ゆめぎんこう
”ゆめぎんこう”は、夢をお客様から買い取って、アメに変えて販売する場所。楽しい夢も怖い夢も、切ない夢も、あなたの希望のアメを購入できる、夢のようなお店なんです!
☆際立った特徴
- コンドウアキさんは、人気キャラクター「リラックマ」の原作者。
- 水彩絵の具で描かれていて、ほんわか優しい雰囲気。
- ”ゆめぎんこう”の設定の細かさが、話を深めている。
☆読み聞かせのポイント
- 本書の冒頭で、ぺんぺんのお店のアメ入りの瓶がずらりと並んで描かれているシーンがあります。「どんなアメがいい?」「どんな夢を見てみたい?」と、お子さんとぜひお話してみてください!ラストシーンで、ぺんぺんが読者に向かって「どんなアメがご希望ですか?」と聞くので、もう一度話し合ってみましょう!もしかすると最初に聞いた時と変わっているかもしれませんよ☆
- 「夢をアメに変えて販売している」という設定や、「バクが夢を食べてくれる」という事を理解するのは、年齢によって少し難しい子もいると思います。そんな時は説明を加えてあげるといいですね。
☆あらすじ
【ゆめぎんこう】は、お客様の夢を買って、その夢をアメに変えて、販売する所です。
販売しているアメの中には、空を飛ぶ夢を楽しめるアメから、怖い夢が好きな方向けのアメまで、様々です。
今日も店主のペンペンは依頼主の家へ、バクのモグモグと、夢の買い取りに出かけました。
今夜の依頼主はおじいちゃん。
おじいちゃんは楽しい夢を沢山見ました。パンを焼く夢、夜空の夢、シャボン玉の夢。
モグモグは夢を食べていくのですが、歳をとっていてあまり沢山は食べられません。
おじいさんの楽しそうな夢の途中でモグモグは満腹になってしまいました。
次の日です。
依頼主のおじいさんがお店にやって来て、真っ先に写真を見せながらぺんぺんに聞きました。
この女性が、夢に出てきませんでしたか・・・?
見覚えのあるその女性は、モグモグが食べきれなかった最後に夢に出ていたような・・・。
はたして、おじいさんと女性の関係とは・・・。
おじいさんがぺんぺんに依頼をした本当の目的が明らかになります☆
☆書店員の感想
正直に言うと、本書を開くまで、なんて可愛らしい子供向けの絵本なんだろう。きっと中身も楽しくて面白い話に違いない!と思っていました。
しかし・・・、読み終わるとジーンと心を打たれた自分がいました。
ほっこり温かい気持ちにもなりました。会えない人を思い出して会いたくもなりました。
子どもだけでなく、ぜひ沢山の大人に読んで欲しい絵本だ!と思いました。
どうして、私が読む前と後で、こんなに本書の印象がガラッと変わってしまったのかも含めて、紹介していきたいと思います。
●「あの夢の続きが見たい!」「夢の中くらい自由に飛んでみたい!」と思った事がある人に読んで欲しい!”ゆめぎんこう”は、あなたの見たい夢を見せてくれるアメを売っていますよ。
いい夢の途中で起きてしまった時のガッカリ感たらないですよね。怖い夢を見て、「なんて夢を見てしまったんだ・・・」と嘆く時もありますよね。
私はよく追いかけられる怖い夢を見ます。たいてい息切れしながら目を覚ますのですが、そんな寝起きはとっても疲れてしまって、一日が憂鬱な気持ちになります。
夢ってどうして自由に、好きなように見れないのでしょうね。
そんな私にピッタリ!としか思えない、実際行ってみたい店ナンバー1の「ゆめぎんこう」は、夢をアメにして販売しています。
魔法使いになれる夢のアメも、空を飛ぶ夢のアメも、怖い夢も販売しているので、お客さんが自由に選んで購入できるという訳です。
なんて夢のような店でしょう。ぜひアメを購入してみたいですよね!!
私の怖い夢も買い取ってくれないかな・・・。
●表紙に描かれているのが販売中のアメが入っている瓶です。どんなアメなのか、どうやって作っているのか、想像してみましょう!どんな夢があったら嬉しい?考えは人それぞれ。まさか!?と思うような夢もあるかも?
表紙を見てください!
店主ペンペンの後ろに描かれているのが、好きな夢を見ることが出来る『アメ』が入った瓶です。
ラベルに描かれた絵で、どんな夢が見れるのか分かるようになっているので、それを見ながら「これはパンケーキを食べられる夢だね」「魔法使いになれるのかな?」と想像して楽しむのも面白そうです。
私の夢によく出てくる、追いかけられる夢のアメの瓶があるとしたら、どんなラベルでしょうか?非常口に描かれているようなピクトグラムみたいな模様ですかね?
そんな風に想像を膨らませるのも楽しいかもしれませんね!
●謎が多い設定が、物語をリアルに感じさせるポイント!?
表紙のペンペン。横にそっと耳だけが見えているのが、ペンペンの相棒”もぐもぐ”です。裏表紙を見ると、二人の後姿が描かれているので、カウンターの中でこんな風に店番をしているんだと分かると思います。
もぐもぐは、この店にとって無くてはならない存在です。依頼主の夢を食べる役目と、どうやらアメを造る時にも活躍しているようです。(詳しくは企業秘密なんですって!)
どうやってアメを造っているのか、見る事も聞く事も出来ないのは寂しいけど、逆にその謎めいた所が面白くて想像して楽しい部分です!
もう一つ不思議なのは、【夢を買い取れるのは、おひとり様1年に1回だけ。】という所。
どうして1年に1回なんでしょう。
この点には本中で全く触れられていないので、完全に謎な一面です。(絵がヒントになっているかも??)一年に1回だけとなると、もしかして夢を食べられる事は人体に大きな影響があるからなの?と、私は考えてしまいましたよ。
どんどん本書の謎が深まって来ました。だけど、本当に”ゆめぎんこう”が存在したら、きっとこうなんじゃないかと想像が膨らんでくるから不思議です。
この設定の細かさや謎が所々にある所が、物語を面白させるポイントなのでしょうね。
●おじいさんが夢の買い取りを依頼した目的とは・・・?
かけがえのない大切な人が、先に旅立ってしまったら・・・。夢でもいいから会いたいなと、私もきっと思うことでしょう。
私はおばあちゃん子だったので、亡くなって3年以上経ちますが、やっぱり夢でもいいから会いに来て欲しいと願ってしまいます。
「あんなことをして楽しかったよね。」「おばあちゃんが作ってくれたあれが食べたいよ。」なんて会話をもう一度、したいものです。
本書では、後半にぺんぺんに夢の買取を依頼したおじいさんが登場します。奥さんにもう一度会いたいなと願うおじいさんの気持ちが、私にはジーンと伝わってきました。
結局夢でも奥さんに会う事は出来なかったおじいさんでした。でも、ぺんぺんと話をしていたら、「そういえばそんなこともあったな」と、奥さんとの楽しい記憶を思い出すことができたようです。その時のおじいさんの幸せそうな表情・・・☆最高のラストシーンでしたよ。
私も自分のおばあちゃんに夢で会う事はいまだ出来ていませんが、本書を読んで「そういえばおばあちゃんによくこんな事言われたな」など、登場するおじいさんと同様に、忘れていた沢山の思い出がよみがえり、懐かしむ事が出来ました☆