なきんぼ あかちゃん

なきんぼ あかちゃん 表紙

冒険やミステリアスな絵本が好きな子にピッタリ!不穏な雰囲気の先にはハッピーエンド?!

☆特徴

  • おとぎ話のようなお話。
  • 昔のヨーロッパのような雰囲気の絵。
  • 不穏な雰囲気と、恐ろしい表情の登場人物達。
  • 大胆で迫力のある絵の構成と隅々まで細かく描くこだわった背景。
  • 表情の変化で、お母さんの心情が強くはっきりと伝わる。
  • イメージや思い込みについて考えさせられる。

☆読み聞かせのポイント

  • ドキドキを超えて、少し恐怖を感じてしまう瞬間もある事でしょう。でも大丈夫。怖く見えてみんな良いキャラクターばかり!!「大丈夫だよ」と安心させてあげながら読んであげてくださいね!
  • なんだか怖いかも…と感じた後こそ、「良かったー!」と、その安堵感は強いです。お話にグッと引き込まれます!お母さんと自分がいつの間にか重なり、赤ちゃんのお母さんになったような気持ちになるかもしれません。
  • ラストシーンで飛んでいった親子の行き先はどんな所なのか。絵のヒントがあるので、一緒にこのお話の先(未来)を考えてみましょう!

☆あらすじ

ある所に、よく泣く赤ちゃんがいました。

今日はいつもにも増してよく泣いて、しかも元気があるものですから、家の屋根を突き抜けて飛んで行ってしまいました。

お母さんは大慌てで赤ちゃんを追いかけます。

赤ちゃんが飛んでこなかったかと、農家のおじさんに尋ね、うばぐるまのおばあさんに尋ね、森の奥のこもりの好きなクマに尋ね、食いしん坊のリスに尋ね、魔女の家を尋ね、とうとう崖にある、はげたかの巣まで探しにきました。

お母さんは巣の中でスヤスヤ眠る赤ちゃんを見つけました。

ようやく会えた我が子をお母さんはギュッと抱きしめました。

そこにはげたかが帰って来ました。

お母さんは襲われるんじゃないかと気が気じゃありません。しかしはげたかはこう言いました。

「赤ちゃんが急に飛んできて、お腹が空いたと泣いていたんだ。」

そうだったんだとお母さん。

そして、はげたかは口に加えていたイチゴを赤ちゃんに渡しました。

受け取った赤ちゃんはお口にパクッ。するともらったイチゴが酸っぱくてまた泣き出しました。

また勢いよく泣く赤ちゃん。

今度はお母さんと一緒に遠くへ遠くへ飛んじゃったそうです。

☆書店員の感想

主役の赤ちゃんは、よく泣く赤ちゃん。泣く勢いが強すぎて、屋根を突き抜けて飛んで行ってしまうというユニークな設定。

「赤ちゃんは泣くのが仕事」とよく言いますが、本書の赤ちゃんの”泣き”は、他の赤ちゃんと違うようです。ある日、元気よく泣きすぎてその勢いで屋根を突き破って、遠くに飛んで行ってしまうのです。

その様子を外で洗濯を干していたお母さんが見て、ビックリ仰天!!持っていた洗濯物なんか投げ捨てて、赤ちゃんを追って走り出しました。

まさか元気に泣いたパワーで室内からポーンと飛び出るなんて、思ってもみない展開。私は驚き、このユニークな設定に、引き込まれました。

よく考えたら、赤ちゃんって泣く時、優しい鳴き声もあれば、全ての感情を大人にぶつける様に、泣き叫ぶことがありますよね。小さな体の中のどこに、こんなパワーがあるのかと驚きます。まさにエネルギーの塊!!なのです。

表紙の赤ちゃんを見てください!

この遠くへ飛んでいくシーンでは、もっともっと強く泣いています。私の感じた”エネルギーの塊”と同じものを感じます。

みなさん必見です!

お母さんが探し回る先にいたキャラクターは、そもそも怖そうなイメージのある者ばかり。みんなを犯人のように疑って見てしまうお母さんの気持ちがリアル!

愛する我が子が飛んで行ったのですから、お母さんはとにかく気が気じゃない!!

