ドーナツやさん はじめました
ドーナツ好きにはもってこい!ふわっと甘い香りがしてくるようです。リスさんとゾウさんの優しくて愛おしいキャラクターにもご注目★ 「あなたも読んでみて!きっと面白いから。」
☆3つのおすすめポイント
- ドーナツ屋さんを開いたリスさんとゾウさん。お客さんがいないので森に売りに行ったのだけど、途中で「はくしょーん!!」大きなくしゃみで飛ばされたドーナツの行方は!?
- 見つかったドーナツは、みんな食べてもらっては無いけど、違う用途で活躍しています。でもぜひ食べてみてほしい!2人の気持ちは届くかな?
- 甘くて美味しそうなドーナツは、見ているだけでよだれが出てきます。おしゃれで可愛いトッピングが見ている読者にも甘い香りと元気をくれるようです。
☆あらすじ
ドーナツが大好きなゾウさんとリスさんがいました。二人はドーナツ屋さんを開くことにしました。しかし、オープンしたのにお客さんが来ません。そうだ!森に売りに行こう!二人はさっそく売りに出かけました。大きな声で「いかがですかー?」と呼び込んだ時です。ゾウさんが大きなくしゃみをしたはずみで、ドーナツが全部吹き飛んでしまいました。「大丈夫!きっと見つかるよ!」リスさんの励ましで、二人は探しに出かけました。すると、キリンさんの首にドーナツがはまっていました。「マフラーに丁度いいんだ」とキリンさん。うさぎさん3匹の耳にもはまっています。「こんな可愛い耳飾り見たことないわ!」今度出会ったのはブタさん。鼻にはまっています。「このマスク、とってもいい匂いだよ」その他にもヒヨコさんが浮き輪代わりに・ねずみさんがパーティドレス代わりにと、ドーナツが活躍しています。
「みんな、終わったら一口食べてみて!きっと美味しいから!」ゾウさんとリスさんはそう言うと、お店に帰りました。『みんなの役に立てて良かったね。』と話しながら。
次の日です。お店の前には沢山のお客さん。「君たちが作ったドーナツ、とってもおいしかったよ!!」「僕たちも食べてみたいよ!」昨日出会った動物たちも、そうでない動物たちも沢山集まっています。
二人はカラフルでトッピングいっぱいのドーナツを沢山作りました。『みなさんおまたせしました!たくさん食べてくださー・・・っくしょん!!!』あれれ、またまた飛んでいってしまいました。
☆際立った特徴
色使いがカラフルなのに、筆のタッチが優しくふんわりとしています。リスさん・ゾウさんの優しくおっとりとした空気感が伝わってきます。そして、なんと言ってもドーナツの美味しそうなこと!!ぜひ、描かれた全てのドーナツを見て欲しいです。見ているだけで甘い香りがしてくるようで、フワッフワなドーナツの柔らかさも伝わってきます。こんなにドーナツの種類ってあるの?全部たべてみたい!と、きっとあなたも思います。
ドーナツを探しに行って出会った動物たちに「後から食べてみて。きっと美味しいから」とリスさんとゾウさんは言うのですが、絵と言葉の雰囲気から、きっと「どうか食べて欲しい。自分たちがいつもドーナツを食べて嬉しくなる気持ちを、皆にも感じてもらいたい。」という気持ちが込められているようです。でも、無理には勧めません。そこに二人の優しさが現れているのです。
☆もっとストーリーを深堀り
ゾウさんとリスさんはドーナツが大好きです。「そうだ!ドーナツ屋さんを開こうよ。そうしたら毎日ドーナツが食べられるよ。」二人は早速ドーナツを作ることにしました。穴の空いた丸い生地をこんがり揚げるのがゾウさんの仕事。クリームやチョコレートで仕上げするのはリスさんの仕事です。沢山のドーナツを作り、お店がオープンしたけど、お客さんが誰も来ません。「そうだ!森に売りに行こう!」二人はワゴンにドーナツを乗せて売りに行きました。「ドーナツ屋さんを始めました!いかがですか?」と大きな声で呼びかけながら、ワゴンを押して歩きます。その時、ゾウさんの鼻がムズムズ・・・沢山のドーナツは1つ残らず飛んでいってしまいました。落ち込むゾウさんにリスさんは「大丈夫!きっと見つかるよ!」と励まします。二人はドーナツを探しに行くことにしました。
