色とりどりの鳥

昔話が好きな子・鳥が好きな子にピッタリ!鳥たちが美しい色の羽をもつようになったのはなぜでしょう。

☆際立った特徴

  • アボリジナル(オーストラリアの先住民)に伝わる昔話。
  • 生きる知恵や力強さを描く。
  • 昔、鳥たちはみな黒い羽根だった。どうして色とりどりになったのか。
  • 鮮やかでダイナミックで、迫力を感じる絵本。
  • 世界の昔話シリーズ[第一期]の中の1作。

☆読み聞かせのポイント

  • 傷ついた友達がいたら、君ならどうする?鳥たちはどうしてこんなに必死で寄り添ったんだろうね。ぜひ読み終わった後に、親子で考えを話し合ってみたいですね。
  • 「七色のしぶき」って何だったんだろう?私はもしかしたら神様からのプレゼントかな??と思いました。もしも自分が鳥ならどんな色に染めて欲しい?または、何の鳥になりたい?ぜひ想像してみましょう!
  • カラスの事を悪く見たりはしないで欲しいと思います。誰よりも合理的で、少しクールなだけ。頭のいいカラスだからこその選択であり、その考えを他の鳥に伝えているのはみんなを思っての行動なのかもしれません。

☆注目ポイント

  • 傷ついてどんどん弱っていく仲間を、みんなはなんとか励まし、元気づけてやろうとします。しかし、傷口はどんどん膨れあがり、ハトは心まで弱っていきます。
  • カラスが言っている事も一理あるように思えますが、それでもハトを何とかしてやりたいと願う鳥達です。
  • 「傷口にたまった膿」を仲良しのインコはハトをこんなに苦しめやがって!!と言わんばかりに蹴り飛ばします。一見酷な話にも聞こえますが、どうにか助けたい気持ちが、インコにそんな行動をさせたのかも。
  • 「七色のしぶき」の意味とは。仲間の為に一生懸命世話をした神様が与えたプレゼント?
色とりどりの鳥 裏表紙

☆あらすじ

昔々まだ人間が居なかった頃。鳥たちの羽は、みんな石炭のように黒かった。

大きなヒクイドリも、小さいコやオウムも、みんな真っ黒な羽しかもっていなかった。

ある日ハトが、木の枝にいたイモムシを捕まえようと地面に降り立った時、尖った枝先がハトの足にささった。

痛くて痛くて涙を流し、誰か助けを呼んだが誰も周りにはおらず、何とか枝は外したものの、ハトは倒れてしまった。

何日か経った頃、食べ物を探して飛んでいたインコが、倒れて小さく震えるハトに気がついた。ハトの足は大きく腫れあがり、息も苦しそうにしている。

驚いたインコは大きな声を出し仲間を呼んだ。

大きな鳥は翼を広げて影を作り、小さな鳥は口に含んだ水で傷口を冷やしたり、ハトに口移しで水を飲ませた。大好きなイモムシを口元に運んでやったり、どこからか柔らかい葉を持って来て傷口に巻いてやるものもいた。

しかし、一生懸命付き添っている鳥たちの姿を、遠くで冷たく眺めるカラスがいた。

「そんな死にそうなやつの世話をしてどうする。病気がうつるかもしれない。」

付き添っている鳥たちはカラスの言葉など誰も気にせず、ハトの面倒を見た。しかし、傷は良くならず、どんどんハトも弱っていった。ハトはみんなに力を振り絞って伝えた。

『僕はもう死んでしまう。みんなありがとう。もうこのままでいいから』と。

心まで弱ってしまったハトを、この先どうしてあげたらいいのだろう?鳥たちは考えた。

次の朝、ワライカワセミは歌を聞かせた。「笑うと元気が出るよ!」

オーストラリアヅルはダンスを見せ、ヒクイドリが大きな爪で大地を踏みリズムをきざんだ。「見てごらん。ダンスを見ると元気が出るよ。」

目を開けようとしないハトを見ていてもたってもいられなくなったハトと仲良しのインコが飛び出した。「また一緒にミミズを食べに行こう!ハト君元気出してよ!」

インコが地面に降り立った時、膨れ上がった傷口にインコの足がぶつかった。

「この傷が悪いんだ!この!」と、思わずインコが傷口を蹴とばすと・・・。

ハトの傷口から七色の不思議なしぶきが飛び出した。

そのしぶきは、ハトの周りに集まった鳥たちに降り注いだ。

インコの羽をすみれ色や緑色やオレンジ色に染め、ツルやヒクイドリの羽を鮮やかな色で点々や線をつけ、オウムの頬と胸をバラ色に染め、ワライカワセミを輝く青い水玉模様に、小さな鳥達を黄色や赤や青色に染めた。

