へびくんのおさんぽ

ユーチューブ動画で保育士書店員が詳しく解説しています

のんびりマイペースなへびくん。だけど、優しさがたくさん溢れています。可愛い絵と、ほのぼのとしたストーリーに、心癒されます。相手を思いやるという気持ちと、ゆったりマイペースの良さを伝えたいときにピッタリです。

☆3つのおすすめポイント

  1. へびくんがマイペースに散歩をしています。そこへ出会った水たまり。自分一人がまたいで通るのは簡単ですが、へびくんがとった優しい行動とは…?へびくんの優しさに心が温まります。
  2. 絵の具で描かれたようなほのぼのとした絵に、へびくんの優しさをさらに感じるようです。優しいへびくんから見える世界は、こんなふうに優しく見えるのかもしれません。
  3. へびくんの自己肯定感から、前向きな気持ちにさせてもらえるように感じます。へびくんと一緒に、楽しいお散歩はいかがですか。

☆あらすじ

オレンジ色のへびくんがお散歩しています。

長い雨がやっとあがり、お散歩日和です。

ところが、しばらく進むと、道の真ん中に水がいっぱいたまった水たまりができていました。へびくんはびっくりしています。

へびくんは体をくねらせて、水たまりをこえようとしました。

すると、そのとき…。

小さい虫や生き物たちが、「背中を渡らせてもらえませんか?」とやってきました。

アリ、かたつむり、トカゲ、ねずみたちがぞろぞろとへびくんの上を渡っていきます。

小さい生き物たちは、お礼を言ってお別れをしました。

へびくんが「まだ渡りたい人、いませんか?」と聞くと、「それでは、渡らせてもらえないかな」と、さらにやってきました。

しかし、渡り始めたのはなんと大きなおおかみ・ライオン・ぞう!

へびくんはなんとか頑張って踏ん張りました。

ふーっと息をつき、よく頑張った、と自分を褒めるへびくん。

もう、渡る人はいないかな?と、その場を離れようとしたへびくんですが、いっぱい頑張ってのどが乾いたへびくんは、水たまりの水を全部飲み干して行きました。

へびくんの体は、水でたぷんたぷんです。

鼻から噴水のように水が出ていますが、そのままお散歩を続けるへびくんでした。

へびくんのおさんぽ 表紙

☆際立った特徴

マイペースなへびくん。ゆったり散歩をして、水たまりを見つけます。

小さい動物を助ける優しさと、大きい動物の重さにも耐え、さらに平常心で散歩を続けるへびくんのマイペースさに本当の優しさ・穏やかさを感じることができます。

絵の描写もほのぼのとしていて、読んでいて穏やかな気持ちにさせてくれるようです。

絵本の大きさは22.6㎝×21.3㎝で、軽く広げた大人の両手分の大きさです。

☆書店員の感想

●へびくんがマイペースに散歩をしています。そこへ出会った水たまり。自分一人がまたいで通るのは簡単ですが、へびくんがとった優しい行動とは…?へびくんの優しさに心が温まります。

へびくんがお散歩に出かけました。すると、道の真ん中に大きな水たまりが。

たくさん降った雨で、水がたまったのでしょうか。向こう側に渡るのが少し大変そうな大きさです。

けれどへびくんは、自分の体の長さを活かし、体をぐーんと水たまりの向こう側へのばして、そのまま乗り越えようとしていました。そのようすが横から描かれています。そして、へびくんが体をのばして向こう側に顔をつけ、しっぽを離そうとしているときに誰かから話しかけられる…そんなお話の流れが、漫画のように描かれています。ページを4分割して、読む順番に1~4の数字が描かれていて読みやすいです。漫画のように4分割されたあとには見開き2ページ分に、橋のように水たまりの端から端へ体をかけたへびの上を、ぞろぞろと小動物たちが歩いている姿が描かれていて、なんだか可愛らしいです。

渡っている生き物たち、みんな嬉しいような、楽しいような明るい表情をしています。へびくんもにっこり誇らしげです。たくさんの小動物のピンチを救ったへびくん、かっこいいですね。

可愛らしい小動物たち、へびくんにきちんとお礼を言って渡っていきました。

もう渡る人いないかな、そんな優しい心配をしているへびくんに、なんと最大の難関がやってきます。

なんと、次に渡りたいと言ってきたのは、へびくんよりうんと大きい動物3匹でした。

おおかみに、ライオン、ゾウまで。水たまりなんてちょっとの一歩で乗り越えられそうな大きさの動物たちですが、へびくんの上をどしんどしんと通って行ってしまいました。

へびくんも、重さにまいって目がぐるぐる回っています。そしてそんな大きな動物たち、お礼も言わずに去って行ってしまいました。なんだかへびくんがかわいそうに思えてきてしまいます。

