おねがい パンダさん

ユーチューブ動画で保育士書店員が詳しく解説しています

「おねがいします!」「ありがとう!」と、ちゃんと言えてますか?感謝の気持ちって大切ですね!3歳頃からオススメ!感謝の言葉を忘れかけている大人にもピッタリ!

☆3つのおすすめポイント

  1. パンダさんが、箱いっぱいのカラフルなドーナツを持って、このドーナツをもらってくれる人を探します。でも、パンダさんが納得のいく答え方をしないと、ドーナツはもらえません。
  2. ドーナッツをもらえたのは、キツネザルさんでした。もらう時に交わした会話の中に、他の動物とは違った気持ちが込められています。それはきっと”感謝の気持ち”です。
  3. フワフワなボディーで可愛い顔をしているパンダさんなのですが・・・目の奥が笑っていないように見えます。どんな気持ちでいるのか、読み取れない所が謎を深めます。

☆あらすじ

箱に入ったドーナツを、パンダさんが持って、ペンギンさんの元へ行きました。そして、

『ドーナツ、いかがですか?』

と、尋ねます。すると、ペンギンさんは、

「ピンクのやつ、くれよ。」

と指をさして答えました。しかし、パンダさんは、

『やめておきます。あげません。』

と、ペンギンさんに背中を向けて、どこかへ行ってしまいました。

パンダさんが、スカンクさんの元へ行きました。

『ドーナツ、いかがですか?』

と、尋ねます。スカンクさんは、

「あおいのと、きいろいの おくれよ!」

と指さして言いました。しかしパンダさんは、

『やめておきます。あげられません。』

と、スカンクさんに背中を向けて、どこかへ行ってしまいました。

次はフラミンゴさんです。しかし、そっぽを向いて

「いらないわ。」

と、断られてしまいました。

ボートに乗って、広い海までやって来たパンダさん。大きなクジラさんに、

『ドーナツ、いかがですか?』

と、尋ねます。しかし、クジラさんは強い口調で言いました。

「全部よこせ!もっとたくさん持ってこい!」

パンダさんはすぐさまボートを漕いでその場から離れました。

『やめておきます!ドーナツあげられません!』

さあ、陸に戻ってきたパンダさん。

『どなたか、ドーナツいりませんか?』

と、呟きました。するとそこへやって来たのは、ワオキツネザルさんです。

「こんにちは。どうか・・・おねがいパンダさん。僕にドーナツくださいな!」

するとパンダさん、

『はい、ぜんぶあげます!』

と、箱ごと全部を渡しました。ワオキツネザルさんは、とっても嬉しそうに言いました。

「わあ、どうもありがとう!ドーナツ大好きなんです!」

するとパンダさんは、

『どういたしまして。ぼくドーナツ大きらい』

と、歩いて行ってしまいました。

おねがい パンダさん 表紙

☆際立った特徴

27cm×27cm。やや大きめな正方形の絵本です。

カラフルなドーナツを持った白黒のパンダさん。登場する動物達も全て白黒です。

「ドーナツ、いかがですか?」パンダさんがもらってくれる人を探して歩きます。でも、欲しいと言ってきた人に・・・あげません。どうしてでしょう?

パンダさんには、しっかりとした考えがありました。

感情を表に出さない無表情のパンダさん。何を考えているのか読み取れない所が、なんともいい味を出しています!

シンプルでありながらユーモラス。人それぞれで、解釈がわれる物語だと思います。親子で、友達と、「あーでもない、こーでもない」と、会話も弾みます。

色んな読み方を楽しめる絵本です。

☆書店員の感想

パンダさんが、箱いっぱいのカラフルなドーナツを持って、このドーナツをもらってくれる人を探します。でも、パンダさんが納得のいく答え方をしないと、ドーナツはもらえません。

箱いっぱいに入ったドーナツを両手で大事そうに持って、ペンギンさん、スカンクさんの元へそれぞれ行きました。「ドーナツいかがですか?」と丁寧に尋ねるパンダさん。

しかし返ってきた答えは、『ピンクのやつくれよ!』『あれと、それをおくれよ!』でした。

パンダさんは、すぐに背中を向けて歩き出します。「ドーナツあげられません!」と言いながら。その背中を見つめながら、二人はキョトンと不思議そうな顔で見ています。あれ?くれないの??と状況を理解できていない様子の2人なのでした。

