おには そと

節分の季節にピッタリ!「おばけ」の作品で有名なせなけいこさんの描く鬼はとっても怖くて愛嬌たっぷり!

☆特徴

  • 節分の日にピッタリの内容。
  • 豆まきをする子ども達が子どもの鬼と仲良くする展開。
  • 子鬼を助けようと、奮闘するお父さん鬼の姿がカッコいい。
  • どこか憎めない愛嬌のある鬼を描いている。
  • 切り絵・貼り絵で作られていている。
  • 凹凸感や素材の柔らかさ・ごつごつした鎧など、それぞれの質感も見て楽しめる。

☆読み聞かせのポイント

  • ”節分”の日に読むのにピッタリの1作です。鬼が家に入ろうとした時、豆を蒔いて「鬼は外!」と叫ぶ、伝統的な行事を、ぜひ伝えながら読んであげましょう。
  • 一方で、ストーリーは、本当は鬼ってそんなに怖い存在じゃないんだよ。仲良くすることも出来るんだという内容になっています。ちょっと怖そうだけど、どこか愛嬌のある、本書の鬼たち。読者はどう感じたのか、「君はどう思った?」と親子で話してみるのも面白いと思います。
おにはそと 表紙

☆あらすじ

”節分”の日の夜です。

鬼たちがそーっと町に近づいてきました。

子ども達が気がついて、鬼たちに豆を投げつけます。

「えい!」「鬼は外!」

豆をぶつけられた大人の鬼たちは

「痛い痛い!」と一目散に逃げてしまいました。。

その中には子どものチビ鬼もいましたが、豆は当たりませんでした。

パクッと豆を「おいしいおいしい」と食べていました。

一方大人の鬼たちは、豆の痛さに逃げていきました。

取り残されたチビ鬼。

子ども達はチビ鬼がとても可愛く見え、一緒に遊ぶことにしました。

その頃、住み家に戻った大人の鬼たち。

「チビ鬼だけ逃げられなかった!きっと捕まったんだ!」と大騒ぎ。

急いで、いらない鉄棒を叩いて丈夫な鎧を作り、チビ鬼を助けに行こうとしました。

鎧をかぶった赤鬼の親分。

チビ鬼を取り返すために、いざ人間の町へ出発です!

一方子ども達は、鬼ごっこの真っ最中。

子ども達もチビ鬼も混ざって遊んでいました。

そこへ鎧をかぶった親分赤鬼がやって来たものですから、子ども達もチビ鬼も

「鬼が来たぞー!やっつけろー!」と喜んで、豆まき再開です!

鎧に豆が当たると痛くはないのですが、カンカンカンカンと音が響くものですから、

うるさくてたまったものではありません。

あまりのうるささに、ステーンと尻もちをついて顔の鎧が外れてしまいました。

するとチビ鬼は自分のお父さんだと気がつきました。

「なーんだ、鬼ってそんなに怖くないんだね。」と子ども達。

「なーんだ、チビ鬼は人間たちに捕まったわけじゃなかったのか」と赤鬼。

お互いに勘違いしていたのでしょうね。

☆書店員の感想

ご自身でも本書のカバーに、「オバケなら得意の私が、珍しく鬼に取り組んでみました。」とコメントを載せています。

せなけいこさんといえば、オバケの絵本が多い中、鬼となるとどうなるのか・・・とっても楽しみな気持ちで絵本を開きました。

節分の夜に鬼たちが人間の住む町にそーっと近づく様子が、冒頭に描かれているのですが、そのページは何とも不気味で、鬼って怖そう!!これからどんな怖いお話が始まるのかなと心配になる程のページになっています。しかも鬼たちはシルエットのみが浮かび上がり真っ黒に描いているのでとても怖く感じます。

しかし、1ページめくると、なんと子ども達に豆を蒔かれて退治されているではありませんか!!しかも全てがフルカラーで、場面が急にパッと明るくなります。

この急展開には驚きました。さっきまでの恐怖心はどこへやら・・・。鬼たちのあまりの弱さに可愛そうと感じるほどです。

豆に当たって、その痛さで大人の鬼たちは逃げて行ったものの、1番小さな子どものちび鬼だけはモグモグと豆を食べ、「おいしいなー」と喜びんでいます。逃げずにポツンと取り残されたように食べ続けています。

そんなちび鬼と、人間の子ども達は次第に仲良くなり、のちに一緒に鬼ごっこをして遊ぶのですが、本物の鬼が入った【鬼ごっこ】って・・・、しかもちび鬼は鬼ではなく逃げる側。

きっと大人はその不自然さにクスッと笑えます。

一方、逃げた大人の鬼たちは、ちび鬼を置いてきてしまった事に住み家に着いてから気がつきました。おそらく、体裁が悪いのでしょう。「ちびちゃんだけ逃げられなくて・・・」と親分に言い訳をしています。(無我夢中で逃げたから、ちび鬼を忘れていっただけだろー!とツッコミを入れたくなる私。)

「人間に捕まった!大変だ!助けに行かなければ!!」と、親分鬼はとても慌てます。

急いで作った鉄の鎧を身にまとい、人間の世界へ向かうのです。鎧まで作って重装備で立ち向かった親分鬼。子分は引き連れていません。一人で助けに行くなんてカッコいいなーと、私は感心したのですが、それには訳がありました。

お話を読み進めると後にちび鬼はこの親分鬼の子どもであると分かるのですが、だからだったんだ!と、私は同じ親の立場として、感動しました。

子どもを今すぐにでも助けたい!!と強く思う気持ちがすごく伝わったからです。私もきっと子どもが困っていたら武器を持って一目散に助けに行きたいです!!

子どもを持つ親の気持ちは、きっと人間も鬼も一緒なんだなと思いました。

そう思うと、鬼って実は悪い奴ばかりではないのかも・・・と、鬼がちょっぴり好きになりました。

裏表紙を見てください★可愛いちび鬼が「バイバーイ!また来年遊びに来るよー!」と手を振っていますよ。袋いっぱいの大豆のお土産を持って♬

帰ってゆっくり親子で豆を食べるのでしょうかね。

おにはそと 裏表紙
よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。