春になったらあけてください
3月の読み聞かせにピッタリ!一体何が届いたのでしょうね?中身は見てのお楽しみ♬あなたにもきっと春が届きますよ。
☆際立った特徴
- 「春になったら開けてください」と書かれた謎の缶登場。
- 「春」って一体いつなんだろう?春の基準は人それぞれ。
- この家族の大切なバラを守る救世主が缶の中から登場!
- 最後には、お母さんの願いが叶った懸賞だったと分かるのですが、それは家族に春を運んでくれた物でもあった。
- 細い線を重ねるように描いている部分と、絵の具をぼやかすように塗っている部分と、色彩豊かで全体的に優しい雰囲気を感じる絵。
☆読み聞かせのポイント
- 缶の中身を想像しながら読み進めていくと面白いですね。何が入っていたら嬉しいかな?
- 「春って一体いつなの?」この正確な答えは…あるのでしょうか?春っていつなのか、どんな時に春が来たと感じるのか、考えてみましょう!
- バラにとってナナホシテントウは、花を咲かせるための救世主のようですね。アリマキには少し残酷では?と思う方もいるかもしれませんが、これが弱肉強食というものなのかもしれません…。

☆あらすじ
「やったー!何か懸賞品が当たったわ!」
郵便屋さんから届いた荷物を見てお母さんは喜んだ。
何が届いたんだろう?
お母さんは懸賞が趣味で、シールを集めてハガキをせっせと書いて応募しているんだけど、何の懸賞が当たったのかピンときていないようだった。僕は箱の大きさから言ってメロンだと思った。早く食べたくて箱を開けると、中には大きな缶がひとつ入っていた。中から匂いはしない。
箱の手紙には「春になったら開けてください」と書かれていた。
春っていつだろう?
帰ってきたお父さんは缶を見て、きっとカニ缶だ!と嬉しそうだった。そして手紙を読んで、「春になったら食べ頃って事かな?」と納得したようだった。
春っていつなんだろう?みんなで話し合ってみた。
桜が咲いたら?会社に新入社員が来たら?お彼岸の日?フキノトウが出たら?
みんな春への想いが違うらしい。ただ、春が待ち遠しいと思った。
3月のある日、お母さんは大切に育てているバラの手入れをしていた。結婚記念日に植えたバラの花だ。
お母さんは、バラの葉っぱに虫がついていないか丁寧に見ていた。毎年5月に咲くのを楽しみにしているのに、去年は虫にやられて咲かなかった。
「あっ!そうか。これだったんわ!」
お母さんは急に思い出してあの缶を取り上げた。耳をあてると、なにやらガサゴソと中から何か音がする。
「『春になったら開けてください』。だったね!開けてみよう!」と3人で息をひそめて開けてみた。すると中には枯れ葉がいっぱい詰まっていて、その中に小さな赤くて黒い点々のあるナナホシテントが動いていた。
ナナホシテントウは冬の間冬眠していたらしい。
お母さんはバラの肥料についていたシールで『幸せを呼ぶ虫プレゼント』に応募していたのだ。
ナナホシテントウはバラにつくアリマキという虫が大好物なんだって。
まだ葉っぱしかないバラの木の枝にナナホシテントウが止まっている。まるで可愛い赤い花が咲いたみたいだ。
メロンでもカニでもなかったけど、皆の気持ちはウキウキだった。
ぼくの家の庭に春が来た。
☆書店員の感想
懸賞が大好きなお母さん。(気持ちよく分かります!)何が届いたのか開けてみるまで分からないのも、懸賞マニアのアルアルかもしれませんね。
「懸賞が好きな」という設定のキャラクターが登場する絵本は、まだまだ少ないのではないでしょうか?とっても面白い設定だなと思いました。現代っぽいですよね!懸賞ってなかなか当たらないけど、当たったら飛び上がる程嬉しくて、どうしてこんな気持ちになるかと考えると、やっぱり「ラッキー!!」だからですよね!ハガキを書いたりネットでアンケートを書く手間はかかるけど、当たればとっても嬉しい事♬。そして、当選しているかどうか待っている間がドキドキワクワクするからだと思いました。
買えばいいのでは?と思う方もきっといるでしょう。・・・違うんです!買うことは簡単だけど、我々は当てたいんです!!(我々とか言っちゃってます…笑)
1度当たると「やめられない止まらない」なんです。
懸賞ハガキを書いて、当選を喜び楽しむ家族の姿。現代っぽくて私はとても面白いと思ったし、何といっても、家族がそれで楽しいと思えるなら、こんなハッピーな事は無いですね!
「春になったら開けてください」と書かれた謎の缶。中身は見えません。
すぐにでも開けたくなりますよねー!わたしならうずうずして仕方がないです。それにしても「春」とは、いつを言うのでしょうか?
梅や桜が咲いたら?入学式の頃?あったかいなーと思わせる風が吹いたら?タケノコがスーパーに並んだら??雪が溶けたら?
春の基準は人それぞれだという事が、本書の中でも描かれています。読者も一緒に考えてみましょう!私はやっぱり雪国に住んでいるので、スノーブーツではなくスニーカーを選ぶようになると、春を感じますよ☆後は、チューリップの芽がグーンと伸び始めたら。
皆さんはどうですか?お子さんと一緒に春を探すきっかけにもなる絵本ですね。

缶からナナホシテントウムシの登場!バラの葉っぱを食べてしまうアリマキという虫が大好物。バラの肥料についていた懸賞で、この『幸せを運ぶ虫』が送られてきたのですが…。今年はきっとバラが咲きますね。
アリマキにしたら不幸な事ではありますが、この家の大切に育てているバラが咲くためには、ナナホシテントウムシにお願いするのがベストのようですね。虫だって弱肉強食の世界に生きていますから仕方がありません。5月にきっと素敵なバラが咲いてくれることでしょう。
そして、ナナホシテントウムシについてお父さんが「お天道様に向かって飛ぶからてんとう虫って言うんだよ。」と教えてくれました。なんだかその話を聞いただけで、春だなーと感じたのは私だけでしょうか。暖かいお日様が私達を照らし、世界を照らし、花が咲き虫が動き出す。動物達は冬眠から起きる。進級進学で新生活が始まる人もいる。
なんだか、この絵本を読んだだけで、私にも春が来たような気持ちになりました。
- 作品名:春になったらあけてください
- 著者名:作 増井那恵 絵 あべまれこ
- 出版社:BL出版