ふしぎなナイフ
ナイフの変化が面白い!シンプルな絵と文章ですが、ふだん目にすることのないナイフの姿に、興味が湧いてきます。子どもにも大人にも!
☆3つのおすすめポイント
- ナイフがどんどんいろんな姿に変わっていきます!異次元のような世界観で、今度はどんな姿に変わるんだろうとワクワクしてきます。
- 文章はほとんどなく、ナイフの変化の形状を表す単語が書かれています。そこからナイフの姿が想像でき、音も聞こえてくるようなかんじがしてきます。
- 1985年から楽しまれています。大人も子どもも楽しめる、シンプルな描写ですが奥が深い絵本です!
☆あらすじ
不思議なナイフがあります。
ナイフが刃先の真ん中くらいから曲がりました。
つぎは『ねじれて』います。ナイフの刃の部分が1回転半くらい曲がっています。
今度は刃先がぽっきりと折れています。
さらに割れたり、溶けたり。刃先が1、2㎜くらいの幅で切れてしまっている絵もあります。
つぎのナイフは、刃先から細い糸のようにほどけています。それが全部つながっていて、細い糸が絡まり合っているようです。
ナイフの先がバラバラに『ちぎれる』、持ち手もちぎれて『ちらばる』姿もあります。
ふしぎなナイフが見開き2ページの中心に描かれていると思いきや、次のページに進むと横に長~く引っ張られて『伸びて』います!さらに、半分くらいの長さに『ちぢんで』、そのつぎはナイフの刃先がフラスコのように大きく膨らみました!風船のようです。
最後には、パリーン!と割れてしまいました。
☆際立った特徴
いろんな姿に変身するふしぎなナイフが描かれています。普段使っているナイフ。なんの変哲もないかたいナイフが、見たこともない姿になっていくようすが、見ていて独特の世界に引き込まれていきます。
絵の描写も本物のようで、本当にナイフが変化していっているように見えてきます。1985年から読まれているロングセラーの絵本です。
絵本の大きさは20×27㎝の横長の絵本で、その中にナイフの変幻自在な姿がたくさん描かれています。
☆書店員の感想
●ナイフがどんどんいろんな姿に変わっていきます!異次元のような世界観で、今度はどんな姿に変わるんだろうとワクワクしてきます。
表紙では、木目のテーブルでしょうか。その上にきらりと光っているような実物大のキレイなナイフが置かれています。裏表紙も木目が描かれているのですが、どちらも本当の木のようで、全体が木目で描かれていることで紙なのですが木の質感を感じるようです。
そしてそこに描かれているナイフ。タイトルに『ふしぎなナイフ』と書かれていますが、このナイフがどう不思議なのでしょうか。気になってきます。表紙には横幅いっぱいにナイフが横向きで描かれています。ここにナイフが置かれていて、手にとれるような本物のような描写です。
絵本の中のナイフは、想像もつかないようなかたちにどんどん変化していきます。背景は全部白色なのですが、白色になっていることでナイフがより浮きたってみえますし、すっきりとしていることでナイフの変化に集中して楽しめるように思いました。
まず刃先が曲がっているのですが、まるで超能力のハンドパワーで曲げたかのようにくるん、と刃先が柄のほうに向かって曲がっています。かたいナイフがまるで柔らかくなってしまっているようです。
さらにねじれたり、おれたり、鏡のように割れている絵もあります。また、刃先が細く切れていたり、溶けていたりもします。切れているナイフも1㎜ほどの幅で刃と垂直にたくさん切られていて、どういうふうに切ったんだろう、と想像が膨らみます。つぎの刃先がほどけているナイフも、どうしてこうなったんだろう…最初にほどけ始めたときのナイフはどうなっていたのだろう、と不思議な気持ちも湧いてきます。
ちぎれたナイフが、次のページでは柄もちぎれてページいっぱいに散らばっています。ナイフがパズルのようにも感じますし、こんなに散らばったら拾うのも大変!復元もどうやったらできるのかな、等見た人によっていろんな感じ方があるように思いました。
●文章はほとんどなく、ナイフの変化の形状を表す単語が書かれています。そこからナイフの姿が想像でき、音も聞こえてくるようなかんじがしてきます。
見開き2ページの中心にナイフが描かれていて、その左上に単語が書かれています。『ちらばる』や『ほどける』などの単語が主で、絵も文字もとてもシンプルです。
そのため絵に集中して楽しめますし、4歳の次男は少しずつ文字が読めるようになってきているので、その単語が読みやすく、絵も文字も楽しんでいました。文字を読んで単語を知り、その単語の表すようすをナイフの状態から知る、というようなようすで、何度も読み返していました。
また、最後の絵ではナイフの刃先が大きく膨らんでいます。このあとどうなるのかな、とドキドキ…するのですが、ページをめくると膨らんだ部分が耐えきれずに割れてしまいました!この刃先が割れた絵を見た瞬間、耳元でガラスが割れた音がしたような感覚にもなり、ページには『われる』とも書かれていないのですが、次男と一緒に『割れちゃったね』『ビックリしたねぇ』『パリーンってなったね!』と目を合わせてお話し、なんだか笑い合い、楽しむことができました。
●1985年から楽しまれています。大人も子どもも楽しめる、シンプルな描写ですが奥が深い絵本です!
この絵本は、実は20うん年前、私の実家にあってよく読んでいた絵本でした。ナイフの変化するようすがなんだか不思議で、子どもの自分が読んでいた時は、まるでトリックアートの絵を見ているような感覚になっていたように思います。絵のリアルさと意外性に、つい引き込まれてしまっていました。月日が経ち大人になってから読んでも興味深く感じましたし、次男は自分からこの絵本を手に取り、自然と読んで楽しんでいます。不思議なナイフの不思議な魅力が絵本の中に詰まっているようで、世代を超えて楽しめる絵本です。
また、見る人の感性によって、感じ方が変わってくる内容のようにも思います。お話はなく、文字とナイフのシンプルな描写ですので、親子で楽しむときはじっくり絵を見たり、自由にお話したりとそれぞれの楽しみ方が無限大にあるように感じました。
ちなみに、小学生の長男も不思議そうにこの絵本を読んで、『こんなかたちになったらすごいね!』と、感動したような表情で読んでいましたので、長く楽しめるように思います。大人目線では『アート』作品のひとつとして映るようにも思います。
不思議なナイフのいろんな姿を、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。