一休さん
クイズやひらめき問題が好きな子にピッタリ!粋な「とんち」の面白さを楽しみましょう♬
☆際立った特徴
- 一休さんは実在したとんち小僧。(一休宗純)
- 「一休さん」の数あるとんち話の中でも、特に有名なお話が3話。(3話は区切っておらず、1話にまとめられている。)
- 日本名作おはなし絵本シリーズ24巻中の1作。
- 愉快痛快なとんちばなし。
- 就学前のお子さんから小学校高学年まで、長く楽しめる内容。
- どうして「一休さん」が知られるようになったのかなど、詳しい解説ページあり。
☆読み聞かせのポイント
- まず、「とんち」って何?と思いますよね。お話を聞いていると、自然と「とんち」とはどんなものなのか分かります。とんちが聞いたお話の面白さもきっとだんだん分かってきますよ。
- とんち話の中で幼い子には「とんち」を難しく感じる事があるかもしれません。分からない場合は、「橋」ではなく、「橋の端」だって事だねと、少し柔らかくなるように説明をしてあげると良いと思います。
- 小学生にもおススメの絵本です。「とんち」とは、今でいう「ひっかけ問題」のような物です。さらにその答えが粋であればある程、面白い答えととられる「とんち」。君ならどうする?と一緒に考えてみましょう!一休さんより粋な答えが出たらすごいですね!!
- 3つの物語が収録されているので、1つだけ読んでもいいし、全て一気に読んでも楽しいです。お子さんの様子を見ながら読み進めましょう!

☆あらすじ
●一つ目のお話。
昔、京都にある寺にとんちが得意な小僧さんがいました。小僧さんの名前は「一休」と言いました。
さて、近頃近くに住むじんべえさんが、碁を和尚さんとするために毎晩やってきます。小僧さん達はお客が帰るまで寝るわけにもいかず、いつも困っていました。
小僧さんたちは「何とかじんべえさんが来ないようにする方法は無いものか…」と考え、一休さんが良いアイデアを思いつきました。
【毛皮を着た者入るべからず】と門に張り紙をしたのです。昔お坊さんたちは肉を食べてはいけませんでした。だから獣の皮も入れないというのです。
これではいつも毛皮のはんてんを着ているじんべえさんは中に入れません。
じんべえさんはビックリしましたが、「一休だな。でも子どもの浅知恵。」と、平気な顔で寺に入って行きました。そしてニヤリとしたじんべえさんは小僧さん達に、「お寺にある太鼓には獣の皮がはってあるではないか!!」と言いました。一休さんは、
「その通りです。しかし太鼓は毎日バチで叩かれるのです。じんべえさんもバチで叩いて差し上げましょうか?」
一本取られたじんべえさんは、それから碁を打ちに来ても、あまり遅くならない時間に帰って行きました。
今度はじんべえさんから小僧さんに、昼ごはんの招待がありました。大喜びでじんべえさんの屋敷へ向かいました。屋敷は堀で囲われている為、橋を渡らないと中へは入れません。
橋のたもとの立札に【このはし わたるべからず】と書かれていて、小僧たちは困ってしまいました。しかし一休さんはニッコリ笑いました。一休さんはみんなを引き連れて橋の真ん中を平気な顔で渡っていきました。これを見ていたじんべえさん。「立札見ましたよ!だから端でなく真ん中を渡って来ました」と言いました。
また、一休さんに一本取られたじんべえさんです。
●2つ目のお話。
一休さんのお寺の境内には竹が沢山ありました。毎年春になるとタケノコが出るのですが、今年はどうしたわけか境内の中ではなく、隣のお侍の屋敷の中ばかりに顔を出したのです。タケノコが大好きなお侍は、そのタケノコをみんな掘り出しました。
そして、タケノコの皮を剥くと皮だけお寺に届けに来て、「何の断りもなくこちらの庭に入り込んできたタケノコは無礼なので手打ちにした。可愛そうなので着物だけお返ししよう。」と言うのです。
隣の屋敷から、タケノコを煮るいい匂いがしてくると、一休さんはニコニコしながら隣の屋敷に行きました。
