まほうの絵本屋さん

リビング書店の絵本チャンネルで保育士書店員が詳しく解説しています

大切な人に会いたい時に読んで欲しい1冊。秋の読み聞かせにもピッタリ!

☆際立った特徴

  • 秋にピッタリな絵本。美しい秋の風景。
  • 人気イラストレーターが書きだす絵本シリーズ。
  • 幻想的な世界へ迷い込むような感覚になる。
  • 詩のように、響きが美しく深く考えさせる言葉。

☆読み聞かせのポイント

  • 「森がゆめをみている」という言葉とは、どういう意味なのかな?
  • クロネコの正体は一体何だったのか?
まほうの絵 本屋さん 表紙

☆あらすじと書店員の感想

大切な友達が引っ越して、心がとっても寂しい気持ち。

主人公の女の子にとって、大切な大切な友達がいました。だけど友達は遠くの外国へ引っ越してしまい、「もうずっと会えないのかも・・・」と寂しそうです。一緒に遊んでいた公園へ行けば、友達の事を思い出してしまい、友達を思い出せば出すほど会いたくて、だけど会えない辛さが、女の子の表情から読み取れます。秋の風の冷たさが、女の子に孤独感さえ感じさせているようにも見えます。

そんな時、どこからか声が聞こえ、独りぼっちの彼女を呼んでいます。

その声は・・・フクロウの声でした。

女の子が出会ったフクロウとクロネコが、素敵な場所へ案内します。

フクロウに案内された女の子が行った先には、見たこともない森がありました。いつもの公園のはずが、いつもと違うみたい。そして目の前には素敵な洋館がありました。中に入るとそこは絵本屋さんでした。

沢山の絵本を見上げた女の子は、お友達の誕生日プレゼントを探したい!とふと思ったのです。会えないけど、ずっと想っているよと伝えたかったのでしょうか。

店員のクロネコは、まるで絵本のコンシェルジュ。女の子に話を聞きながら、ピッタリの絵本を見つけてくれました。

「こちらへどうぞ」とクロネコは女の子に手を差し出し、扉の奥へ誘いました。その扉の向こうに森が見えます。女の子はクロネコの読む絵本を隣に座って聞きながら、森の中に迷い込んでいきました。

「森がゆめをみている」という言葉と共に描けれている森の様子が、なんとも不思議で、幻想的。一番のキーワード★

本書を読んでいて1番心に残る言葉が、この「森が夢を見ている」だと思います。

この言葉の意味を考えるのですが、答えが見つかりません。とても不思議な感覚です。

ぜひ、まだ本書を見たことのない方に、この場面の絵も見て頂き、一緒に感じて、考えて欲しいと思う所です。

夜の森の中に、大きな三日月と、それを囲うように森の木々や動物達が集まっています。三日月はとても大きくて、動物達に会いに来てくれているようにも見える程の大きさで描かれています。とても温かみのある絵の中に、幻想的な雰囲気を感じます。

実はこの前のシーンで主人公の女の子がこの森に迷い込み、とても会いたかった友達に会えたと書かれています。

そう考えると、「森が夢をみている」という言葉の意味はどうでしょう?

動物達それぞれ、会いたい仲間がいて、この森に集まることで仲間に会っている事を表現しているのでしょうか。

それとも、森が動物達を呼んでいるという事を、表しているのでしょうか?

(森に動物達の姿が少なくなっているので、森が恋しがっているのかな?)

迷い込んだ森の中で、女の子は友達に会う事出来ました。

森で友達に会えた女の子は、友達の姿が見えなくなった後、気がつきました。

相手を想う気持ちがあれば、いつだって心の中で会う事が出来るし、いつも相手は心の中に、隣にいてくれるのだと。

女の子は、クロネコに読んでもらった絵本を買って帰りました。友達に送る為です。心のこもったお手紙を添えて。

この手紙で、ようやく女の子がすみれちゃん、友達がのぼる君という名前だという事がわかります。

最後に遠い外国の地で、手紙と絵本を受け取っているのぼる君の様子が描かれています。海が見える高台で、車いすに乗った少年と、その少年の足元にはクロネコ。

海の音、カモメも鳴く声、遠くの海で舟の「ボー」という音が聞こえます。

あれあれ?このクロネコ、どこかで見たような・・・。

まほうの絵本屋さん 裏表紙

クロネコの正体は一体何だったのか?

もしかすると、のぼる君の足元にいるクロネコが、すみれちゃんに会いたくて寂しがっているのぼる君の為に、一肌脱いだ出来事だったのではないか・・・そんな風にも見て取れるラストシーン。

私はクロネコがすみれちゃんに代わりに会いに行き、離れていてもお互いに想い合っている、会いたがっている二人を、絵本屋さんの森の中で引き合わせたのではないのかな???と思うのです。

その鍵になっているのが、【まほうの絵本屋さん】という絵本です。

女の子が入ったいった森の奥の絵本屋さんと、本誌の表紙の洋館がそっくりなんです。実はのぼる君に送った絵本と同じ表紙です。

つまり、【まほうの絵本屋さん】で二人は繋がっっているという事だと思いませんか?

色んな意味で”まほう”を感じるストーリー。きっと読み手によってもっと違った見え方があるのではないかと思います。

ぜひ、色んな方の感想を聞いてみたくなる絵本でした。

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。