かぜのひ だあいすき

秋の読み聞かせにピッタリ!どんな日だって楽しくて面白い事が見つかるよ★

☆特徴

  • 初版は1984年。
  • 秋を楽しむ子ども達。
  • 見方を変えるだけで、今日という日が特別に感じると伝わる内容。
  • ちぎった和紙に着色する技法。
  • 温かみと優しさに溢れる色使いと言葉。

☆読み聞かせのポイント

  • 「楽しい事って、どんな日でも見つかるものよ」というお母さんの一言は、大人にも子どもにも心に響く物があります。何気ない毎日を楽しく過ごすための工夫ですね。
  • 秋の少し肌寒い感じと、紅葉した景色の温かさを感じる絵本です!秋に読めば、実際に公園に行った時の様々な発見にも繋がりそうですね!
かぜのひ だあいすき 表紙

☆あらすじ

ある朝、こぐまのモックが窓の外を見ると、風がビューと吹き荒れていました。

もっくはガッカリした気持ちです。

朝食を食べるもっくの様子がなんだかいつもと違う事に気がついたお母さんが訳を聞きました。

今日はきつねのコンちゃんと紙飛行機で遊ぶ約束をしていたのに、風が強いから遊べない…と話しました。

元気に遊んでおいで。楽しい事はどんな時だって見つかるものよ。と優しく見送りました。

コンちゃんが先に約束した場所に着いていました。

風は強いけど飛ばしてみようか。と二人は紙飛行機を飛ばしてみましたが、思うように飛びません。

せっかく作ったのにね。と二人はガッカリ顔。

しかし、そこにどこからかうさぎのミーミのピンク色のハンカチがフワフワっと飛んできました。

拾おうとするとフワッと飛んで行ってしまうハンカチ。

「風と追いかけっこしているみたい!」「鬼ごっこだ!」と3人は喜んで捕まえに走ります。

ミーミのハンカチは、野原のはずれにある木の枝にひっかかってようやく止まりました。

そこには栗の実が沢山落ちています。

もっくたちは、栗ひろいに夢中になりました。そして拾った栗を見せ合いっこ。

みんなの表情はニッコニコ笑顔です。

3人は拾った栗をポケットやハンカチがギューギューになるほど摘めて、もっくの家に帰りました。

楽しそうに帰ってきた3人の姿を見たもっくのお母さんは笑って、「風の日だったけど、楽しい事見つけたみたいだね。よかったね。」と言いました。

☆書店員の感想

可愛いクマの子、もっくが描かれた表紙。紙飛行機を口にくわえて少し寂しいような表情です。どうしたのかな?悲しげな表情には理由があります。

「せっかく昨日紙飛行機折ったのにな。」と、朝から悲しい気持ちのモック。窓の外の風の様子を見てそう感じたもっくは、朝ごはんの時も悲しそうな冴えない顔をしています。

そんな様子を見たもっくのお母さんは、訳を聞き、もっくに素敵なアドバイスをしました。「どんな日だって、楽しい事は見つかるよ!」

その後のもっくの表情を見ると、「そんなこと言われても…紙飛行機飛ばせないし、風強いし…。」と、否定的に思っているように見えます。

気持ちが切り替えられないもっくに、素敵な出来事が起こります。悲しくてどんよりしていた気分を一変させたのも、実は「嫌だな、やんでくれないかな。」と思っていた”風”でした。

みーみのハンカチを飛ばした風。ハンカチを一緒に追いかけるうちに3人はどんどん楽しい気持ちに。

風で飛ばされるハンカチを必死に追いかける3人。だけど追いかけている間に「風で飛ばされるハンカチと追いかけっこしているみたい!」と気持ちが少しずつ変わっていきます。

不思議ですね。最初は目的の為にだったのに、遊びに変化して、追いかけっこ(鬼ごっこ)をとことん楽しみます。

心の切り替えの速さと、楽しい事を探し出す子どもの世界観を感じるシーンでした。

そして、ハンカチが野原の外れの高い木の枝にひっかかって止まるのですが、その木が大きな栗の木だったというラストの展開が、とっても素敵です。

3人が風と遊ぶ姿に喜んだ風の神様が、3人にプレゼントをくれたように思いました。風が吹いていたからこそ追いかけっこが出来て、栗を見つけることが出来ました。

友達がいるからどんな事も・どんな日も楽しい!

一人より二人、三人と友達が増えれば、小さな面白さも10倍20倍に感じることができます。モック達もきっと3人そろったからこそ、ハンカチを追いかけるのも、栗を拾うのも楽しくて嬉しくてという気持ちになったのでしょう。

時には競って、時には見せ合いっこして、そんなほのぼのとした子ども達の世界観がとっても優しい目線で描かれていると思いました。

温かみのある雰囲気を感じる絵と落ち葉の表紙が、秋を感じさせます!!秋の読み聞かせにピッタリ!!

本書は、表紙でも伝わる通り、いもとようこさんの優しい目線で描かれたキャラクターと作風が印書的!和紙を着色して使用しているんだそうです。和紙は例えば真っすぐに切ろうとしてもどうしても曲がったり、繊維がぼやぼやと残ってしまいます。そのぼやぼやとした繊維がハサミで切った線よりも温かみを感じさせます。和紙の温かみと、優しい雰囲気が本書の内容にピッタリだと、私は思いました。

そして、文章も特徴的であり、印象的!!

一文字一文字に深みがあり丁寧です。優しさで包まれているように感じます。例えば、風がビュービュー吹いて、ガッカリしているモックに対して「どんな日だって楽しい事は見つかるよ。」と言ったお母さん。その後に「わたしはシーツをあらうわね。今日はきっと、よくかわくでしょう。」と言って、出かけるモックを見送るのですが、この言い回しだけでも、私はお母さんの愛情を感じました。

風が無い日よりも、風が吹く日はシーツを洗って干すには最高の日なんだよと、遠回しに伝えているんですよね。

子どもに優しく伝わり、それが「大丈夫!見つけておいで!!」という一方的な押し付けにならないように考えられているなと思いました。

〇大人にも響くモックのお母さんの想い。

どんなにつまらない日だって、予定通りにならなくても、きっとそこから新しい楽しみや面白さを見つけることが出来る。それは一人でも大人数でも。考え方を少し変えてごらん。きっと見つかるよ。と、モックのお母さんが、読者の子ども達にも、大人にも伝えているのではないかと思うのです。

かぜのひ だあいすき 裏表紙
よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。