せなけいこのえ・ほ・ん(9)クリスマスの おばけ 

クリスマスって楽しみだよね♬でもね、オバケはどうかしら?クリスマスを幸せに過ごしているのかな?幸せのおすそわけ…なんてどうでしょう?

☆際立った特徴

  • クリスマスを題材にした絵本。
  • 文章は子どもの独り言口調。

※本書のあとがきに作者せなけいこさんの本書を描いた訳と想いが書かれています。せなけいこさんの気持ちが分かった後の方が、私は本書の意味が理解できたし、さらに好きになりました。ぜひ、みなさんも飛ばさずに読んでくださいね!

☆読み聞かせのポイント

  • 本書のあとがきに、「全体が子どもの独り言のような口調だから、ゆっくり、優しく読んで欲しい」と書いてあります。クリスマスを楽しみにしている子どもをイメージしてゆっくり読みましょう。
  • 「何が欲しい?」「何が食べたい?」「おばけさんが遊びに来たらどうしようか?」など、楽しみにしているクリスマスへの想いを話したり、もしオバケが遊びに来たら、あなただったらどうしてあげたい?と、聞いてあげるのもいいですね。
  • 小さな子であればオバケの気持ちを代弁してあげるのも良いと思います。「寒かったんだね。」「お腹すいちゃったのかな?」と言葉を加えてあげるだけで、「そういうことか!」と理解できますよ。
せなけいこのえ・ほ・ん(9)クリスマスの おばけ 表紙 

☆あらすじ

クリスマスって楽しいな。

園ではクリスマスパーティーをして歌ったり踊ったり、サンタさんからプレゼントも、もらえるよ。

家に帰ったら、家族でワイワイ、ごちそうタイム。

大きなチキンと大きなケーキ、楽しみだな。

ママとパパからもきっとプレゼントがもらえるはずだよね。

楽しい1日が過ぎてみんなが寝静まった頃、今度はオバケの子どもがきっと遊びに来るわ。

でも、夜中に来てもご馳走が残っていないかもしれない…。

プレゼントだってもらえないし、もしかしたら、外は凍える寒さかもしれない。

そうだ、いいことを思いついた。

ケーキと懐中電灯をテーブルに置いておいてあげよう。

お母さんに頼んでオバケ用のセーターも編んでもらおうかな。

きっとプレゼントを見つけたオバケは驚くはず。

そして、ニコニコ笑顔で喜んでくれるはず。

☆書店員の感想

読者に語りかけるような文章が、クリスマスの楽しみをどんどん膨らませてくれます!

本書の前半は、クリスマスってこんなことがあって楽しいね。楽しみだよね。と読者に語りかけるような文章になっています。

ページをめくると「クリスマスの日は嬉しいね。」「みんなでお遊戯会を楽しんだり」「園にはサンタさんが来てくれるね。プレゼントももらえるね。」と聞いて、そのイメージ画を眺めているだけで、ワクワクしてくるのは私だけでしょうか。

去年のクリスマスを思い出したり、今年はこんなクリスマスを迎えたいなと想像させてくれます。

幸せいっぱいの楽しいクリスマスが早く来てくれないかと、嬉しい気持ちにさせてくれる前半です。

●主人公の女の子が楽しいクリスマスを過ごす様子が終わり、夜にぐっすり眠る横で、ガラス越しにオバケの子どもが遊びに来ている様子を描いています。前半とはガラリと物語の雰囲気が変わります・・・。

せっかくオバケの子どもが遊びに来ても、女の子も家族もみんな眠っています。部屋の電気もクリスマスツリーの電球も真っ暗で、ごちそうもケーキも残っていないガランとした部屋にオバケの子どもが、ポツンッ・・・。クリスマスと言えば12月。何もないからと家に帰ろうとする姿も寒そうで、心も体も冷え切っているように見えます。

なんだか読者を切ない気持ちにさせます。オバケだから仕方ないよ…とは、多くの子ども達はならないと思います。

きっと、「何とかしてあげたい。」という気持ちが芽生えるのではないかと思います。

子どもは主体的な一面もあるけど、周りを気遣ったり、困っている人がいたら助けてあげたいと感じる、正義感や優しさを持っています。

本書でも、オバケの子どもの様子を見てきっとそんな気持ちになるのではないかと思いました。

「こうしてあげたいな。」「一緒に遊んであげたいな。」など、自分だったらどうしてあげようかと考え、他を思いやる気持ちを感じてくれるのではないかと思いました。

せなけいこさんの描くオバケは、怖さもあるけどチャーミングでユニークな部分もあって、唯一無二のキャラクター。

最近では可愛かったり、人間と和気あいあいと仲の良い存在として描かれることが多い「オバケ」。作者せなけいこさんのオバケと言えば、チャーミングでユニークで、可愛く思える部分もあるけど、「ちょっと怖いのかも…」と心のどこかで思わせる一面も持っていると思います。

本書ではそんなオバケが、クリスマスの夜に遊びに来たらどうなる・・・?と話が展開します。初めは「来て欲しくない!怖い!」と感じてしまうかもしれませんね。でも、不思議なことに読み進めると「オバケがちょっぴり可愛そう。」「なにかしてあげたい!」と思わせるのです。

そして、私が一番見て欲しいページは、やっぱり最後。オバケの子がニコニコな笑顔で空を飛んでいます。ブルブル震えていた帰り道の様子とは一変して、心も体もポカポカなようです。

きっとあなたも、

「良かったね。メリークリスマス!」と、本に向かって声を掛けたくなりますよ!

  • 作品名:クリスマスの おばけ せなけいこのえ・ほ・ん(9)
  • 作・絵:せなけいこ
  • 出版社:ポプラ社
せなけいこのえ・ほ・ん(9)クリスマスの おばけ 裏表紙 
よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。