そしてハトは黒い色が抜け白い姿になり立ち上がった。

こうして鳥たちは、今私達が知っている姿になった。

今では緑色の森に色とりどりの鳥たちが飛び交っている。

けれど、ハトの側にいなかったカラスだけは、今でも真っ黒なまま・・・。

☆書店員の感想

【本書最後尾、再話をされたほそえさちよさんの文章より。】

この昔話は、オーストラリアの先住民族であるアボリジナルの人々の中でも、ダンピア半島に住むバルディの人々に伝わるお話を元にしているそうです。アボリジナルの人々の中でも暮らしや文化・言語は住む場所によってさまざまで、共通するのは文字を持たず、絵や音楽、ダンスで自らの文化を伝えていると言う事と、ドリームタイムという天地創造の神話を持っている事だそうです。

民族の中でも、虹から降ってきた七色が鳥たちに降り注いだと語る方もいるそうです。本書ではあえて”「傷口にたまった膿」が七色のしぶきとなって助けてくれた友を美しい色に染め讃えるさま”を伝えているこのお話を描いたんだそうです。

協力し厳しい気候や土地の中で生き抜く知恵を伝えているように感じたからだと、ほそえさちよさんは話しています。

ぜひ、絵本のラストシーンの次のページにも目を通して見てください。より一層このお話を理解し深める事が出来ると思います!

色とりどりの鳥 表紙

●カラスについて 

「カラスって冷たい!」と思わないで欲しいなと思うのは私だけでしょうか。どうしてもお話の中で悪役になりがちなカラスですが、頭がいいから誰よりも合理的・・・なんだと見てあげてもいいのではないかと私は思うのです。

自分の時間を割いてまで、死にそうなハトを世話してどうするの?どうせ助からないのに。と、考えたのかなと思うんですよね。

見方を変えれば、カラスはみんなに良かれと思って「そんな死にそうな奴の世話をして何になる?病気がうつるかもしれないぜ」と言ったんだと思うんです。言葉がサバサバしているし、態度も悪かったのでしょう。みんなに悪口だととらえられてしまいましたが・・・。

人間に例えるなら、世の中には色んな考えの人がいて、カラスのように考えてしまう人もいるし、世話をせずにはいられない人もいます。嫌味を言っていることに気がつかない、周りから嫌われがちな人もいます。

この昔話も、色んな鳥がいて色んな考え方があると知る事の出来るお話だったと思いました。

元気づけたくて歌ったり踊ったり、楽しいリズムを聞かせてあげる鳥も、膿を”恨みを晴らす”かのように蹴とばしたインコも色んな考えを持っていましたね。

実はインコの行動についての方が私は「蹴とばすなんて!!」とビックリしました。カラスよりひどい事をしているように見えました。でも結果的には膿が出て、しぶきが出て・・・と、蹴った行為が良い方に展開したから、良かったものの、けっこうひどい事をしてますね…。でも、色が変わらなかったカラスだけが悪者のように読者に印象を与えてしまいます。少し可哀そうだなと思ってしまいました・・・。

世界中にはまだまだ私達の知らない話があって面白いですね!日本の昔話とはまた違った面白さを感じます。住んでる場所や環境が違ければ、暮らし方や文化・物事に対する考え方が全然違ってきますよね。だからこその面白さがあるんだなと思いました。

さて、本書では沢山の鳥達が登場します。最初はみんな石炭のように真っ黒でしたが、ラストに素晴らしい色の羽に変わります。ぜひ、手に取ってこの素晴らしくキレイな色合いを楽しんで欲しいなと思います。

ハトを元気づけようとした鳥たちの踊りや歌、リズムを刻むステップ、そしてインコの蹴り・・・とっても迫力がある、ダイナミックな絵が描かれています。ぜひこちらも見て楽しんで欲しいなと思いました。

  • 作品名:世界のむかしのおはなし オーストラリア アボリジナルのおはなし 色とりどりの鳥
  • 著者名:再話 ほそえさちよ 絵 たけがみたえ
  • 出版社:玉川大学出版部
よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。