ぼくがラーメンたべてるとき

世界平和を願う今だからこそ読んで欲しい1作!あなたがラーメンを食べる時、その瞬間、世界ではどんな事が起きているのか、同い年位の子がどんな生活をしているのか、考えてみましょう!

☆際立った特徴

  • 世界の平和とは。格差とは。幸せとは。様々な社会問題が、実は詰まっている作品。
  • 僕がラーメンを食べている時、その瞬間、世界ではどんな事が起こっているのだろうか。
  • 主人公の少年のいる場所から少しずつ場所・国を離れながら、そこに住む同い年位の子ども達がどんな生活をしているのかを描いている。
  • 環境に恵まれない国や貧困社会で精一杯生きる子ども達と、平和でのんびり美味しい物を何の不便もなく食べる日本の少年を見て、読者はどう感じるか。破壊された町(恐らく戦争で)で倒れる少年を見て、日本の子ども達は何を思うのか。様々な事を考えさせられる作品。
  • ラストの「風が吹いている」の本当の意味とは何か。

☆読み聞かせのポイント

  • 私達がこの絵本を楽しんでいる瞬間にも、お腹を空かせて困っている子ども・一人で寂しく泣いている子ども・怖い思いをして逃げている子ども・固い場所(布団ではなく)で眠る子どもがいる。これは紛れもなく真実であり、日本の子ども達にもぜひ知って欲しい、考えて欲しい問題が沢山詰まった絵本だと思います。まずは、読んでみてどう思ったか、親子で話し合ってみましょう。
  • 言葉でどう伝えたらいいかと親としては考えてしまう、「貧困や戦争問題」について描いています。読むと自然と、日本は恵まれているという事が分かるし、生まれた場所によって育つ環境が全く違う理不尽さや、皆が愛し合う平和の大切さを感じ取る事の出来るストーリーだと思います。
  • どこかの国で戦争が起こっているからこそ、今伝えるべき「戦争と平和」について。
ぼくがラーメンたべているとき 表紙

☆あらすじ

僕がラーメンを食べている時、隣でミケがあくびをしていた。

同じ時、隣の家では、みっちゃんがテレビを見ていて、その隣の家では、トイレに入っている男の子。

僕がラーメンを食べている時、

ある場所では、バイオリンの練習に励んでいる子もいるし、野球でホームランを狙ってバットを振る男の子もいる。

僕がラーメンを食べている時、

隣の国の男の子が、どこかに向かって急いで自転車をこいでいる。また違う国では、仕事をしていて赤ちゃんの面倒が見れない親に変わって、赤ちゃんをおんぶしてあやす少女がいる。

僕が、ラーメンを食べている時、

水道が無い国では、井戸の水を手押しポンプでくみ上げる女の子がいる。

そのまた隣の国では、畑を耕すのに、ウシを引いて親の手伝いをする男の子がいる。

そのまた向こうのくにでは、家族が生活をしていくために、パンを売って歩く女の子がいる。

僕がラーメンを食べている時、遠いどこかの国で、男の子が倒れていた。

砂嵐のような、風が吹いている。

男の子の事を、誰も助けてくれない。風が吹いている・・・。

男の子が倒れている時、

僕の街にも風が吹いていた。僕は、ラーメンを食べていた。

この絵本の特徴的な言葉「僕がラーメン食べてる時」。

主人公の”僕”は、おそらく10歳くらいの日本の少年。この日はきっと暖かい日だったんですね。お昼のラーメンを、部屋の窓を開けて、のんびりと食べています。飼い猫のミケもあくびをするほど、平和な一日を過ごしているという事が分かります。

