カエルのおんがくたい
雨の日の読み聞かせにピッタリ!カエルたちと一緒に、幻想的な雨の世界に入りましょう。
☆3つのおすすめポイント
1.一枚一枚、額に入れて飾りたいほど美しい絵です。
2.音楽隊の楽器の描写まで、こだわりがあります。
3.みんなで力を合わせて頑張ることの大切さを教えられます。
☆あらすじ
「つまらないなー」赤い屋根のキノコの家から顔を出した緑カエルが、雨を見てため息をついています。
そこでふと思いつきました。仲間と音楽隊を作って、音楽でみんなを元気にしよう!
ケロ、ケロ、ケロ、賛成ケロ!赤カエル、黄緑カエル、よもぎカエル、青カエル、黄土カエル、6匹の仲間が集まりました。音楽隊の出発です。
ケロ!ケロ!クワッ! まずは、雨でしおれたすずらんを励まします。
プープーピーピー♩ 池の蓮の葉の上から、魚さんたちに音楽を聞かせます。
ドンドコドンドコ♫ お花畑で雨宿りする蝶々さんたちにも、元気を届けます。
ピーヒョロ♪ 木の上で演奏すると、木陰のネズミたちが顔を出しました。
「みんな元気になあれ」
そこへトリがやってきて言いました。ずっと、雲にくるまって寝ている太陽を起こしてくれないか。
もちろんだ、みんなで行こう。カエルたちは鳥の背に飛び乗って、太陽目がけて飛んでいきました。
でも、真っ黒の雲がじゃまをして、なかなか演奏が太陽に届きません。
みんなで力を合わせて太陽を起こそう!
大合奏を始めると、カエルたちのハーモニーが虹になって雲を突き抜けたのです。
☆際立った特徴
ボローニャ国際絵本原画展で連続入賞を果たした、刀根里衣さんの美しく幻想的な絵が、見る人の目も心も引き付けます。
カエルの音楽隊が持つ楽器にも注目です。クラリネット、ラッパ、サックス、小太鼓、大太鼓、シンバルの6種類が、細やかに描かれます。(詳細は後述)
つまらない雨の日に、森の仲間たちに元気を与えようという、カエルたちのけなげさに心を打たれます。
また、みんなで力を合わせれば、どんなに暗い雨雲も動かせる。そんな勇気を与えてくれる絵本です。
☆書店員の感想
●一枚一枚、額に入れて飾りたいほど美しい絵です。
豊かな雨の描写に、まず目を奪われました。
著者の刀根里衣さんは、降水量の多い北陸の福井県の出身だからでしょうか。
私も北陸の生まれですので、子どもの頃は、こんな雨の日が多かったなぁと、懐かしく感じました。最近の温暖化で、雨の日はすっかり少なくなりましたから、なおさらそう思います。
●音楽隊の楽器の描写まで、こだわりがあります。
それぞれに立派な楽器を持ったカエル達にも、親近感が湧きました。
私もブラスバンドでサックスを吹いていたからです。
青カエルが吹いているサックスは、バリトンサックスと言って管の長い大型のサックスですね。ラッパは普通のトランペットではなく、やや丸い形状をしたコルネットという楽器です。
通でないとわからないような、細かなところまで描写されているのは、本当に素晴らしい。
●みんなで力を合わせて頑張ることの大切さを教えられます。
私もブラスバンドの一員として、雨の日の野球応援をしたことが何度もあります。
クラリネットやサックスなどの木管楽器は、本当は雨に濡れると傷むので良くないのです。
しかし、途中で雨が降ってきたからといって、がんばっている野球部員達を残して、応援をやめる気にもなれません。ずぶ濡れになって、応援を続けたことを思い出しました。
みんなで力を合わせて応援したら、きっと試合にも勝てる!そう信じて雨の中の応援を続けました。
残念ながらそうならない時もありました。それでも、ずぶ濡れになって応援した私たちの気持ちは、きっと球児達にも届いただろう。
この絵本を読んで、そんな想い出がよみがえりました。
子供から大人まで、雨と友情の美しさを楽しめる素敵な絵本です。
- 作品名:カエルのおんがくたい
- 著者名:刀根里衣
- 出版社:小学館