かにこちゃん

海、夏、カニが好きな子、絵本デビューするお子さんにもおすすめです。鮮やかな色と、赤いキュートなかにこちゃんに、どんどん惹かれていきます。

☆3つのおすすめポイント

  1. 赤が特徴的な、カニのかにこちゃん。日が昇り、沈むまでの1日の様子が描かれています。配色や、海辺の自然の様子がインパクトのある描写です。
  2. 画家の堀内さんのすてきな絵に、岸田さんの優しい文が、物語を輝かせているようです。
  3. お話の内容も小さい子にも読み聞かせしやすく、絵本デビューにもおすすめです。可愛いかにこちゃんとお友達になれそうです。

☆あらすじ

カニのかにこちゃんが、砂浜から出てきます。おはようと朝の挨拶から始まります。

海が大好きなかにこちゃん。小さい波がぴしゃぴしゃする海に出かけました。

他に仲間たちもやってきて、大きな波から逃げ出します。

かにこちゃんも合わせて、カニは全部で4匹になりました。

次は全部で5匹で砂山を登ります。カニの移動は「すこ すこ すこ…。」

反対側からもカニが数匹やってきました。

5匹の列と5匹の列の先頭がこちんとぶつかりました。にらめっこになりますが、みんなで海を眺めます。

夕日です。おひさまか、海か、空か…もえているように見えます。10匹のカニたちでジッと見つめました。

そろそろ日が沈み、かにこちゃんたちはおうちに帰ります。

さようなら、また明日の朝ね。みんな手を振り、それぞれのおうちへ帰っていきました。

かにこちゃん 表紙

☆際立った特徴

この本は、1967年に世界出版社より刊行された、「からーぶっくふろーら かにこちゃん」を加筆・修正したものです。

赤を楽しむ絵本として、赤色が主体的に使われています。

カニのかにこちゃんの、海辺の1日、仲間たちと一緒に過ごす、何気ないような、けれど壮大な1日を感じることができます。

色の対比が美しく、1ページ1ページ、絵画のように楽しむことが出来ます。色も鮮やかですので、赤ちゃんから美しく目に映る作品です。

かにこちゃんと、一緒にすこすこお散歩したくなります。

絵本の大きさは18㎝四方で、20ページの絵本です。

☆書店員の感想

●赤が特徴的な、カニのかにこちゃん。日が昇り、沈むまでの1日の様子が描かれています。配色や、海辺の自然の様子がインパクトのある描写です。

表紙のかにこちゃんは、黄色のさざえの殻の中にいます。

かにこちゃんの赤色と、貝殻の黄色、海辺の青の対比が素敵で、かにこちゃんの赤が映えています。

本物のさざえはと違い、かわいいポップなカラーで描かれていて、黄色で描くとこんなにも印象が違うということに新たな発見をしました。

表紙をめくると、裏は、海辺の遊びにまつわる、赤く描かれたおもちゃなどが7種類描かれています。赤のグッズ、海辺にあると目立ちそうです。

かにこちゃんは、右手のハサミが大きいのが特徴です。クリッとした目に、オレンジのほっぺ。ニコッと可愛く微笑んでいます。

朝の海辺。紫色の砂浜に、濃いピンク色の海です。おはよう、と太陽が昇り始めます。

朝日が海に反射し、水平線に平行の筋が幾重にも並んでこちらに続いています。朝日に照らされた海の、素敵な朝の風景です。

日が昇りました。空が黄色く輝いています。赤いかにこちゃんは、黒い穴から登場です。右手の大きいハサミを外に出しています。

ラベンダー色の空に、緑色の海になりました。海が大好きなかにこちゃん、紅一点で歩きます。

空の形、雲の形も様々で見入ってしまいます。だんだんと時間がたち、雲の下が少し黄色、そして青色になってきました。そろそろ夕方、日が沈みます。

こちんとぶつかったときには、カニ同士ムッとしている表情もありますが、それ以外みんなニコニコ、ムッとしたあともみんなで仲良く夕日を眺めています。

日が沈むと、また砂浜は紫色、海は砂浜よりもう少し濃い紫色になりました。みんな穴に入り、大きい方の右のハサミを振り、「さよーなら」と、あいさつしているようです。

かにこちゃん 裏表紙

●画家の堀内さんのすてきな絵に、岸田さんの優しい文が、物語を輝かせているようです。

絵は、画家の堀内誠一さん、文章は岸田衿子さんが書かれています。

どのページも絵画のような描写で、ページをめくるごとに感動を覚えます。

赤を主役にしている絵本で、赤がどのページもあり、背景や他の色と合わさりよく映えています。赤があることで、他の色が引き立っている風景もあるように思いました。

砂浜や海のようす、大波小波が生き生きと描かれています。

配色やかにこちゃんのキャラクターなど、53年前に登場したものとは思えない、可愛さ満点のかにこちゃん、色の種類や組み合わせ、風景の描写など、新鮮でオシャレなタッチに感じます。

一番感銘を受けたのは、夕日の描写です。なんと言っても圧巻です。

赤い夕日が沈む海。紫色の海の中央が、夕日に照らされて黄色く、オレンジ色と混ざり合って、波に合わせて波線状の水平線と並行の筋が何本もこちらに向かって広がってきています。空の左右に広がる雲と相まって壮大な風景です。文章のとおり、お日様がもえているのか、海がもえているのか、空がもえているのか…。何がもえているのでしょう。一番もえているのは、この絵を見た自分の心かもしれません。

どの絵も、1つの絵につき5色ほどしか使われていませんが、この夕日の絵も5色のみ。けれど、書き方一つでこんなにも表現できるんだなと驚きました。色はたくさんではありませんが、ポップで一つ一つの色がよく生かされているように感じました。

また、絵と同時に、文章も素敵です。

カニの歩く様子が「すこすこすこ…。」

今まで思いついたことがなく、斬新に思いました!すこすこすこ、癖になりそうです。

波の音も、「しゃぷしゃぷ」、大きい波は「どどどど ざぶーん」、ぶつかったときも「こちん」と、子どもと一緒に読んでいても、優しい、心にコロンと入っていくるような、可愛いチャーミングな言い回しに感じました。

●お話の内容も小さい子にも読み聞かせしやすく、絵本デビューにもおすすめです。可愛いかにこちゃんとお友達になれそうです。

おはよう、と繰り返してあいさつをしたり、2語、3語文と短い文章で書かれていますので、小さいお子さんにもお話が受け取りやすいように思います。

おはよう、おひさま、なみ、だいすき、こちん、おおきい、ちいさい…。少しずつおしゃべりするようになったお子さんの言葉の引き出しに、仕舞って・取り出しやすい言葉がいくつも使われているように感じました。

次男はもう3歳後半ですが、「かにさん、可愛いね」「海、広いねぇ」と絵本を読んで話していて、キレイな色にも見入っているようでした。帰省の際、毎回海に散歩に行くので、今度散歩に行ったときには「かにこちゃん」を一緒に探してみよう、と声をかけてみようかなと思いました。そして、かにこちゃんの海の風景を思い出しながら、景色をゆっくり楽しみたいと感じました。

にむさん
  • にむさん
  • 現在4年生と年長の男の子、1歳の娘の育児に奮闘中です。
    兄が弟に、さらに最近では弟が妹に絵本の読み聞かせをしてくれるようになりました。子どもたちの姿から学ぶことも多い日々です。
    短大で介護の勉強をし、介護福祉士の資格を持っています。