わにわにのごちそう
本物のようなワニが主役!はらぺこなワニのお食事と、リアルな音との組み合わせが楽しいお話です。ワニが身近に感じる!?愛嬌のあるワニで、動物好きな子にピッタリです!
☆3つのおすすめポイント
- 人間らしい、お上品なワニさん?と思いきや、やはり肉食!お腹がすいては、ワニはやっていられません!豪快にお肉にかぶりつく、前半とのギャップ。わにわにのようすと、文章の音の響きとの組み合わせが目でも耳でも楽しめます。
- 版画のような描写で、文章の文字も版画のように特徴的に描かれていて、独特の雰囲気を感じます。ワニの重厚感が出ています!
- わにわにの生活するようすが見ていて楽しいです。そして、小さいお子さんと重なるような姿に共感と親近感が湧いてくるような感じがします。
☆あらすじ
お腹がペコペコなわにわにがいました。なにか食べ物を探しています。
台所にやってきました。
冷蔵庫を開けてみると、美味しそうなお肉がありました!
わにわには青いエプロンをつけ、フライパンでお肉をじゅうじゅう焼きます。
大きな鶏の丸焼きです。
美味しそうに焼けました。牛乳を飲みながら、いただきます!
ナイフとフォークを手に持っていましたが…結局、豪快にわしづかみで食べ始めました!
ぐびっと飲み込んでいきます。お皿やナイフ、フォークは勢いで床に落ちてしまっています。
お腹がふくれたわにわに。爪できばを掃除します。
それからどさりと床におり、ずりずり…と、台所から出ていきました。
満足したわにわに、仰向けでゆったりしています。
☆際立った特徴
表紙には、フォークとナイフを持ったわにわにがいます。正面からのわにわにの顔が、口がにやっとしていて、黄色く光っているような目と目が合うと、ちょっとどきっとしてしまうような表情です。
ちょっとこわいけれど、可愛く感じる部分もあるわにわにの私生活を垣間見るような内容の絵本で、ほのぼのとしながらも動作と音との組み合わせも楽しく感じられます。また、版画のような絵で、ワニの重厚感や質感、雰囲気が表現されています。
絵本の大きさは22㎝×21㎝で、ほぼ正方形の形をしていて、大きすぎず小さなお子さんも読みやすい大きさでしょう。
☆書店員の感想
●人間らしい、お上品なワニさん?と思いきや、やはり肉食!お腹がすいては、ワニはやっていられません!豪快にお肉にかぶりつく、前半とのギャップ。わにわにと、文章の音の響きとの組み合わせが目でも耳でも楽しめます。
お腹が空いたワニが、台所にやってきました。醤油やじゃがいも、人参が置かれていて、人間の食卓と同じような雰囲気です。壁には、ミトンやエプロンがかかっています。冷蔵庫も置いてあって、そこにはメモも貼られています。
そんなキッチンに、ワニは「ずり づづづ…」とやってきます。ワニが大きい体をゆっくり動かして、そろりそろりとやってきているかんじが音から伝わってきます。言葉を目読するより、声に出して読んだほうがよりリアルな音が耳から入ってきて、ワニが動いているようすが思い浮かぶようです。
冷蔵庫を開けると、美味しそうなお肉がドーン!と入っています。クリスマスなどに食べるような、足つきの大きなお肉!やはり、肉食のワニ。「よしよし」と嬉しそうです。
他にはプリンやいちごジャム、バターも入っていて、家庭用の冷蔵庫ですね。ワニが使っていたり、食べているところを想像すると、なんだか可愛らしく思えてきます。
わにわには素手で肉を出しながら、エプロンを着て準備を始めます。ここはちょっと豪快な感じが出てきているわにわにですね。早く食べたくてうずうずしてきたのでしょうか。
ずりずり…とほふく前進のように台所へ入ってきたわにわにですが、キッチンの前では後ろ足で上手に2足で立っています。
フライパンを使って、じゅうじゅうとお肉を焼き始めました。よだれを垂らすわにわに。焼けたお肉を、お皿に盛り付けます。レタスとミニトマトもついて、素敵に盛り付けました。
牛乳も準備し、ナイフとフォークを持っていただきま〜す。
しかし、さっきまで持っていたナイフとフォークはどこへやら、手でわしづかみにして食べ始めました!野生のワニのような豪快さ!さっきまでの、ちょっと人間らしさも感じるようなわにわにとは別人のようです。「がふっ がふっ」「むちゃ むちゃ」と食べている音も、大きいお肉を大きい口で食べている風景が思い浮かぶようです。
「ぐびっ ぐびっ」と飲み込みました。満足そうな顔をしています。
食べ終わると、爪できばを掃除し始めました。…これはなんとも、お上品とはいい難いですが…。(笑)きっと空腹も満たされて、美味しさを思い出しているんでしょうね。
そして床にどさっと降りると、また「ずり づづづ…」と台所から出ていきました。
台所の食器は転がったままで、調理前のわにとのギャップがありますね。ちょっと休んでからお片付けをするのでしょうか。
お腹がいっぱいで満足したわにわに。仰向けになって、休憩しています。
●版画のような描写で、文章の文字も版画のように特徴的に描かれていて、独特の雰囲気を感じます。ワニの重厚感が出ています!
