11ぴきのねこ どろんこ
冒険好きの子にピッタリ!イタズラ好きの11ぴきのネコ達が、恐竜の子と出会います。泥んこで遊ぶ姿が、とってもダイナミック!!
☆3つのおすすめポイント
- 11匹のネコ達が恐竜の子”ジャブ”を助けることから、友情が芽生えます。ジャブはネコ達を何とか喜ばせてあげたいのですが、上手くいかない事が続き、ある時ネコ達はジャブにイタズラしてしまい、疎遠になってしまいます。
- 大きくなったジャブが子どもを連れてネコ達に会いに来ました。体の大きくなったジャブは、ようやくネコ達が喜んでくれる事をしてあげることが出来ました。助けてくれた恩返し・・・なのかな?
- 一緒に読んだり、真似たりして楽しい。子ども達の好奇心をくすぐる”泥んこ遊び”。見ると自分も泥んこ遊びを楽しんだような気持になります。
☆際立った特徴
1967年に誕生した「11ぴきのねこ」から半世紀以上の時を経ても、今もなお子ども達を楽しませ続けています。その中で本書は、シリーズ6作品の中の最終巻。
泥の中でジャブジャブと遊んでいた恐竜の子”ジャブ”と11匹のネコ達の友情を描いています。
11ぴきのねこが、ジャブと出会って、ちょっといたずらしたことで疎遠になります。しかし、1年後子どもを連れたジャブと再会し、ジャブと一緒にどろんこになって遊び、喜びます。体が小さかった頃は出来なかった”泥遊びが苦手なネコ達を連れて行って喜ばせてあげる”という事を、大きく成長したジャブは、果たすことが出来ました。成長する事の喜びや、困ったことをしても、イタズラされても時が経てば許しあえる強い友情を感じることが出来る作品。
実は、「11ぴきのねこ」シリーズの中でハッピーエンドになるのは、1作目とこの作品だけ。自由気ままなネコ達の「みんな みんな うれしい うれしい」とニッコリ笑って泥んこになって遊ぶラストシーンは、全身で遊びを楽しんでいるように見えて、読者を幸せな気持ちにさせてくれます。、
参考文献】絵本ナビ 馬場のぼるさんと共に「11ぴきのねこ」シリーズを作り上げた編集者佐藤英和さんのインタビュー
☆あらすじ
11匹のネコが、山の中の山小屋で暮らしていました。
今日もいい天気。11匹はエサを探しに出かけました。
すると、森の近くの泥沼に見た子っとのない奴が、ジャブジャブしながら遊んでいます。
子どもの恐竜です。
ネコたちはしばらく恐竜の様子を観察していました。
すると恐竜は泥沼から上がり、泥だらけの体をブルンブルンして、泥を跳ね飛ばしながら行ってしまいました。
次の日の事です。崖下に落ちてウオーンと声を出している奴がいます。
「昨日のジャブジャブしていた恐竜だ。崖から落ちてしまったんだね。上がれなくて泣いているみたいだね。」
そこでネコ達は太いロープを持ってきて、恐竜を助けてやることにしました。
「おーい!ジャブ。このロープに捕まれー!ロープの輪の中に体を通すんんだ。引っ張ってやるよー!!」
ワッショイワッショイ。ネコ達は力を合わせて引き上げてやりました。
無事助かった恐竜の子は、しっぽをフリフリしながら、森の奥へ駆けて行きました。
それからずいぶん経ったある日、少し大きくなった恐竜の子”ジャブ”はネコ達に会いに来ました。背中に乗せてくれるというのです。
そしてジャブは、喜ぶネコ達を背中に乗せて、泥沼へザブーン!と入ったのです。しかし、ネコ達は泥沼で溺れそうになります。「泥沼やめてー!落ちるよー!」
泥沼から出たジャブとネコ達は全身泥まみれ。「泥水飲んじゃったよ。しょうがない奴だな・・・ジャブは」とネコ達。『ウホ・・・』とジャブ。
今日は、魚の干物を作る日です。ネコ達は取った魚を木に吊るして、天日干しをしています。干物はネコ達の大事な保存食です。
そこにジャブが沢山の山のリンゴを持ってやってきました。そしてネコ達に渡すと、『ウホ。なら魚もらっていくね。バイバイ』とせっかく吊るした干物の魚を全部持って行ってしまいました。
「そりゃないよー!」とガッカリするネコ達。
それからしばらくしたある日。森へ行くとジャブが崖の下で昼寝をしていました。
ヒソヒソ・・・。ネコ達はこの絶好のチャンスに魚のかたき討ちをしようと作戦を練ります。そして、ネコ達は隠れて作戦を決行しました。作戦は大成功。沢山の石を落とされたジャブは、飛び上がって逃げていきました。
それから、ぱったりジャブを見かけなくなり、一年が経とうとした頃です。
突然、ジャブが3頭の子どもを連れて現れたのです。
『おーい!みんな元気かー?』
ネコ達は嬉しくてジャブの元へ駆け出しました。そして、さらに大きくなったジャブの背中に飛び乗りました。ジャブの体は驚くほど大きくなっていました。
『全員乗ったか―?行くぞー!ウホー!ネコ達嬉しいか―?』
そして、また、以前入った泥沼にザッブーン!!