小道を進むとそこには首の長いキリンさんが読書中。あれ?その首のドーナツ僕らのじゃなあ?と聞いてみました。『突然空からドーナツが首にストン!と落ちてきたんだ!こういう温かいマフラーが欲しかったんだよね』キリンさんは嬉しそうに木陰で読書を楽しんでいます。二人はドーナツを返してとは言えません。「後でマフラーを取ったら一口食べてみて。きっと美味しいから」
次に出会ったのは耳にドーナツがスッポリ入っている3匹のウサギさん達。「そのドーナツって?」と話しかけると、『突然空から降ってきて、私達の耳にスッポリとはまったの。こんなに可愛い耳飾り見たことがないわ!』うさぎ達は喜びながらティータイムを楽しんでいます。「後で耳飾りをはずしたら、ぜひ一口食べてみて?きっとおやつにピッタリだよ」
今度は鼻にドーナツがはまっているブタさんに出会いました。『ゴホンゴホン、さっきあっちの方から飛んできて僕の鼻にはまったの。このマスクとってもいい匂いだよ』風邪をひいているみたいで、クスリを持って帰る所のようです。「ブタさんマスクを外したら、一口食べてみて?きっと元気が出るよ」
その後も、アヒルの子どもたちが浮き輪代わりに使っていたり、リスさん達がダンスのドレス代わりに着ていたりと”食べる”以外の事で大活躍のドーナツ。結局見つけたけど誰にも「今すぐ食べてみてよ」とは言えませんでした。その代わりに、「よかったら後から食べてみて?」とだけお願いして二人は店へと帰ったのです。二人は、食べてはもらえませんでしたが、みんなの役に立てたことを喜びました。
次の日です。お店を開けた途端、二人はビックリします。お店の外には大勢のお客さんが待っていたのです!『君たちが作るドーナツ美味しかったよ。もう一度食べたくて買いに来たよ』とお客さん。二人は嬉しい気持ちでいっぱいです。「ゾウさんのくしゃみのおかげだね!」「もうくしゃみをしないから安心して!」二人は大急ぎでドーナツを作ります!
こんがり揚げたドーナツにチョコレート・イチゴ・レモンクリーム・・・たっぷりと掛かったトッピングが甘くて美味しい香りが店中・外までに広がります。
「みなさん!お待たせしました!!」ぞうさんも負けないくらい大きな声で「たーくさん 食べてくださー・・・っくしゅん!!!」またドーナツ飛んでいっちゃいました。
☆書店員の感想
ぞうさんのくしゃみで飛んでいってしまったドーナツは、森にいた動物たちが持っていたのですが、マフラー代わりにしていたり、耳飾りにしていたり、”食べる”以外の役には立っているけど、リスさんとゾウさんの「みんなにも食べてもらいたい」という願いとは違っていました。でも、「返してほしい」と言えず、「今すぐ食べてみて!」とも言えず、結局『使い終わったら食べてみてね!』と伝えることが精一杯でした。なんて可愛らしく優しいリスさんとゾウさんでしょうか。子どもに読み聞かせをする私の読み口調も、自然と可愛らしくなるように声色を変えて読んでいました。
自分のドーナツです、食べてほしいに決まってるのに、「みんなの役に立てて良かったね」と話す二人が、とっても素直で愛おしく感じます。
次の日には、お店の前に沢山のお客さんが集まっていました。二人の謙虚さと優しさが森中の動物たちに伝わったのでしょうね。二人の行いを神様が見ていて、ご褒美にふわ~と風をおこして甘い香りを運んでくれたのかもしれません。
- 作品名:ドーナツやさん はじめました
- 著者名:関根 知未
- 出版社:教育画劇