よるくま クリスマスのまえのよる
クリスマスシーズンの読み聞かせにピッタリ!良い子にはサンタさんは来るけど、悪い子にはサンタさん来ないのかな・・・?親子の愛情がたっぷり伝わるストーリー☆
☆際立った特徴
- 「よるくま」第二弾。
- 主人公の男の子は、サンタさんが来ないかもしれないと心配している。
- よるくまは男の子の仲良しで、真っ黒なクマ。
- 部屋を彩っているクリスマスの飾りが美しい。
- よるくまと男の子の描かれるサイズが場面で違う。
- 短編映画のような展開の速さ。
- 現実と夢の間のような、独特の世界観。
- お母さんを想う男の子の気持ちが伝わる。
- お母さんの男の子への愛情が伝わる。
- よるくまとの出会いと関係性が見えてくる。
☆読み聞かせのポイント
- とても複雑で繊細なお話の展開で、最初に読む時には途中の声掛けは無くてもいいかもしれません。
- 慣れてきた頃に、お子さんんが気になった場所や、どういうことなのな?と思う所を、お話すると良いと思います。不思議に思う事に対して、特に答えは見つける必要はなく、「ホントだね。どうなんだろうね。」と共感するだけでよいと思いました。
- 答えが無いあいまいさが、この絵本の世界観であり、面白さだと思います。

☆あらすじと書店員の感想
”よるくま”第二弾。「クリスマスのまえのよる」では、男の子がママに怒られることをしてしまった僕には、サンタさんは来てくれないかもしれないと、心配している所からお話が始まります。
このまま眠ってしまえば、朝になってクリスマスを迎えられるのに、僕にはサンタさんは来てくれないかもしれないと心配と悲しさで眠れない様子の男の子。
そこへ仲良しのよるくまが訪ねてきてくれました。よるくまは小さな可愛いクマさんで、クリスマスをまだ知りません。
男の子は、「クリスマスには良い子の所へサンタさんが来てくれてプレゼントをくれるんだよ」と話しました。しかし、そんな話をしていると、だんだん「僕の所には来てくれないかもしれない・・・悪い子だから。」と、今日の自分の行いと、いっぱいママに叱られたことを思い出して悲しい気持ちになりました。
その時、悲しそうな表情をする男の子を、よるくまはそっと抱きしめ慰めます。
声には出していないのですが、きっとその時「大丈夫だよ。君はとっても優しい子だよ。」と抱きしめながら伝えているのだと、私は感じました。とっても温かいシーンです。
短編映画を見ているかのような展開の速さと、物語のメッセージの深さを感じる絵本です。現実なのか夢なのか、境界線が見えない所が、ぐっと子ども達をこの物語の世界へ入り込ませるのかもしれません。
ここまで読み進めると、この物語の中では、クマも人間も友達になれるような意思疎通できる間柄であり、共存している世界なんだなと思いますよね。
しかし、単純にそれだけの世界ではないようです。
よるくまは一体何者?ここはいったいどんな世界なの?夢なの?現実なの?と私は読みながら不思議に思う事が多くありました。
まず二人のサイズがお話の中で大きくなっり小さくなったりと変わっていきます。
最初は男の子は6~8歳位、よるくまは人間で言うと2歳位の背丈で描かれていたのですが、お話の中盤になるとクリスマスツリーに飾ってあった飛行機に乗り込めるほど小さく描かれたり、家に帰ったよるくまがママと抱き合う様子を、巨人のように大きな男の子が窓の外から眺める場面もあります。
とっても不思議だけど、よるくまとよるくまのママの互いを愛し合う姿がやけにジーンと心をうちます。親子の愛情が伝わる温かいシーンです。
次に描かれるのは、セピア色で描かれるシーンです。2歳くらいの主人公の男の子がママに抱かれていたり、クリスマスにプレゼントをもらっています。そのプレゼントの中にはよるくま(手のひらサイズのぬいぐるみ)が入っていて、男の子がとても喜んでいます。
これは、男の子が小さい頃を思い出しているという事を表しているのだと思います。
きっと男の子は自分がこんなにも愛され大切にされて育って来た事やよるくまとの出会いを思い出しているのですね。

この物語は男の子がベッドに入って眠るまでの時間を描いています。
回想シーンの描き方に注目です!!
ぼかしのかかった黒い四角の枠を周りに描いていて、その中に男の子の幼い頃の映像が流れているような、映画のような描き方をしているのですが、実は最後だけその枠が目の形をしています。
よく見ると、目がウトウトと閉じてきているような、眠そうな目の形です。
そしてこの時、男の子を呼ぶ声が聞こえてきます。
「ママの所へ帰っておいで。大丈夫心配いらないよ。ゆっくり眠っていいんだよ。」
聞き覚えのある大好きな優しいママの声です。
男の子は飛行機を降りて一目散にベッドに向かって走ります。手にはよるくまの人形を抱えています。
きっとここで、男の子はぐっすりと夢の中に入っていったという事を読者に伝えたいという思いを込めて、作者は描いているのではないかと思いました。
なぜそんな描き方をしたのか?
それはママの優しい声が夢への世界へと誘い安心して眠っていったという事を読者に伝えたかったのではないかと思いました。
最後に、ぐっすりと眠った男の子の頭をなでるママの手が描かれています。撫でる手だけで「愛しているよ☆」とママの言葉や気持ちが伝わってきます。男の子からも「ママ大好きだよ」と聞こえてきそうな寝顔。互いに想い合う気持ちがジンジン伝わってくるシーンですよ☆必見です!
そして、今日はクリスマスの前の夜。もちろん男の子の枕元にはクリスマスプレゼントが置かれています。何が入っているのかな?それは明日のお楽しみ☆
メリークリスマス☆
- 作品名:よるくま クリスマスのまえのよる
- 著者名:酒井駒子
- 出版社:白泉社