ちいさなねこ

ユーチューブ動画で保育士書店員が詳しく解説しています

迫力ある展開にドキドキ!!子猫の冒険と、母猫の子どもを守らないと!と思う力強さが表現された絵本。動物好きにピッタリ!冒険好きの子にもオススメ!

☆3つのおすすめポイント

  1. 子猫が近所の冒険へ出掛けました。思いもよらない出来事に驚きながらもどんどん歩いて進んでいきます。そこで出会ったのは大きな犬。なんだか犬にいじわるされている様な状況で、子猫は爪を立てます・・・。
  2. 木に登って「にゃお!にゃお!」とお母さん猫を呼ぶ子猫。その声を聞き分けて子猫を探し救い出すお母さん猫の姿に、力強さを感じます。
  3. 1963年に初回発行された本書は、日常の猫の親子を描いています。所々に昭和感があり、緊迫した展開や猫や犬の目線で描かれた写実的な絵が、どんどん読み手を引き込んでいきます。ハラハラドキドキし、最後はおっぱいを飲む子猫と同様に安心した気持ちになる絵本です。

☆あらすじ

大きな家の大きな部屋に猫の親子がいました。小さな猫がお母さん猫が見ていない間に外に出てしまいました。門を出てどんどん走っていきます。一人で出かけて大丈夫かな。

急に小さな猫は近所の子供にガシッと捕まえられましたが、子供の手をひっかいて逃げ出しました。そしてどんどん走っていきます。車道に飛び出して「危ない!!!」自動車が急ブレーキをかけて止まったお陰で、ひかれずに無事でした。

また、走り出した小さな猫。今度は向こうから大きな犬がやってきました。

大きな犬は小さな猫をとおせんぼ。小さな猫は怒って犬の鼻ひっかきました。すると、犬は小さな猫を追いかけました。犬はどんどん小さな猫に追いついてきます。目の前にあった木に急いで登りました。猫は木に登れるけど、犬は登れないからもう安心です。

小さな猫は高い木に登り「にゃお!にゃお!」と鳴き、犬は小さな猫を見上げて吠えています。

その頃、お母さん猫は子猫の声を聞き、探しにかけ出しました。自動車の道を抜け、子どものそばを通り・・・子猫を見つけたお母さん猫。「ああ、いたいた。あんな木のてっぺんに!え!?木の下で犬が吠えている!?」

お母さん猫は犬に向かって「ふうっ!」「ちいっ!」と怒り、犬を追い払いました。それから急いで木に登り子猫を口にくわえて木から降りてきました。お母さん猫はうちへ帰って行きます。子猫を口にくわえたまま。そして、おおきな部屋で小さな猫がお母さんのおっぱいを飲んでいます。

ちいさなねこ 表紙

☆際立った特徴

小さな子猫の大冒険のようなストーリーでもあり、子猫をお母さん猫がしっかり守り育てている日常の猫の親子の様子を描いている絵本でもあります。

そして、子猫はまだまだ生まれたばかりで世界を知らない赤ちゃん猫です。子猫の住む家の近所ではありますが、子猫にとっては未知の世界で、きっとお母さんんがいなくても大丈夫!行ってみたい!!という好奇心で出掛けたのでしょう。しかし、子猫を待っていたのは、思ったよりも危険な世界でした。

子猫の目線で描かれた迫力のある写実的な絵と、緊迫した展開に読み手はハラハラドキドキします。

☆書店員の感想

子猫が近所の冒険へ出掛けました。思いもよらない出来事に驚きながらもどんどん歩いて進んでいきます。そこで出会ったのは大きな犬。なんだか犬にいじわるされている様な状況で、子猫は爪を立てます・・・。

お母さん猫が見ていない間に、「自分一人でも大丈夫!きっと楽しいぞ!出掛けてみよう!」という子猫の気持ちが伝わるようなオープニングです。しかし早速子どもに捕まります。子どもは加減知らずですので、かなり思い切り捕まれているように見えます。抵抗するには爪を立てるしかありません。無事に逃げ出したと思ったら今度は車です。急に飛び出した子猫と、ギギギー!!とブレーキをかける車。一瞬の出来事に読み手はドキッ!!とします。が、子猫の顔がひょっこり車の陰から出てきたら、『ひかれなくて良かったー』と安堵します。そして極めつけは大きな犬です。オオカミのような大きくて黒い犬に近づかれた時には、子猫はきっと怖かったでしょうね。そして子猫に顔を近づけます。緊迫した状況に読み手も息をのみます。そして、いよいよ子猫は怒り、小さい体でも精一杯体を大きく見せるように全身に力を入れて爪を立てます。そして一瞬の隙に犬をひっかいて逃げたのです。

あまりにも一瞬の出来事。犬は追いかけていきます。まだまだ緊迫感が続きます。

木に登って「にゃお!にゃお!」とお母さん猫を呼ぶ子猫。その声を聞き分けて子猫を探し救い出すお母さん猫の姿に、力強さを感じます。

犬に追いつかれそうな子猫。追いつかれて噛まれようものなら、子猫は何をされるか分かりません。命を失うこともあるかもしれません。何とか木に登り逃げることが出来たものの、木の下で吠える犬に死の恐怖を感じているのかもしれません。それほどに緊迫した状況です。子猫は鳴きます。「にゃお!にゃお!」と。きっと「お母さん助けて、僕はここだよ!」と言っているのかもしれませんね。その声を聞いて助けに行ったお母さん猫。緊迫した子猫と犬の状況を見た時には、驚いたことでしょう。

しかし、一瞬で状況をつかみます。そして、わが子を助ける強い気持ちで大きな犬に立ち向かうのです。「ふうっ!」「ちいっ!」と怒っただけで逃げて行った犬。恐らくお母さん猫の子猫を守ろうとした殺気立つような必死な気持ちや威圧感に、負けたのでしょうね。絵を見ているだけで読み手も恐ろしさを感じるようなお母さん猫の姿です。子猫を守るお母さん猫の力強さを感じます。

そして、口にくわえて子猫を木から下ろし、家に連れて帰ります。まだ殺気立つような雰囲気を残したまま、お母さん猫は子猫をくわえています。『まだまだ安心できない。このまま連れて帰ろう。』と思っているのでしょうか。お母さん猫にくわえられた子猫の表情は「ごめんなさい」と言っているようです。

そして、家に帰りおっぱいを飲ませる頃には、優しいお母さん猫に戻っています。

猫の親子の安心した様子に、ようやく読み手も安心して、「はーよかった」と心が落ち着きます。

1963年に初回発行された本書は、日常の猫の親子を描いています。所々に昭和感があり、緊迫した展開や猫や犬の目線で描かれた写実的な絵が、全く時代を感じさせません。どこにでもいるような猫の親子です。きっと放し飼いの猫は、みな同じように生活しているのでしょう。しかし、その猫の目線に立つと、外には危険や怖いもので溢れていることに気づかされました。こんなにもハラハラドキドキするような展開の絵本だとは思わず読み始めましたが、きっと猫にしたらこれが現実の世界なのだろうなと思いました。

そして、子どもを想う母猫の姿がとても素敵でした。殺気立つ程の子どもへの愛情や守りたいと思う気持ちを、これほど感じられる絵本はそうそうありません!!

ちいさなねこ 裏表紙

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。