢をめくると現実の世界に戻っていて、男の子がベッドで眠っています。
現実と夢があやふやになるような、眠る前のひと時。よるくまが出てきた夢だったのか、本当によるくまが来たのか。男の子もよるくまも、それぞれの親子の愛情がじんわり暖かく伝わるファンタジーです。
☆書店員の感想
お母さんを探しに来たよるくま。男の子は一緒に探しに出掛けます。よく行く場所、家も探すけど見つからず、不安になったよるくまの涙が周りを真っ暗にしていきます・・・。
「おかあさんがいないよぉ」と不安に思って探し回った先に、男の子の家があったのでしょうか。それとも、男の子の家を前から知っていて、きっと男の子なら探すのを手伝ってくれると信じて、ドアをノックしたのでしょうか。優しい男の子は泣いているよるくまに車のおもちゃを渡して、元気づけてあげました。
真っ黒なよるくま。泣くのを我慢して、男の子とお母さんを探しに出掛けました。よく行くお店や公園を探してもいない、家に帰ってみてもやっぱりいない。不安で寂しくて、今まで我慢していた気持ちが涙となって流れ出します。黒い涙がぽろぽろ流れると、涙で周りを黒くしてしまいます。そして周りが見えないほど、真っ暗になっていきます。
男の子に抱かれても埋まらない寂しさ、悲しみが、きっとよるくまの心を、真っ暗闇にいるような気持ちにさせてしまったという事なのかもしれません。
真っ暗な中に流れ星が一つ。その流れ星が大好きなお母さんの元へ連れて行ってくれます。すると、真っ暗だった景色が、明るい夜の色に一気に変わりました。お母さんに会えて安心したのでしょう。
「誰か助けて!お母さんに会わせて!」男の子とよるくまの祈るような気持ちが、神様に届いたのでしょうか。真っ暗な世界に一つの白い流れ星が輝いて流れていきました。とっさに星につかまると、そのまま引っ張られて、お母さんの元に行くことができました。流れ星がお母さんと引き合わせてくれたのです。真っ暗だったよるくまの心に光が差すと、急に辺りも明るい夜の色になります。そして、今まで見えなかった景色が見えてきました。
私には天の川で泳いでいる魚を、よるくまのおかあさんが釣りしているようにも見えました。だって、魚の目が黄色の星の色なんです。
大きなお魚を売って、よるくまの欲しがっていた自転車を買ってあげようと考えているようですよ。「明日、焼いて食べようね」「自転車見に行こうね」と、よるくまのお母さんがよるくまに、抱っこしながら話しています。安心して抱かれるよるくまの心は、もうすっかり心配も寂しさもなく、穏やかなようです。よるくまの家までの道が、夜なのに、月夜に照らされた黄金色の草原のように、明るく描かれています。
男の子のお母さんの愛情と、よるくまのお母さんの暖かさを感じながら眠りにつく2人。優しい気持ちになること間違いなし!
よるくまを抱きながら、よるくまのお母さんは、「ああ、あったかい。お前はあったかいね」と言っています。きっと寒い中よるくまを思って仕事をしていたのでしょう。体が冷たくなっても、子どもの為に何かしてあげたい。美味しい物を食べさせたいと思う親心がじんわりと伝わってきます。そして、子どもを暖かいベッドに寝かしつけてあげて・・・本書のストーリーは終わっていきます。実は、男の子のお母さんも、よるくまのお母さんと同じように、安心した気持ちで眠っていくわが子を、横でトントンしながら見ていたのかもしれません。子どもの寝顔は、親にとって一番のご褒美ではないでしょうか。精一杯愛情を届けたお返しに、気持ちよさそうな寝顔を見せてくれると私は思うのです。
暖かくて優しさに包まれるような、「おやすみ」という最後の言葉が、読んでいる大人も子どもも、穏やかな気持ちにさせてくれ、寝る前の読み聞かせにピッタリな素敵な絵本だと思いました。