おつきさまこんばんは
暗い夜空に、ポッと明るく安心する存在のお月さま。お月さまの優しい表情に癒やされます。夜のあいさつも自然と身につきますよ。赤ちゃんの絵本デビューにもおすすめです。
☆3つのおすすめポイント
- 暗い夜空にお月さまがのぼってきました。お月さま、こんばんは。お月さまの存在と表情にホッと安心感があります。
- お月さまと、猫と、雲と、シンプルな文章。お月さまとのいないいないばあ遊びのようなお話に、赤ちゃんから楽しめます。赤ちゃんの絵本デビューにもおすすめです。
- 濃紺の夜空に浮かぶ、黄色く輝くお月さま。猫の浮かび上がるような黒いシルエットや、黄色、白、オレンジ色で描かれた立体的な表情のお月さまが、シンプルなお話をより深く楽しめます。
☆あらすじ
夜になり、あたりは薄暗くなってきました。
黒いシルエットの猫が1匹、同じく黒いシルエットの家の屋根にのぼっています。
あたりがすっかり暗くなり、家にも明かりが灯りました。
すると、今度はだんだんと屋根の上が明るくなってきました。
なんの明かりでしょう。
まんまるの黄色い顔が見えます。「お月さまだ!」
もう1匹の猫も屋根に上りました。
おだやかな表情で、目を開けたお月さまが、暗い夜空を照らします。
と、そのとき、雲さんがお月さまの前にやってきました。
だめだめ、雲さん!雲さん、どいて。
お月さまのお顔が見えません。雲さんはお月さまとお話していたようです。
雲さんが通って行って、ニコニコ笑顔になったまんまるお月さま。猫と親子も嬉しそうにお月さまを見ています。
☆際立った特徴
濃い紺色の背景に、まんまる黄色のお月さま。赤ちゃんから楽しめる絵本ですが、シンプルな落ち着いた印象で、月夜の描写が美しい。大人が読む絵本としてもオススメです。
黒いシルエットの猫と家を、明るく照らすお月さまがのぼってきます。
まんまるなお月さまって、なにか特別な、神秘的なものを感じます。
満ち欠けする月の、満月、まんまる全体の姿。その月の表情はどのページも違います。
黄色の月の縁は黄色、表面は白色で、黄色とオレンジ色で目元や口元など強調して表情を表していて、柔らかい印象です。
雲に隠れてしまうお月さま、雲から再び顔を出したお月さまとは、なんだかいないいないばあをしているような気分にもなります。
絵本の大きさは18㎝×19㎝で手に持ちやすく、ページは20Pで厚みも薄く、軽めで小さいのでまだ力の少ないお子さんの手にも安心です。
☆書店員の感想
●暗い夜空にお月さまがのぼってきました。お月さま、こんばんは。お月さまの存在と表情にホッと安心感があります。
あたりが薄暗くなってきて、夜が近づいて来ました。黒猫たちも、なんだかそわそわ…。
真っ暗になった夜空に、優しく輝くまんまるのお月さまがのぼってきて、黒猫や家も優しく照らします。
光のない夜は少し寂しい気持ちがしますね。そんな中、ぽうっと見守ってくれているかのような、柔らかい表情のお月さまの登場に安心します。
また、雲がかかってきたときの怪訝そうな顔のお月さま、雲が過ぎて行ったあとの、お月さまの不思議そうな表情。雲が晴れてにこにこのお月さま、ページごとに違った表情が描かれています。まるで、月が満ち欠けしたり、見る人によって見え方が違って見えるような、そんな感じがしました。
●お月さまと、猫と、雲と、シンプルな文章。お月さまとのいないいないばあ遊びのようなお話に、赤ちゃんから楽しめます。赤ちゃんの絵本デビューにもおすすめです。
はじめは1匹の猫が屋根にのぼり、もう1匹の猫は家の下から見ています。お月さまの顔が見え始めると、もう1匹も屋根にのぼりました。雲が現れ、驚く2匹の猫。雲がお月さま全体を隠してしまうと、2匹一緒に逆毛を立てて怒っています。雲がいなくなると、安心して寄り添ってお月さまを眺めています。絵は猫たちの黒いシルエットだけですが、どのページも違う姿をしていて、それぞれのページでどんな気持ちなのかな?と想像してみたくなります。そんな猫たちにも注目です。
お月さまが夜空に浮かびお顔が見えますが、しばらくすると雲に隠れてしまってお顔が見えません。いないいないばあ遊びの「いないいない…」のようです。雲がいなくなると、お月さまがスッキリといいお顔になって、それが「ばぁ」のようで、なんだかいないいないばあをしているような気分になります。
表紙のお月さまは目をつぶっていますが、裏表紙のお月さまはなんと、「あっかんべー」をしています。まんまるお月さまがまんまるの目をしてあっかんべーをしている顔は、目が覚めるようで印象的に感じました。それを見た息子は、表紙に描かれている、目をつぶっているお月さまのお顔を見て「いないいない…」と言い、裏表紙に返して「ばぁ!」と言って喜んでいました。目をつむった顔から、なんともひょうきんな予想外のお顔に変化するので、表紙と裏表紙の表情の違いでも楽しめます。
また、お話がとてもシンプルです。まわりが暗くなって、「よるに なったよ」「ほら おそらが くらい くらい」、お月さまが雲で隠れてしまったところでは、「くもさん どいて」など、絵の情景に合った短めの文章が書かれていて、子どもが理解しやすく、こういう場面ではこうお話するんだなと自然と体に染み付きそうです。お話しやすい、2語文、3語文が使われているので、小さいお子さんもお話と絵にゆったり楽しむことができそうです。
●濃紺の夜空に浮かぶ、黄色く輝くお月さま。猫の浮かび上がるような黒いシルエットや、黄色、白、オレンジ色で描かれた立体的な表情のお月さまが、シンプルなお話をより深く魅了しています。
表紙のお月さまの背景は濃紺で、月の周辺がグラデーションで少し薄くなっており、月が浮かび上がるように目立っています。お月さまの顔の平面の部分は白で塗られ、眉や目、口、頬はオレンジ色で描かれており、そのまわりは黄色で縁取られています。濃淡に黄色のお月さまが、不思議と輝いているように見えます。
また、猫たちは夜空より濃い紺色で描かれています。どのページの猫も顔の表情はなくシルエットのみですが、それでも2匹ともお月さまを眺めているんだろうな〜というようすが感じられます。最後に登場する親子も、シルエットのみですが、満月の満面の笑みを見て、ふたりとも笑顔になっているように思いました。全部で7色ほどしか使われていませんが、お月さまの存在が際立ち、猫や親子、お家のシンプルな情景もページの少しずつの絵の違いで味を感じるように思います。
シンプルな絵本ですが、お月さまの表情や猫の仕草、情景と文章を1ページずつじっくり味わいながら読み進めていきたい絵本だと思いました。
夜空に浮かぶお月さまって、こちらが進んでも進んでもついてくるような感じがしますね。満ち欠けもして、不思議な存在です。この絵本を読んで、お子さんと一緒に夜の空にお月さまを探してみたらいかがでしょうか。
- 作品名:おつきさまこんばんは
- 著者名:林 明子
- 出版社:福音館書店