さわってごらん!よるの星
夜の寝かしつけにピッタリ。本を触ったり、息を吹きかけてページを進めると、次の新しい展開が待っています。だんだんと心地よい眠りに誘います。
☆3つのおすすめポイント
- 少し薄明るい空から、だんだんと暗くなっていく空。夜に向かっていきます。夜の素敵な風景が、穏やかな気持ちにさせてくれます。
- 耳から入ってくる言葉のひびきも心地よく、優しいイラストとともに落ち着いた夜へ、そしてまた新しい爽やかな朝へと素敵な時間が流れます。
- 寝かしつけ、というと、1日の最後の大仕事だったりもしますね。そう感じてしまうような時間も、素敵なものに変えてくれるような絵本です。
☆あらすじ
少しずつ、空が薄暗くなってきました。
今日もだんだん夜がやってきます。
1匹のホタルが飛んでいます。そっと優しくホタルに触ってみましょう。
そしてページをめくると…ホタルが光りました。
次に、そのホタルのまわりをあちこち触ってみましょう。
ホタルが増えました。優しい光がぽぅっと、8匹、少し暗くなってきた夜空に浮かんでいます。
子鹿も見に来ました。
ふぅっと息を吹きかけると、ホタルは夜空に飛んでいきました。
子鹿は木に近づきます。
子鹿をなでで、おやすみなさい、と言ってみましょう。
子鹿は帰っていきました。空もさきほどより、暗くなってきました。
木のそば、少し上を触って、ページをめくってみると…
夜空にいちばん星が光りました。そして、ゆっくり1,2,3,と数えてみると…
星が3つに増えました。
つぎに右のページを左から右へ触ってみます。
すると、流れ星が流れました。夜空によく目立っています。
今度はまばたきです。目を開くと、夜空にたくさんの星たちが瞬いています。
いちばん星はどれかな?
星と星をつなぐと、星座ができました。なんの星座でしょう?
お月さま、出ておいで、とささやいてみます。
すると、月が出てきました。ふくろうも登場です。
ふくろうが2羽、木にとまっています。木にとまったふくろうたちの頭をなでてあげましょう。そのうちに、寝る時間になってきました。
お月さまも移動しています。
おやすみなさい…。
夜のつぎは、新しい朝がやってきます。
ゆっくり目を開けると、素敵な朝、素敵な1日が待っていますよ。
☆際立った特徴
薄明るい背景の空から、読んでいるうちにだんだんと暗くなっていき、その様子が自然と眠りに誘います。生き物たちもいろいろ出てきて、みんな穏やかに夜を告げてくれています。
触ったり、息を吹きかけたりしてページをめくるという、読者参加型の内容です。
しかけ絵本とはまた違う作風で、ページをめくるたびに触ったところなどに変化があり、ゆったりとその変化を楽しみつつ、心が穏やかになっていくような描写です。
文章も優しく、読んでいる大人の方も、聞いているお子さんも、耳に温かく入ってくる響きです。
グラデーションのような背景の色に、切り絵のような木や鳥、ホタル、動物たちが描かれています。優しいタッチで癒やされます。
おやすみ前のふれあい時間に、おすすめです。
☆書店員の感想
●少し薄明るい空から、だんだんと暗くなっていく空。夜に向かっていきます。夜の素敵な風景が、穏やかな気持ちにさせてくれます。
もうすぐ夜です。
空の上の方がグリーンが混じったような青、下に行くと白が多い水色、そして薄ピンク、クリーム色、と優しい配色のグラデーションになっています。左側のページに木が立っていて、ページが進んでも木は変わることなく立ち続けています。
空の色がだんだん濃くなっていくので、夜に近づいているのが感じられます。
優しく光るホタル、それを見つめる子鹿と木。子鹿も薄い和紙のようなもので切り貼りされているように見られます。ふんわりとして穏やかな印象です。
ページを触り、星がだんだん見えてきます。
流れ星や、満天の星空も胸に響くものがあります。星座も見え、実際に夜空を見ているかのような気持ちになってきます。お月さまもはっきりした描き方ではなく、まわりがぼんやりとしていて、温かく見守られているような雰囲気です。夜のふくろうたちにもおやすみを告げて、目を閉じると…
次のページでは真っ暗な夜になりました。ページ全体が真っ黒で、白い文字で「しぃ〜」とだけ描かれています。ここで自然と眠りにつくかもしれませんね。
