はるまちくまさん

春の読み聞かせにピッタリ!文章少なめ、絵から様々な気持ちを感じ取れる、2・3歳の子におススメの絵本です。

☆際立った特徴

  • アメリカ生まれの絵本です。
  • 春の暖かい時期を待つ、冬眠中のクマさんのお話。
  • 筆で描かれる色鮮やかで柔らかいタッチの絵。
  • クマさんの夢の中に登場する春夏秋冬の景色は、まるで夢のような美しさ。

☆読み聞かせのポイント

  • クマさんの夢に登場する春夏秋冬の景色とは?何があるのかな?と一緒に絵を見ながら春らしいもの・夏らしい物と、それぞれ探してみてください。こんな事が本当に起きたら素敵だねと思うような事もありますよ。
  • どうして冬になるとクマさんはぐっすり寝てしまうのかな?「冬眠」する動物についても教えてあげると良いですね。
  • 夢から覚めたクマさんが、本当の春を楽しむラストシーン。読者にとってもとても春が待ち遠しくなる絵ですよ。3月4月の春の読み聞かせにピッタリだと思います!
はるまちくまさん 表紙

☆あらすじ

冬です。雪が降っています。

ここはクマさんのお家。木の幹に大きく開いた穴があり、木の葉が敷き詰められ、そこでクマさんは大きな体を丸めて、グッスリ眠っています。

クマさんは夢を見ました。

温かい春の夢です。クマさんは子どもの頃に戻ったのか、小さな子熊になって大きなピンクのクロッカスの花の中にうずくまってまだ眠っています。色とりどりの花が咲き、暖かい森の中です。

クマさんは次に夏の夢を見ました。

太陽はヒナギクに見えるし、緑の葉っぱは蝶のようにヒラヒラと飛んでいます。雲が出て雨が降ったと思ったら、ブルーベリーの粒が降ってきました。

口を大きく開けたクマさんは、ブルーベリーを食べて「あー美味しい♬」

クマさんは次に秋の夢を見ました。

鳥も川も魚も、みんな不思議なことに黄色とオレンジ色の世界のように染まって見えます。

木に登って辺りを見回すクマさんです。

クマさんは冬の夢も見ます。一面真っ白で、夜になると虹色の星がキラキラと輝いて見えます。その空を雪の上で、じっと座ってクマさんは見ていました。

クマさんは、沢山眠って夢を見て、春を待ちます。

そしてある時ようやく目が覚めて、でもまだ眠り足りない位に感じて、あくびをしました。

体をグーンと伸ばして、洞穴から出て、外の景色を見てみました。

クマさんは目をパチクリ!

辺りいっぱい花が咲き、黄色い蝶がヒラヒラ飛んでいます。お日様はポカポカ暖かく、とっても気持ちがいいです。

もう、これは本物の春。夢じゃなさそうですね。

☆書店員の感想

少し寒さの残る、3月・4月の読み聞かせにピッタリな絵本です。

本書は春を待つ、冬眠中のクマが主人公です。

夢の中で春夏秋冬の夢を見て、夢だから現実とは少し違ったり、不思議な現象が起こっていたりするのですが、それはクマの夢の中。それぞれを楽しんでいる姿がとっても可愛らしく描かれています。

例えば春の夢です。最初に冬眠するクマの絵が描かれているので、読者はこのクマはどう見ても大人のクマだなと知っているのですが、春の夢では小さな子熊に戻ったように、小さな体になっています。

クロッカスのピンクの花の中でうずくまるように、眠っています。昔、子どもの頃お母さんの胸の中でうずくまって眠っていた事を思い出しているのでしょうか。クロッカスの花もまた、子熊を大事に包み込むように落ちないように、包み守っているように描いています。

夢の中で眠っているクマ。まだまだ眠たいのですね。その姿はとても可愛いです。

夢の中のクマが見ている夢は、もしかしたらお母さんの夢ではないかな?なんて想像してしまうシーンでした。

夏の夢はブルーベリーの雨を食べる夢で、こんな雨が楽しいなと思わせるようなシーンが描かれます。

秋は逆に少し不思議。秋の森は紅葉してオレンジや黄色や茶色に染まる物だけど、夢だからでしょう、クマのエサになる川魚も同じように紅葉しています。木によじ登って上から魚を狙うクマにしたら、どれが魚なんだか「何が何だか分かんないや!」と言いたくなるような雰囲気。

冬の夢は、ただクマが座ってキレイな夜空を見上げている夢です。いつも冬眠しているクマにとって、冬の森そのものが見た事のない新鮮なのかもしれませんね。キラキラと輝く雪と星と月が、印象的だったのでしょうね。

この後も、まだまだ眠り、春を待つクマ。この他の夢も覗いてみたくなりますね。

クマさんはどうして冬眠するのかな?「冬眠」ってなんだろう?そんなお話をしてあげてもいいですね。

クマはそもそも、なんで冬眠するのか。他に冬眠する動物がいるのか、教えてあげるのもよいかもしれません。「眠り続ける理由」が分かれば、春を待つクマさんの気持ちがもっと子ども達にも伝わるはずです。冬眠している間、寒くないのかな?お腹は減らないのかな?様々な疑問・質問に、ぜひ一緒に考えて調べて、考えを話して答えてあげたいものですね。

はるまちくまさん 裏表紙

四角い枠の中に描かれる場面と、枠のない場面があります。4コマ漫画のような場面も。読者を飽きさせない工夫であり、小さな子にも、クマが洞穴にいる時と外に出た時が分かりやすいように配慮されているのだと思います。冬眠中の可愛い寝顔が4コマになっているのが私のイチオシページです。

本書の描き方で独特なのが、四角の黒枠の中に描いている絵と、枠がない絵が混在する事です。クマが洞穴の中で冬眠している所は枠があり、夢の中や、ラストで洞穴から出た後にはその枠は描かれていません。

この枠の意味は、大人が見ればすぐに理由が分かります。おそらく小さな子ども達もピン!とくると思います。言葉にしていない分、この枠を活かすことで、子ども達もこのシーンがクマが冬眠中なのか、夢の中なのか、現実の世界なのか、理解できるように工夫されているんだと思います。

春を待つクマの目覚めは、とっても可愛らしい瞬間です。長く眠った後ですから、これが夢なのか現実なのか、寝ぼけながら外を見て・・・。「春だ!」と分かった瞬間のクマさんの表情をぜひ見て欲しいと思います。ニコニコ笑顔で森に出て散歩する表情もまた、一層可愛らしいですよ♬

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。