ハムおじさん

リビング書店の絵本チャンネルで保育士書店員が詳しく解説しています

アニメ―ションのような描き方。ハムおじさんはお茶目でチャーミング!沢山の荷物を持ったままつまずいて、坂道でコロコロ転がっての大ハプニング!ユニークなストーリー好きな子にピッタリ!

☆際立った特徴

  • アニメーション作家・イラストレーターとして活躍中の作者。
  • 紳士的で物静かなハムおじさんの見た目と性格のギャップが面白い。
  • ハムおじさんの動きをコマ送りで描いている。
  • 優雅な1日に見えて、かなり大騒動な1日。
  • 大切に育てた庭の木や花が、今度は自分を守ってくれた。
  • 表と裏の見返し部分を使ってアニメ―ションを撮って遊べるおまけ付き。

☆読み聞かせのポイント

  • 紳士的で物静かな風貌からは想像できない程、なんだかお茶目でチャーミングな様子が見えるハムおじさん。あらあら・・大丈夫かな?な展開をハラハラドキドキしながら読みましょう。
  • 大切に育てている庭の木や花が、ハムおじさんを守ってくれました。ハムおじさんへの恩返しのような展開。お互いに大切に想うからこそ、そこには見えないけど深い絆があるのかもしれません。
ハムおじさん

☆あらすじ

品が良くて物静かな紳士のハムおじさんと、ミートボールというネコがいました。

ある朝、お腹を空かせたミートボールにハムおじさんは起こされ、目覚まし時計が止まってしまっている事に気がつきました。

身支度を整えたハムおじさんは、時計を持って坂の上の時計屋さんへ行き、修理を頼みました。

修理の間、ハムおじさんは隣の帽子屋や帽子を、お花屋で植木鉢を、雑貨屋で浮き輪やお皿を、おやつのクッキーとジャム、編み物に使う毛糸も買いました。

買ったものからどんどん上に積み上げて持ち運んでいる物ですから、修理が終わった時計は一番上に乗せてもらって、そろりそろりと持って帰ることになりました。

赤い屋根のハムおじさんの家はもうすぐそこ。

しかし、あっ!とつまずいたおじさんは、坂の傾きと傾いた弾みでゴロゴロゴロ―と荷物と一緒に転げ置いてしまいました。

ようやく止まった場所は、おじさんの家でした。大事に育てていた庭の木がクッションになってくれ、おじさんはケガ一つせず、無事にすみました。

庭の木や花をこれまで以上に大切に思いました。

夜になり、ハムおじさんはいつもより早く寝る準備を整え、ベッドの横に目覚まし時計を置くと、すぐに眠りに落ちました。

しかし、実は目覚まし時計の針が止まっています。

どうやら坂道で転がった時にまた壊れてしまったようです。でもハムおじさんはそれに気がついていません。

今日もすっかりクタクタなハムおじさんだから、仕方がないですね☆

☆書店員の感想

所々で、1ページの中にハムおじさんが4~5人描かれています。コマ送りのように描かれているからハムおじさんが動いているようにも見えるます。まさにアニメ―ション!!

初めて本書を読んでみて感じたことは、アニメーションみたいな描き方だなという事です。全てのページではなく所々に登場する表現で、1ページの中に描かれる背景の中にハムおじさんが4~5人描かれています。

同一人物だという事はすぐに分かり、おじさんを左から右へ目で追いながら読み進めると、まるで動いているようにすら感じます。コマ漫画のように背景が区切られていない分、そのコミカルさが際立っていて、流れるようにスムーズに動いているように見えます。

全てのページがその描き方ではない所もまた魅力的です。1ページに1場面をじっくり描いているページもあれば、コマ漫画のように区切っているページもあります。

その組み合わせで出来ている所が他には無い、本書の左台の特徴だと思いました。

時計の修理を待つ間、どんどん買い物してしまう物だから、腕の中で積み重なった荷物でバランスぐらぐら。大丈夫!?と心配する展開に待っているのは家の前の急な坂道。

見た目は紳士的で物静かな様子のハムおじさん。しかし、時計の修理を待つ間の買い物する様子を見ていると、なんだかそんな性格だけじゃないのでは??と感じます。

買いたい物を後先考えず、腕の中で積み上げながら買い回るのですが、明らかにバランス悪く持ち運んでいます。せっかく直した時計を荷物のてっぺんに乗せると、不安定なまま家に持って帰ろうとしています。

大丈夫なのかな?と心配になる展開だけどハムおじさんは表情変えずに帰ります。その表情からきっと何事もなく帰るんだろうなと予想はするものの、読者は少々不安な気持ち。

そして坂道にさしかかった時、足を踏み外したハムおじさんはゴロゴロゴローンと転がってしまいます。

「やっぱりやっちゃった!!」の展開に、読者はさらに心配な気持ちになります。

紳士的で物静かなハムおじさんだったけど、ちょっとおドジな面があって、なんだかお茶目でチャーミングなおじさんに見えてきます。

大切に育てる庭の木や花に守られて、無事に怪我なく家に着いたハムおじさん。今まで以上に互いに大切に想う心が生まれ、絆が深くなったのかも・・・?

大切に育てる庭の植物達が、転がり落ちた自分を守ってくれたと感じたハムおじさんは、これからももっともっとこの植物たちを大切にしようと感じたようです。

植物は声を掛けられたり愛情を与えてもらえると、その事を感じ取ってキレイな花を咲かせたり美味しい実をつけたりすると聞いたことがあります。

大切に育てた植物が、目もないし話す事も出来ない相手だけど、きれいに咲いてくれたり実をつけてくれると心が通じ合っているような気持ちになりますね。

後半にハムおじさんがお庭でお茶を飲む様子が描かれています。とても美しい庭に読者も心が癒され和む事でしょう。ハムおじさんの植物を大切に想う気持ちはこれからも続き、植物もそれに答えようとキレイな葉をつけ、花を咲かせる事でしょうね。それが伝わる1ページでした。

また明日、新たな楽しい1日が始まるなと感じさせてくれるラストページ。今日よりもっと愉快な1日かなと期待が膨らみます。

直してもらった時計が、実はまた壊れている。その事を知らないおじさんがそのままの時計を枕元に置いて寝てしまったというラストシーン。

実はこの日、「時計が壊れていて寝坊をしたハムおじさん」からスタートした物語でした。では、このまま寝てしまったハムおじさんは、明日どうなるのでしょう。

明日もまた、今日のように寝坊をするのかもしれないし、寝坊せずにすんだけど時計屋さんに行ってまたハプニングに遭遇するかもしれません。

紳士的で物静かな反面、お茶目でチャーミングな一面を持つハムおじさんの明日を見てみたくなるラストだと思いました。きっと楽しくて素敵なお話の続きがあるのでしょうね。

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。