そのあとで訪れる新しい朝にも、希望の気持ちが湧いてくるように感じました。
子どもも実際に触って、不思議がりながらこの絵本を楽しんで読んでいました。触ったり、息を吹きかけたりしてから次のページの変化を見ることで、自分が魔法をかけて変化させた気分になるように感じました。木や花が変わらない位置にあるので、変化にもパッと気づきやすいように描かれています。
●耳から入ってくる日本語のひびきも心地よく、優しいイラストとともに落ち着いた夜へ、そしてまた新しい爽やかな朝へと素敵な時間が流れます。
この絵本は、サンフランシスコ在住のクリスティ・マシソンさんが書かれた本です。自然との関わりや毎日の食事など、ナチュラルな生活を提案する本を書かれています。そのような素敵な本を、ミュージシャン&マジシャンの大友剛さんが翻訳されました。
夜空を中心とした変化と、その絵に合う素敵な言葉を楽しむことができます。
書き出しの文章が特にステキで、心にジーンと響きました。毎日、私達は無意識の中で、朝が来て、夜が来る、そしてまた次の朝が来る、という中で生活しています。けれど、その自然の流れを「奇跡の時間」と表現されていて、まさにそうだなと改めて感じました。
そのことを心にとどめ、この本の空の移り変わりを見ていると、夜空のステキさやありがたみ、朝がくることへの感謝や新しい朝の爽やかさをじんわり感じることが出来ました。
文章が話し口調で優しく書かれていますので、「かぞえてみよう」「ふえたね」「せーの」など、お子さんに語りかけるように自然とお話ができます。ゆったりとお話して、絵の変化を楽しむ、そんなステキなひとときを過ごせるように思いました。また、背景が絵の具のようにグラデーションになっていて、その変化に夜空の移り変わりを感じます。登場してくる生き物たちも穏やかで、和紙のような透き通ったような材質の紙を切って貼り合わせ、形にしています。ふんわりと優しい印象です。
そして、本のカバーの絵と、本の本体の表紙・裏表紙の絵が違っています。カバーには動物たちがにぎやかに描かれていて、本の本体の表紙にはお月さまがふんわり、裏表紙には木にとまっている2羽のふくろうがいます。カバーをはずしても、カバーとはまた違うステキな雰囲気になっているように感じました。
お子さんの寝かしつけにもおすすめですが、寝る前に大人もホッと一息つけるような、そんな内容に思います。
●寝かしつけ、というと、1日の最後の大仕事だったりもしますね。そう感じてしまうような時間も、素敵なものに変えてくれるような絵本です。
我が家の息子たちは、4歳離れているので、一緒の本を寝る前に読んで眠りに…ということはあまり出来ずに過ごしています。長男は小学2年生なので、疲れているのかベッドに入ったらバタンキューですぐ熟睡しています。もうすぐ4歳の次男はお風呂上がりに、開いた絵本を立てて並べて円にし、その中央に座って、並べた絵本を順番に読んでいくのがマイブームのようで、自分で好きなように読んでいっています。けれど、寝る前に好きな絵本の世界に入るのが良いのか、少し寝付きが良くなったように思います。
長男が小さい時は、寝る前に必ず好きな絵本1冊持っておいでと言って持ってきてもらい、一緒に読んでから「おやすみ」と言って眠るのが日課でした。大抵私が先に寝落ちしてしまうので、長男がいつ眠りについたのかわからないときもありましたが(笑)、それがルーティーンのようになっていました。
この絵本も、眠りの世界にゆったりと連れて行ってくれるような雰囲気で、夜空の変化や夜の生き物たちと楽しく触れ合えるような内容です。
次男もこの本を読んで、触ったり、息を吹きかけたり、楽しそうに行っていました。子鹿やフクロウをなでるときも、よしよし、と言いながら優しくそっと手を当てていました。ページが真っ暗になって、次の朝に進んだときも、文章を読む前に、「朝になったね」と、すぐに気がついていました。暗くなって、明るくなると朝がやってくる、毎日やってくる流れが自然と身についているんだなぁ、と感じました。
優しいお話に、穏やかな描写の絵。夜が深まっていくようすに、自然と眠りに引き込まれてリラックスしていくような気がしました。夜の眠りの前のひとときに、おすすめです。
- 作品名:さわってごらん!よるの星
- 著者名:作/クリスティ・マシソン 訳/大友 剛
- 出版社:ひさかたチャイルド