あのね あのね
園からの帰り道の、何気ない会話を楽しむ親子を描いたストーリー★園に通っている子とそのご両親にピッタリ!主人公の男の子への、両親の愛情を感じます。
☆3つのおすすめポイント
- お話がまだ上手ではない男の子の園からの帰り道。パパ・ママとその日の出来事を話します。そして、時が経つにつれて次第にお話が上手になっていきます。
- 男の子はその日の楽しかったこと、失敗した事、悲しかった事を話します。それにしっかり向き合って答えるパパとママの言葉に、男の子は元気をもらいます。
- 「あのね あのね」とお話をする日常の風景。それは変わることのない親子の楽しくて温かい遊びタイムなのです。春夏秋の季節も感じることのできる背景です。時の経過や男の子の成長を感じます。
☆あらすじ
園からの帰り道です。自転車の幼児用座席で座っている男の子が、ママに話しかけました。
ママハは、想像を膨らませながら聞きます。
桜がチラチラ散る、春の帰り道でした。
パパとの帰り道の事。橋を渡っている所で、男の子が話し始めました。
お父さんは色々考えます。
森の葉っぱが青々としている、夏の帰り道でした。
ママとの帰り道。踏切を過ぎた所で、男の子が話し始めました。
ママには、ピンと来たようです。
半袖の子も羽織を羽織る人もいるような、そんな夏の終わりの帰り道でした。
秋になり、ママとパパとのかわりばんこの帰り道です。
パパにお当番の事やお遊戯の練習、お絵描きやお歌の練習など、その日の楽しいお話をします。
ママにポケット中に大事に持っていたどんぐりや落ち葉、石やダンゴムシなど、見せてあげます。
そんなある日、帰り道に雨が降ってきて、男の子とパパは神社の屋根で雨宿りをしています。
男の子の目から、涙がポロリと落ちました。
雨がやみました。男の子は、もう元気。
しりとり遊びをしながら、自転車で家に帰ります。
夕日がだんだん沈む頃、空にはまん丸なお月さまが見えます!
ねえ パパ ママ あのね・・・
☆際立った特徴
まだ、お話もすらすら出来ない幼い男の子。ママとパパのかわりばんこなお迎えと自転車での帰り道は、男の子が大好きなお話タイムです。始めは「??」と大人が想像を膨らませて話を聞かないと何を話したいのか分からないような、まだまだ上手に話せない男の子ですが、だんだん時が経つにつれて、お話が上手になっていきます。お話する活動やその時に感じた思いもだんだん話せるようになってくるのですが、言葉だけでなく男の子の心の成長も感じます。
春夏秋の季節の移り変わりも背景から楽しめる帰り道。男の子の日常を描いています。
☆書店員の感想
お話がまだ上手ではない男の子の園からの帰り道。パパ・ママとその日の出来事を話します。そして、時が経つにつれて次第にお話が上手になっていきます。
春の帰り道、お母さんとの帰り道で「のり ぺたぺたして」「まる もらってて」男の子が今日の出来事をお母さんに話し始めました。お母さんの頭には???がいっぱい!
『なんだろなー?のりぺたぺた?まるをもらえる??おにぎりかな?おだんごかな??』とっても難しい問題を出されてしまったお母さんは、なんとか男の子の話を分かってあげようと必死に考えます。
そして、お母さんはきっとこれだ!!という答えを見つけ出しました。『のりで丸い紙を貼ったのね!楽しかったね!』と男の子に伝えます。
素晴らしい推理力ですね!これって実は”親アルアル”なのかもしれません。
幼い子どもはお話がまだまだ未熟。だけど一生懸命何かを伝えようとしてくれている子どもの気持ちやその出来事を分かってあげたくて、必死に今日の出来事や先生から聞いた園での話を思い返します。そして、「そうか!あの事か!!」と、ようやく繋がります。
本書のお母さんもきっと同じように、記憶や情報を頭の中でグルグルと探して、男の子の話したがっている事が何なのかを見つけ出したのでしょうね。
毎日の帰り道が、そんな親子の会話の時間です。
最初はお父さんとお母さんがよーく考えないと伝えたいことが何なのか分からなかったのですが、次第に男の子に話す力がついてきて、秋になる頃には、今日は何がどうあったのか、その時どう思ったのか、伝えることが出来るようになっていきます。しりとりだって出来るようになっていくのです。
お父さんとお母さんが頭を悩まさなくても、男の子の話だけで伝わるようになるなんて、素晴らしい成長です!!
日常の親子の会話時間が、きっと男の子の楽しみな時間であり、楽しいからこそ、話す力を伸ばすことに繋がったのかもしれませんね。
男の子はその日の楽しかったこと、失敗した事、悲しかった事を話します。それにしっかり向き合って答えるパパとママの言葉に、男の子は元気をもらいます。
失敗してしまった事や、上手くできなかった事を話す事は誰だって勇気が必要です。ましてやおもらしは、もしかしたら怒られるかもしれないという怖さもあるでしょう。
男の子のお母さんはちゃんと分かっています。急いだのに間に合わなかった事・怒られるかもしれないのに自分から勇気を出して伝えた事を。そしてお母さんは優しく『教えてくれてありがとう』と感謝を伝えるのでした。
私は、男の子はきっとその時「今度こそは気を付けるよ!」と前向きに考えることが出来たのではないかと思いました。
そして、お友達に「遊ぼう!」と言えなかったことも、男の子が言えなかったことを責めたりしません。『今度は勇気を出して頑張れ!』なども言いません。だって、今日も頑張ったんですから。頑張ったけど言えなかったのです。
お父さんはちゃんと分かっています。男の子の頑張りをちゃんと見ていました。
『帰りにみんなにご挨拶できたね!偉かったよ!明日はきっと遊ぼうって言えるよ!』と伝えます。きっと、帰りはお迎えのお父さんが側にいて、一人の時よりも、少し勇気を出すことが出来たのでしょうね。
『帰りに出来たから、きっと明日は大丈夫!それに、失敗しても出来なくても大丈夫!大丈夫!』とお父さんは伝えたかったのでしょう。
そして、それを聞いた男の子の目からポロリと涙が流れました。
お父さんの優しい言葉が、男の子を温かく包み込んだのでしょうね。
男の子が「あのね・・・」と話したことに対して、お父さんとお母さんが伝えた言葉がどれも素晴らしいと思いました。
「あのね あのね」とお話をする日常の風景。それは変わることのない親子の楽しくて温かい遊びタイムなのです。春夏秋の季節も感じることのできる背景です。時の経過や男の子の成長を感じます。
本書の始めは、桜の花びらが舞い散るような春でしたが、最後は長袖を着るような、秋の風景になっています。少しだけ冷たい風になり、自転車に乗るお父さんとお母さんの頬が赤くなりました。しりとりを楽しむ親子と、夕日が沈みかけ、お月さまが顔を出し始める景色が、とてもゆったりとしていて、穏やかで、温かな雰囲気を感じさせます。
毎日の帰り道が、この親子にとっては掛け替えのない幸せなひと時なんだろうなと感じました。
男の子の日常を描いている本書は、幸せな帰り道の「あのね あのね・・・」と親子で会話を楽しむ姿を描いています。これからもずっと、幸せな帰り道・親子の会話は続いていくのかな・・・
何気ない毎日は、何て素晴らしくて幸せなんだろう。親子で過ごす時間を大切にしたいと、思わせてくれた一冊でした。
きっと読んだあなたも、お子さんと沢山お話したくなりますよ★