福音館書店のホームページにわにわにについての紹介ページがあるのですが、そこでわにわにの誕生秘話が書かれています。
わにわにが生まれたのは、石上井公園にワニが出たというニュースがきっかけになっているそうです。小風さんがワニを探しに行ったけれど見つからず、けれどワニ熱が冷めなかったため、ワニのいろんな想像をしているうちに出来上がったのが「わにわにシリーズ」だそうです。そして熱川バナナワニ園で実物のワニを見、わにわにの制作をされたそう。小風さんから、「擬人化されていない普通のワニを描いてほしい」との要望を受けた山口さんが、ワニのリアルさを大切に絵を描かれたそうです。
そして、山口マオさんは「木版画」で絵を描かれているそうですね。ワニのごつごつした感じや、重厚感が木版画の独特の描写でしっかりと表現され、大きく描かれたワニの背中の線なども本物のようなかたさも感じます。山口さんも実際に本物のワニを何度も見に行き、お二人で研究してわにわにの絵本を制作されたそうで、ワニの良さが存分に出ているような感じがします。
文字もパソコンで打ったような印刷された文字ではなく、木版画で作られたような感じで、絵の雰囲気とピッタリマッチしています。
わにわにの、「ちょっとこわい、けど可愛い」ような雰囲気が出て、素敵なキャラクターになっているように感じました。
●わにわにの生活するようすが見ていて楽しいです。そして、小さいお子さんと重なるような姿に共感と親近感が湧いてくるような感じがします。
わにわにの絵本を読んで動物園に行くと、ワニを見たときに、なんだか自然に「あっ!わにわにだ!」と思ったことがありました。ワニを実際に見る機会は動物園に行ったときくらいしかないと思うので、わにわにのリアルさを動物園の本物のワニを通してより実感できるように思いました。
次男もわにわにシリーズが大好きで、ちょっと強面なわにわにですが、台所で調理をし、豪快にお肉を食べる姿が印象的に感じたようです。裏表紙には、プリンを少し食べた絵が描かれています。これはスプーンを使って食べたのかな?といったようすですが、お肉を食べたときは食欲が勝り、本来の「肉食動物・ワニ」が前面に発揮されていたのかなと想像しました。プリンを一口ずつ食べているお上品な姿も見てみたいと思います。
お腹が空いたとき、お子さんだったら勢いよく食べてしまうことってありませんか?わにわにが豪快に食べている姿が、お腹が空いて「いっただっきまーす!」と元気よく食べ始めた子どもたちと重なって見えました。
お腹が空いたら、なんでもより美味しく感じるときってありますよね。ちょっと苦手なものも、少し食べられるようになるかもしれません。
また、「わにしょうゆ」と描かれた醤油のボトルがあったり、「WANIMILK」があったり、ワニのマグカップを使っていたりと、ワニ愛がいっぱい詰まったような面白要素も描かれていますので、じっくり探して「わにわにの世界」を堪能するのもおすすめです。
強面、だけどちょっぴりお茶目なわにわにの可愛さに、じわじわ惹かれていく絵本のように感じました。