走っていった先で色んな人物と出会い、赤ちゃんの行き先を聞いて回ります。しかし、なんか見た目が怖ろしそうな普通じゃない雰囲気の人ばかりと遭遇してしまうのです。

例えば最初に出会った農夫のおじさん。自分は見ていないけど、この先の”うば車を押したおばあさん”のうば車の中を覗いて見ろと言うのです。

「うば車の中って・・・」お母さんと読者の中に不穏な空気が一気に差し込みます。

結局は畑から盗んだ野菜が入っていただけで赤ちゃんはいませんでした。畑から盗んできた野菜・・・も気になる所ですが、とにかく『ひとまず良かった。』と安心します。

そのおばあさんから言われたのが、「森の中に住む子守りの好きなクマに聞いてごらん」。

またまた不穏な空気が流れ込みました。「子守りの好きなクマって?クマが自分の子どもと間違って連れて行った・・・?」なんて想像して怖くなります。

しかしクマの背中でおんぶされていたのはクマのヌイグルミでした。またまた『良かった…』と安心します。

その後クマには「食いしん坊のリスの口の中を見てごらん」と言われ、またまお母さんと読者は冷汗が…。「まさかリスに?食べ物と勘違いして???」嫌な想像がまたしても頭をよぎります。

この後も、様々な人・動物などと遭遇し、その都度「あそこに行ってさがしてごらん!」と言われるのですが・・・。毎回不穏な空気が流れ、不安な気持ちになり、結局違って「ひとまず良かった…」と安心する展開が繰り返されます。

見つかるまでずっと心配で胸がいっぱいなんだろうと読者の心の中も心配な気持ちでいっぱいになっていきます。気がつけばすっかりお母さんの気持ちと重なっている自分に気づきます。

大丈夫、もうすぐ見つかります!会えます!

ハゲタカの巣でようやく赤ちゃんを見つけることができたお母さんと、ハゲタカのやりとりから見える、疑う事の愚かさと、どうしてもそうなってしまう母の心境。母としての成長。

ハゲタカの巣の中でスヤスヤ眠る我が子を見つけたお母さんの心境は、どうだったのでしょうか。私なら安堵したと同時に、「よくも私の大事な子を!!」と怒りが湧いてハゲタカを憎む気持ちになるでしょう。

本書の中のお母さんの表情を見ても、おそらく私と似たような気持なのではないかと思いました。そんな中、どこかから帰ってきたハゲタカに、今度こそ何かされるんじゃないかと怯えながらも、子どもを守ろうと必死になるお母さんの姿。母は強しとはこの事だと思いました。

しかし、ハゲタカは全くそんな気持ちはありませんでした。

逆に、「赤ちゃんが飛んできてお腹が空いたと泣くからイチゴを持って来てあげたよ」と、赤ちゃんをあやす、優しい鳥でした。

ここでハッ!!としませんか?見た目とイメージだけで悪者だと勘違いしてしまった自分がいました。おそらくこのお母さんも私と同じです。

ハゲタカだけでなく、今までの展開の中でも、何度も見た目やキャラクターのイメージで疑ってしまいました。

いけませんね。疑う前に信じる事が出来たら、もっと優しい目で見れたのかもしれません。でも・・・、お母さんはそれだけ必死だったという事も伝わってきますね。赤ちゃんは自分では動けないのですから、守ってあげなくては!!と思うのもまた、親心なのですね。

最後に吹き飛んでいく二人の行く先と、お母さんの目。

さて、無事に赤ちゃんを抱くことが出来たお母さん。よかったね!なエンディングだったのですが・・・なんとハゲタカからもらったイチゴが酸っぱくて、また勢いよく泣いてしまいました。さあ、これは大変です。またまた吹き飛んで行ってしまいました。

でも安心してください。今度はお母さんも一緒です。

二人でなら、楽しい冒険になりそうですね。どんな出会いが待っているのかな?今後の想像が楽しみになるラストシーンでした。

なきんぼ あかちゃん 裏表紙

参考文献)KUMONがうた・読み聞かせを応援【ミーテ】 作家インタビュー 

本書を作った時のお話をされていました。「お話を考える上で意識したのは、マザー・グースです。でも、お話が全然ないとつまらないので、昔話との中間を目指しました。」

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。