「タケノコが、お手打ちになったのは仕方がありません。でもうちは寺ですから、葬式をしてあげようと思います。」
一休さんは、煮えたばかりのタケノコを鍋ごと持って帰りました。お侍の一本取られたのでした。
悔しい思いをしたお侍は、次の日お寺にやってきました。そして一休さんに「手の中のスズメが生きているか死んでいるかとんちで当ててみろ!」と言うのです。
一休さんが死んでいると答えると、お侍は手を広げ、スズメが飛んで逃げていきました。
大喜びのお侍。しかし一休さんは分かっていました。「生きている」と答えればスズメはきっと手の中で握りつぶしていた事でしょう。とんちでスズメを助けたのでした。
●3つ目のお話
とんちが得意な一休さんの噂はどんどん広まり、殿様の耳にまで届きました。そして屋敷へ招かれた一休さん。殿様はさっそくトラの描いてある屏風を指さし、「得意のとんちでこのトラを捕えて見せよ」と言いました。
これにはきっと小僧も困るだろうと殿様も家来たちもニヤニヤ見ていました。
一休さんは慌てず、たすきにハチマキをして縄を持って屏風の前に立ち、「さあ、縛る準備が出来ました。どなたかこの屏風からトラを追い出してください!そしたら私が縄で縛ります!!」と言うのです。
もちろん出すことなど誰にもできません。「これは一本取られた!」と殿様は喜び、一休さんのとんちに感心して、ご褒美を沢山くれました。

☆書店員の感想
とんち話は、今で言うひっかけ問題・ひらめき問題のような物でしょうか。しかも答えが粋であればある程、センスがあって良しとされたように本書を読んで私は感じました。
特に3話目の殿様に屏風の中のトラを捕えるように言われた時の返しです。「自分は屏風から出てきたら自分が捕えるから、誰か屏風からトラを追い出してくれ」とは・・・。すごい返えしですね。思いもつかない発想だし、演技力だなと思いました。
「そんな事出来るわけがない」と誰もが思った事を上手く跳ねのけたというか。それでいて、なるほどそうきたか!と周囲を納得させる物があるし、「私は真剣に殿様の命令に答えようとしています!」と言わんばかりの演技力・・・。あっぱれでした♬
そして、”命を大切にする”所も、小僧である一休さんらしさが出ています。特に2話目の手の中のスズメの話なんかはそう感じさせる物がありますね。自分の勝ち負けよりもスズメの命を優先し、とんちを利かせています。一休さんは、無理難題を面白さで切り抜ける事が得意ではあるけど、それによって誰かを傷つけたり、けなしたりはしないのです。
ちなみに和尚さんの姿も見どころの一つです。
私は和尚さんは一休さんが小僧として正しい行いが出来ているかいつも見守っているように思いました。とんちが得意な一休さんだからこそ、悪い道へ進まないよう、誰かを傷つけたりしないように、保護者の目で見守っているように見えました。
和尚さんは親代わりでもあります。一休さんを正しい道へ育てる必要がありますもんね。
さて、今の子ども達の中には、「とんち」の世界観が分かりにくいと思う子も多いかもしれません。その理由には、昔の言葉や雰囲気になじめない、昔の人々の気持ちや考えが理解が出来ないという事もあるかもれません。
しかし、今でいう【ひらめき問題】【ひっかけ問題】だと考えればとっかかりは良いんじゃないでしょうか。
何より少し難しめな「とんち」を理解出来た時、一休さんの考えが分かった時、嬉しい気持ちになります。
また、数々の問題を解いてきた大人も、「とんち」という世界観は今までのクイズとまた違って、「なるほどー!!」と感動する物があるかもしれません。
絵もリアルすぎず、長野ヒデ子さんの可愛らしい絵で描かれています。その時の登場人物の考えや思いが分かりやすいと感じました。
大人も子どもも一緒に楽しめる「一休さんのとんち話」。歴史好き・クイズ好きな子にもピッタリです!
- 作品名:日本名作おはなし絵本 一休さん
- 著者名:文 杉山亮 絵 長野ヒデ子
- 出版社:小学館