でもネコ達は以前のようには溺れません。体の大きくなったジャブの背中に乗って、泥んこになりながら泥遊びを楽しみます。ザブン ザブン ザブン♩
『ウッホッホー。みんな喜んでる。嬉しいなー』
☆書店員の感想
11匹のネコ達が恐竜の子”ジャブ”を助けることから、友情が芽生えます。ジャブはネコ達を何とか喜ばせてあげたいのですが、上手くいかない事が続き、ある時ネコ達はジャブにイタズラしてしまい、疎遠になってしまいます。
11匹のネコ達が森へ行く途中で、困っている恐竜を見かけました。その恐竜は、泥沼の中でジャブジャブと泥んこになって遊んでいます。11匹のネコは沼の外から楽しそうに遊ぶ様子を見ていました。
次の日、その恐竜が崖の下に落ちて困っている所を見かけ、ネコ達は助けてやる事にしたのでが、実はこの時、すでに「どうしたの、ジャブ」と声をかけています。昨日のジャブジャブと遊んでいる様子を見ているうちに、自然と親近感を覚えたのかもしれません。”ジャブ”とネコ達は、このことがきっかけで友達になりました。
そして、助けてくれたお礼にとジャブはネコ達を泥沼に連れて行ってあげたり、森から沢山実ったリンゴの木を持ってきたりします。
しかし、良かれと思ってやったつもりが、なかなか上手くいきません。毎回ネコ達が困ってしまう結果になります。そして、ネコ達はそんなジャブにイタズラを仕掛けます。寝ているジャブに沢山の石を上から落とすのです。
これはひどい・・・。読者はネコ達の行き過ぎたイタズラを見て悲しい気持ちになる場面かもしれません。
『やられたらやり返す。そして、友達なんだから、やっても許してもらえる』
そんな気持ちがネコ達にきっとあったのではないかと、私は思いました。
でも、その事がきっかけで、ジャブはネコ達に会いに来なくなりました。会えない時間が長くなるにつれて、最初はなんとも思っていなかったネコ達も、「可哀そうなことをしてしまったね」と次第に気づき、反省します。
大きくなったジャブが子どもを連れてネコ達に会いに来ました。体の大きくなったジャブは、ようやくネコ達が喜んでくれる事をしてあげることが出来ました。助けてくれた恩返し・・・なのかな?
1年ほど経った頃、ジャブはひょっこりとネコ達の前に姿を見せました。なんと3頭の子ども達を連れています。ネコ達は手を上げて、喜びます。そして、ジャブの方へ駆け出していきました。
ネコ達が、ジャブにどれほど会いたかったのか、伝わってくるシーンです。ニコニコの笑顔で再会した一同。ジャブの背中にネコ達は乗りました。この1年でとても体が大きくなったジャブ。以前よりもゆったりと、背中に乗ることが出来たようです。嬉しいな嬉しいな!と、全員から聞こえてくるようです。そして、ジャブが連れて行った場所は、ジャブとネコ達の出会ったあの泥沼です。
以前背中に乗った時には、まだジャブは小さくて、ネコ達はジャブの背中には乗っているものの、溺れそうになっていました。
しかし、今回はジャブの体が大きくなり、背が高くなったおかげで、溺れることはなくなりました。ネコ達はジャブの背中に乗ったまま、「いぇーい!やっほーい!」と泥んこを楽しんでいます。ようやく、ジャブはネコ達を喜ばせることが出来ました。
最後に『ウッホッホー。みんな みんな うれしい うれしい』と、ジャブは言いました。
泥沼で一緒に遊ぶことが出来て嬉しい。ネコ達に恩返しができて嬉しい。愛する子ども達と友達のネコ達がいてくれて嬉しい。ネコ達と再会できて嬉しい。・・・
ジャブはその言葉通り。全部、全部、とっても嬉しいのです。
それはネコ達も一緒の気持ち。きっと、ネコ達も「みんなみんな嬉しい!!」なのでしょうね。
一緒に読んだり、真似たりして楽しい。子ども達の好奇心をくすぐる”泥んこ遊び”。見ると自分も泥んこ遊びを楽しんだような気持になります。
本書では「はあい、どろぬまー」と、印象的なジャブのセリフがあります。ジャブがネコ達を2度泥沼に連れて行きましたが、どちらも沼に入る時に言っています。ジャブは恐竜なので、ネコ達よりも少したどたどしい日本語を話します。お話を覚えていくにつれて、一緒に「はあい、どろぬまー」と言ったり、ネコ達の「ニャゴ ニャゴ ニャゴ」を真似たりと、聞いているだけでなく、一緒に声に出して楽しむ事が出来るのではないでしょうか。
泥んこ遊びって、子どもにとって一度はめいっぱい遊んでみたい事の一つ。大人は「だめよー」って言いたくなるけど、好奇心旺盛の子ども達にとって泥んこの中は未知の世界なのかもしれません。どうなっているのかな?触ってみたいな。泥んこになってみたいな・・・♩と本書を読んでいると、どんどん夢が広がります。
でも実際に、泥んこになって遊ぶ事ってなかなか出来ませんよね。だけど大丈夫!ネコ達とジャブとジャブの子ども達に代わりに泥んこになってもらいましょう!遊んでいる様子を見ていると、自分は遊べなくても案外スッキリします。
だって、遊び方がダイナミックなんです。全身で泥をかぶって泥んこを楽しんでいます。これでもかー!とニコニコで遊んでいる様子を見ているだけで、自分も一緒に遊べたような気分になりますよ。
- 作品名:11ぴきのねこ どろんこ
- 著者名:馬場のぼる
- 出版社:こぐま社