わんぱくだんの たからじま
冒険してみたい子にピッタリ!わんぱくだんの一員になって海の冒険に出かけよう!
☆特徴
- わんぱくだんシリーズ。(2022年現在で25冊。)
- 仲良し3人が体験する不思議な冒険。
- 冒険心や好奇心を刺激されるストーリー。
- アクリル絵の具を使って描いている。
※絵を担当された末崎茂樹さんのインタビュー こころ育てる絵本との出会い 「マグちゃん通信」
☆読み聞かせのポイント
- 冒険が楽しめる絵本です!「どうしてなんだろう?」と想像を広げたり、クミが持っていた宝物はなんだったの?」と謎に迫るのも楽しい読み方ではないでしょうか。
- 3人の冒険にはハラハラするような迫力シーンが何度も登場します。強弱をつけたり怪獣になりきって、シーンにピッタリな読み方をしてあげると良いと思います。
☆あらすじ
お日様の光がギラギラと暑い真夏の公園に、元気な3人の声が聞こえてきました。
わんぱくだんの、ケンとヒロシとクミです。
今日は何をして遊ぼうかと話していると、クミが「私海賊みたいじゃない?」と、頭にハンカチを巻いて言いました。
ヒロシは紙を丸めて望遠鏡に、ケンは葉っぱの口髭をつけて船長気分です。
さあ、3人は砂場で海賊ごっこ開始!
クミがポケットから青いきれいなビー玉を取り出し、砂で作った宝島の上に置くと、急にビー玉から強い光がキラキラキラッと放たれ、3人は眩しくて目が開けられません。「まぶしい!!」
そっと目を開けると、そこは大海原を進む大きな船の上でした。
僕たち本物の海賊になったんだ!と3人は驚き、喜んだのもつかの間、そこに現れたのは砂怪獣。力を合わせて退治すると、船は宝島に辿り着きました。
宝島には深いジャングルが広がっていて、3人はジャングルの中に入って行きました。
夜のように真っ暗なジャングルの中。どこからかウォーウォーと猛獣の鳴き声のような声が響き渡ります。
なんだか猛獣に追われているような気配を感じた3人は急いで逃げる途中で、3人は大きな穴の中に落ちてしまいました。
深く暗い土の中で弱音を吐くケン。泣き出すタカシ。しかし、クミは諦めていません。
土を掘り始めると、何やら土の中で光り輝く何かが見えてきました。それは宝物でした。
どんどん掘り進め、手が届きそうになった時、キラキラキラッと宝物から強い光が放たれ、3人は眩しくて目をつぶりました。
そっと目を開けた3人の前に、元いた公園の景色が広がっていました。
今のはなんだったんだろう?夢じゃないよね??と話していると、クミが、ぎゅっと握った手の平を二人の前に出し、
「私、ちゃんともってきたよ」と、そっと手を開きました。
☆書店員の感想
前置きに書かれた一文とビー玉の絵が、実は本作品の肝!!謎が深まりますよ!
本書を開くと、公園に持って来たクミのビー玉について、「いつのまに入っていたのでしょう。クミのおもちゃ箱に青いきれいなビー玉が・・・」と書かれている所から、物語が始まります。
次のページに題名とその青いビー玉の絵が描かれているのです。なんとも意味深で、興味を引くオープニングですよね!!最後までストーリーを楽しんだ後にも、もう一度このページに戻って欲しいです。
ビー玉の中に、後から登場する宝島らしき島が描かれているのです。「どういうこと?」と、きっと皆さんも思いますよ。オープニングの謎がとけるかもしれませんよ。
3人がいる場所が、公園の砂場から大海原に一気に展開する所が面白い!夢のような夢じゃないような、ファンタジー感を味わえる作品です。
元気な3人組の明るく楽しそうな声が公園内に響きます。海賊ごっこを始めたのは砂場です。落ちていた段ボールを大きな船に、紙を丸めて望遠鏡に、葉っぱを鼻の下につけて海賊の立派な髭に見立てる子ども達。さらに砂で怪獣を作ったり、小枝を集めて砂山に刺して島にしたりと、もう3人の中では立派な海賊ごっこが始まっています。
私は素晴らしい想像力と工夫だと驚きました。ここまでこだわってなりきって遊べたら、素敵だなと思いました。
さあ、砂場で作った島は「宝島」と名づけられました。宝物にクミのポケットに入れていた青いビー玉を置こうとした時、急に展開が変わります。
青いビー玉が3人を冒険の世界へと連れて行ってくれるのです。魔法のような、奇跡のような出来事がここから始まりますよ!
ハラハラドキドキが満載だからこそ、物語の世界に入り込み、3人と同じように冒険を楽しめる!!
クミがポケットから取り出したビー玉が光って、その中に吸い込まれるように光に包まれて目を閉じた瞬間に、3人の立っている場所が、かしのき公園の砂場から海の上に浮かぶ海賊船の上に変わります。一瞬の出来事すぎて本人たちも何が何だか…と戸惑った事でしょう。それは読者も同じ。どういう事なんだろう??と考えます。
しかし、3人はすぐにここは海賊船の上だと気がつきます。自分達が砂場で作った海の世界が本物になり、目の前に広がっていると気がつくのです。そして、きっとこれから砂の怪獣が登場したり宝島があると信じるのです。
私も含め、おそらく読者はこの展開に不思議さを持ったまま、物語を読み進めていきます。しかし、そうこうしているうちに怪獣や宝島を見つけていきます。次から次の展開にすっかり主人公の3人と同じく、読者も海賊の一員になって冒険を楽しむことでしょう。不思議な事に、大人も子供もお話の世界にどっぷり入り込める、魅力がある絵本だと思いました。
宝島の青い光とビー玉の関係が、やっぱり肝!
何度も何度も読み返しているのですが、私はビー玉の光の謎がやっぱりひっかかります。先ほども紹介しましたが、クミのポケットに入っていたビー玉は、実はクミにも謎な存在なのです。「いつのまに入っていたのでしょう」と前置きがあります。
もしかしたら、ビー玉は何かしらの力を持っていて、その力で冒険の世界に連れて行ったのでしょうか。または3人の強い思い込みが幻想を見せたのでしょうか。(ごっこ遊びがエスカレートして入り込んでいた??)皆さんはどう思いますか?
考えれば考えるほど、なんてドラマチックで映画みたいなストーリーなのかと感動しました。絵本でここまで冒険を楽しめる絵本はめったにないのでは??
何度読んでも謎が残って、何度読んでも冒険の世界に入り込める映画を絵本にしたような作品だと思いました。
- 作品名:わんぱくだんのたからじま
- 著者名:作 ゆきのゆみこ 上野与志 絵 末崎茂樹
- 出版社:ひさかたチャイルド