そんな僕の隣の家では、この瞬間、友達のみっちゃんがテレビを見ていて、またその隣の家では、たいちゃんがトイレを済ませボタンを押して水を流しています。

僕がラーメンを食べている時、優雅にバイオリンの練習している少女もいれば、野球の練習を楽しむ少年もいます。お母さんとお菓子作りを楽しむ子もいます。

私は、のんびりしているなと思ってしまいましたが、もしかしたら本書で今紹介した子ども達だって、バイオリンや野球を嫌という程練習して苦労して泣いているかもしれないし、勉強を沢山して疲れて、テレビを見て少し休憩しているだけのかもしれませんね。一概に”のんびり”と表現するのは違うかもしれませんね。

でも、少し日本から離れて他の国の様子も見てみましょう。同じような年齢の子ども達がどんな暮らしをしているのか。

後半は、「僕がラーメンを食べている時」のその瞬間、起こっている他国の子ども達の様子を描いています。

仕事をする親の代わりにの赤ちゃんをおんぶして世話をする少女・水道が無いから地下水をくみ上げて生活用水を家に運ぶ少女・畑を耕す為に自分より大きい牛を引いて歩く少年・家族の為にパンを荷車に乗せて売って歩く少女。

どの子も、遊んでいません。かけっこしたり、ボールを蹴ったり、お人形を抱いたり、机に向かって勉強をしたり…そんな日本では当たり前の子ども達の姿とは真逆にも感じる子ども達の姿がここでは描かれています。

生きる為には遊ぶことが出来ないのです。家族の為に働いている少年少女の瞳は、読者の皆さんにはどう見えますか?

最後に登場する少年は、恐らく戦争があった跡地なのか、荒れ果てた街の道端で倒れています。誰一人として周りに人はおらず、声を掛けたり助けてあげたりする人がいない様子です。うつ伏せの状態で倒れているので、生きているのか死んでいるのか、気を失っているだけなのかも…わかりません。

そこに砂嵐のような激しい風が吹きました。周りの景色が全く見えない程の、真っ暗な砂嵐の中、あの少年はまだ倒れています。

ぼくがラーメンたべているとき 裏表紙

ラストの「風が吹いている」の本当の意味とは何か。

倒れた少年の場面で「風が吹いている」と一文。

次のページのラーメンを食べる主人公の少年の住む街にも「風が吹いていた」と一文書かれています。これは一体どういう意味なのでしょうか。

実はその次のページに、ラーメンを食べる僕の横であくびをしたミケが、窓の外を眺めているシーンが描かれています。違和感のある空の色に、読者は、「はっ!」と驚きます。

あの少年が倒れていた砂嵐の色が、このミケが見ている空に塗られているのです。日本でこんな砂嵐の空を私は見た事がありません。でも、全く同じです。

私は、この場面について、「こんな状況はいつ、どこで起きてもおかしくないんだよ。」と遠回しに作者長谷川さんが伝えているように思いました。

平和だった場所が、もしかしたら何かの瞬間で崩れてしまうかもしれないと、伝えているのではないでしょうか。

それは今すぐかもしれないし、遠い未来かもしれない。日本も昔はそんな時代もありました。戦争経験者がだんだん高齢化して減っているので、体験談を語り継いでくれる方は減っているのかもしれませんが、決して「昔話」にしてはいけないと思います。

現在世界で起きている平和とは言えない出来事について、ぜひ本書と共に、お子さんと見て、感じて、考えてみませんか?テレビのニュースでは、何が起きているのかまだ小学生でも理解できない事もあるでしょう。就学前の子ども達なら尚更何が起きているか分からないかもしれません。

しかし、君たちと同じ歳位の子ども達の中に、どこかの国で悲しさと苦しさで涙を流している子がいる事、飢餓で命を失いかけている子がいる・・・。きっと伝わると思います。

私達が楽しくご飯を食べている時間、暖かい布団で寝ようとしている時間に世界では何が起きているのか、ぜひ本書をきっかけに、考えてみませんか?

裏表紙の少年は先ほど倒れていた少年です。立ち上がっていますね。今何を感じ何を思い、月を見上げているのでしょうね。

遠い国の出来事かもしれませんが、この少年の見ている月もまた、あなたが見ている月と同じ月ですよ。地球・世界は繋がっているのです。

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。