ぼくは カメレオン
1ページずつが、まるで絵画のよう!!動物好きにピッタリ!ちょっぴり自信を無くした大人にもオススメ。君は君のままが素敵だよ!って自信をくれる物語。
☆3つのおすすめポイント
- 周りの色と同化してしまう性質を持つカメレオン。そんなカメレオンのカルロは誰も自分に気が付いてくれないと、ご機嫌ななめです。だけどカバは、そんなカルロがうらやましいと言います。どうしてなのでしょうか?
- カルロが動物達に絵の具で色を塗ってあげました。堂々とした動物達の夜のパレードは見ものです!
- 自分らしさとは一体何でしょうか?ライオンはライオンの、カメレオンはカメレオンのありのままの姿の素晴らしさがあるのかもしれません。
☆あらすじ
カルロはカメレオン。ジャングルを歩くと体の色が変わります。緑から黄色、黄色から茶色へカルロはいつも周りと同じ色。
動物たちはカルロに気づかず目の前を通り過ぎていきます。「ああ、つまらない!カメレオンなんて」カルロはいつもご機嫌ななめ・・・。
ある日の事、カルロは大きなカバに踏みつぶされそうになりました。そこにいるとは気が付かなったようです。「だあれも、僕にきがつかないんだから」とカルロが言うと、カバは言いました。『わしは君がうらやましい』 うらやましいだって!?
カバはいつも泥んこ色。明るい色になれたらすてきだろうなぁと思っています。「そんなことなら・・・」と、カルロは桃色の果物をもいで、その色でカバに色を付けました。カバは大喜び。それを見てカルロも嬉しくなりました。そして、素晴らしい事を思いつきました。
カルロはあちこちから、葉っぱや木の実・花びらを集めて、絞ったりすりつぶしたり、そして混ぜ合わせたり。そして朝が来てカルロは大きな声で叫びました。
「カルロの絵の具いかがですか?」「あなた色に塗りましょう!空色?虹色?どんな色でもお望み通り!」カルロの声は風にのって、ジャングルに広がりました。
カルロの絵の具は大人気。ジャングル中の動物達がやってきてました。そして、ジャングルは色とりどりの動物でいっぱいになりました。「さあ、みんなで行進だ!」
何日か経ちました。動物達が「目がチカチカする」「目立ちすぎて隠れられない」「どれがシマウマか分からない」と怒ったり、うなったり、吠えたりとジャングルは大騒ぎしています。
すると、「元の色に戻してくれー!!」と動物達がいっせいにカルロを追いかけ始めました。岸壁に追い詰められたカルロは逃げ場がありません。すると崖にしがみつきました。『もうおしまいだ。どうしよう・・・』カルロの体の色が崖そっくりに変わり始めました。動物達もカルロがどこにいるのか分かりません。
その時です。空が真っ黒な雲におおわれて稲妻が走り、大粒の雨が滝のように落ちてきました。雨は動物達の絵具をみるみるうちに洗い流して、みんなすっかり元の姿に戻りました。
太陽が大地を照らし、ジャングルは再び静かになりました。カルロはどこに?
大丈夫、カルロはジャングルにいます。体の色を変えながらね。
☆際立った特徴
表紙のシンプルで可愛らしい印象とは、驚くほどギャップがある内容です。
英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語版をはじめ、オランダ語、中国語、韓国語そして日本語の8ヵ国語版にて、日本の絵本界初の世界同時発売になりました。
美しい自然と動物たちの描写・繊細でありながら力強さも感じる作品です。特に見ごたえがあるのは、絵の具でペイントした動物達の月をバックにした堂々とした行進です。とても色彩豊かであり、動物達の1人1人から強い自信が、体から・ページからも溢れ出ているようです。
☆書店員の感想
周りの色と同化してしまう性質を持つカメレオン。そんなカメレオンのカルロは誰も自分に気が付いてくれないと、ご機嫌ななめです。だけどカバは、そんなカルロがうらやましいと言います。どうしてなのでしょうか?
カメレオンのカルロにとって、周りと同じ色・柄になってしまう自分の性質があまり好きじゃないみたいですね。どんな色にでも変身できるが為に、誰も自分に気が付いてくれず、孤独を感じていたのかもしれません。一方カバはいつも泥のような色をした自分の皮膚の色が気に入っていないようです。明るい色になれたら素敵なんだろうな・もしかしたら自分を取り巻く環境の何かが変わるかもしれないと期待したのかもしれません。
人間も同じですよね。周りがうらやましい、自分なんてと自分に自信が持てないと言う事って多かれ少なかれ誰でもあると思います。
そんなカバのコンプレックスを、カルロの絵の具のアイデアで変えて、喜ばせてあげました。
喜んだカバを見て、カルロはもしかすると「誰にも気が付かれなかった自分でも、カバを喜ばせてあげられた。僕と同じように色んな色に変身させてあげられる。この方法をみんなにもしてあげたら、色んな色になってしまう自分と同じような仲間ができるかも!」と思い期待したのかもしれません。
動物達に絵の具で色を塗ってあげました。堂々とした動物達の夜のパレードは見ものです!
ジャングル中の動物達にも、カルロやカバと同じように容姿の悩みがあったようです。絵の具を塗ってもらった動物達はカラフルに色づいた体を堂々と見せびらかすように歩きます。月に照らされて毛並みも光って揺れているようですね。ジャングルとは思えないほどの鮮やかな色を、動物達と一緒に読者も楽しみましょう!
自分らしさとは一体何でしょうか?ライオンはライオンの、カメレオンはカメレオンのありのままの姿の素晴らしさがあるのかもしれません。
しばらく色が変わった自分を楽しんでいた動物達でしたが、そのうち「目がチカチカする」「目立ちすぎる」「シマウマがわからない」と怒りだし、元に戻せー!とカルロを追いかけました。一度は着飾ったものの、自分らしくないな・安心して過ごせないなと気が付いたのでしょうね。
そして岸壁で動物達は大粒の雨にうたれて、体の色が一瞬で元に戻りました。だけどカルロは崖そっくりのまま。そこにこのお話の一番伝えたい事があるように思います。
雨にうたれても変わらなかったカメレオンのカルロの体質は、他の動物には無い神様に唯一許された特別な宝物なのです。きっと他の動物にも、その動物だけの特別な宝物が備わっています。私にも私だけの特別があるかもしれません。
カルロは動物達に追いかけられて怖かったと思ったかもしれませんが、「誰にも気が付かれなくて・・・」と悲しんでいたカルロにとって、『僕は僕でいいんだな。神様からもらった特別な宝物なんだな』と感じる、素敵な出来事だったのかもしれません。