そして極めつけは、クジラさんです。わざわざボートでクジラさんのいる海へ向かったパンダさん。「ドーナツいかがですか?」と尋ねた答えが、『全部よこせ!もっともってこい!!』でした。

パンダさんはすぐに「やめておきます!ドーナッツあげられません!」と言いながらボートを漕いで陸へ戻りました。

実はクジラさんは、その後ポロポロと涙を流しています。よほどドーナツが欲しかったのでしょう。惜しい事をしやクジラさんでした。

ドーナッツをもらえたのは、キツネザルさんでした。もらう時に交わした会話の中に、他の動物とは違った気持ちが込められています。それはきっと”感謝の気持ち”です。

ワオキツネザルさんの登場シーンは、他の動物達とは違っています。ワオキツネザルさんはもしかしたら、木にぶら下がりながらパンダさんに話しかけているのかもしれません。

したがって、「おねがいパンダさん。ぼくにドーナツくださいな!」と頼むキツネザルさんは、逆さ状態で描かれています。ドアップです。急に事にもしかしたら読者は驚いてしまうかもしれません。きっとパンダんさんの目線で描かれているのでしょう。

そして、それを聞いたパンダさんは、いよいよドーナツをあげることにしました。

『はい、全部あげます。』

ワオキツネザルさんも木から降りて、両手を合わせてパンダさんに感謝を伝えます。「どうもありがとう!ぼくドーナツ大好き!」と、ドーナツの箱に入って、喜んで食べ始めました。

最後に、『どういたしまして。ぼくドーナツだいきらい!』と言ったパンダさんの声は、もう聞こえていないほど、ドーナツに夢中のキツネザルさんでした。

読者には、「えー!!!???」と言ってしまうほど、衝撃的な捨て台詞でしたが・・・(笑)

フワフワなボディーで可愛い顔をしているパンダさんなのですが・・・目の奥が笑っていないように見えます。どんな気持ちでいるのか、読み取れない所が謎を深めます。

パンダと言えば、愛嬌があっておっとりしていて、誰からも愛されるキャラクターで描かれることが多いのではないでしょうか?しかし、本書のパンダさんは、なんだかへそ曲がりで目が笑っていません。そんなパンダさんがドーナツをもらってくれる人を探すのですが、なかなかプレゼント先が見つかりません。

欲しいって言っているペンギンさんやスカンクさんに、どうしてあげないの?

「ドーナツあげられません!」と背中を向いて歩き出すパンダさん。この時、一体どんな心境なのでしょうか?

後姿なので、読者にはパンダさんの表情は分かりません。もしかしてプンプンに怒った顔をしていて、文句を言っているのかもしれません。

もしかして、呆れた顔をしていて、何を言ってるんだか・・・とボヤいているのかもしれません。

『だから、あげなかったんだね』と、決まった答えがないのが、本書の面白い所なのです。一緒に読んだ後に、親子で・友人と、「パンダさんのこの時の気持ちってなんだったんだろうね?」と話をすれば、きっと、それぞれ違った解釈があることでしょう。

そして極めつけは、ラストシーンです。

『ぼく、ドーナツ大きらい』と言って去って行ったパンダさん。

どうして嫌いなドーナツを持っていたのか、嫌いなら誰でもいいからすぐにあげても良かったのでは??と謎が深まりますね。しかし、パンダさんはいくら嫌いでも、あげるからには丁寧にお願いされたいのです。そして、1番美味しく食べてくれる人にプレゼントしたいののかもしれません。私はそう解釈しました。

さあ、裏表紙を見てください。ドーナツを渡さなかったフラミンゴさん・スカンクさん・ペンギンさんの元へ、またパンダさんはドーナツを持って行きましたよ。

きっと「ドーナツ、いかがですか?」と言っているのでしょう。

今度はちゃんと『ドーナツください!』『ありがとう』と言えるかな?

  • 作品名:おねがい パンダさん
  • 著者名:作 スティーブ・アントニー 訳 せなあいこ
  • 出版社:評論社
おねがい パンダさん 裏表紙

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。