けれどへびくんは、自分自身に「よく頑張った」「えらい」と声をかけて、気持ちを立て直しました。そしてまた、もう渡る人いないかな、とさらに心配してから最後に水たまりを渡りました。そして、のどが渇いた、と水たまりの水を全部飲んでいきました。水たまりの水が全部なくなり、次にだれか来てもなんとか渡れるかもしれませんね。

飲んだ水でたぷたぷの体をゆっくり動かしながら、へびくんはまた散歩を続けました。鼻からは水の噴水が出て、表情は穏やかです。

●絵の具で描かれたようなほのぼのとした絵に、へびくんの優しさをさらに感じるようです。優しいへびくんから見える世界は、こんなふうに優しく見えるのかもしれません。

へびくんはオレンジ色の体に、青色のだ円のような模様が入っています。体の下半分は薄いオレンジ色になっていて、全体的に地面と似た色です。地面もオレンジ色に濃い青色の点がいくつも描かれ、地面より上の空のような背景は、白の背景に青い短い線がいくつも描かれているのが特徴です。どのページもこの背景が続いています。

また、木や山、草などの描写も抽象的な感じで描かれていますが、ほのぼのとしていて、マイペースなへびくんにぴったりの世界観のように感じました。みんなを快く助けてくれたへびくん。そんな穏やかな心の広いへびくんから見ると、こんな優しい世界が広がって見えているのかな、と感じました。

また、へびくんは全ページ、ほとんど横からの表情しかありません。けれど、小動物たちを渡らせてあげているときの優しい表情、大きな動物たちを通しているときのビックリ・苦しそうな表情など描き分けられていて、その時々のへびくんの気持ちや状況が伝わって来るようです。大きな動物たちに踏まれてしまっているときは、口から長い舌が出て、動物が大きくなるごとに表情が険しくなっていっています。へびくん、大丈夫かな!?と見ているこちらも、ドキドキ・ハラハラ…自然とへびくんの応援をしたくなってきます。

●へびくんの自己肯定感から、前向きな気持ちにさせてもらえるように感じます。へびくんと一緒に、楽しいお散歩はいかがですか。

大きな動物に踏まれてしまったへびくん。押しつぶされてしまいそうなへびくんが心配になりますが、重さにもしっかり耐えた、力のあるへびくんですね。へびくんの力持ちなところにもビックリしました。そして頑張ったあとに、自分で自分を褒めるへびくん。「よく頑張った」「えらいえらい」と、自分自身に声をかけています。

何かで、「つらい時こそ鏡を見て笑うと良い」と言うことを聞いたことがあります。誰かに褒めてほしい、と思って頑張ることもありますが、褒めてもらえることばかりじゃありません。そんなとき、自分の頑張りを一番知っているのはやはり「自分」ですね。

自分でありのままの自分を認めてあげる。へびくんも、目をぐるぐるさせて倒れているときに、お礼も言わず歩いて行ってしまった大きな動物たちの後ろ姿を見て、何か思っていることがあるかもしれません。このページの描写は、へびくんに対して切ない気持ちがこみあげてくるワンシーンに感じました。けれどへびくんは、一息ついて気持ちを整えます。

力持ちで体も強いけれど、へびくんの優しさで詰まったハートが、一番強いのかもしれないと思いました。大変だったけれど、気持ちが乱れないハートの持ち主のへびくん。見習いたいです。

そしてまたマイペースに散歩を始めたへびくんですが、水たまりの水を飲み干すことで、まただれかのためになっているのかもしれませんね。もしかしてあとからだれか来て、水たまりがこのままあったら困ってしまうのでは…、と少し心配に思ったへびくんだったのかもしれません。

裏表紙には、へびくんの鼻から出す噴水の上で遊ぶカエルの姿が描かれています。へびくんのすることで、いろんな生き物の楽しさや嬉しさにつながっているんですね。

相手を思いやり、最善のことを手助けしてあげられる優しさ、つらいことがあっても自分で気持ちを立て直す穏やかで強い気持ちを、この絵本から自然と感じることができるように思いました。へびくんと一緒に、穏やかで優しいほのぼのとしたお散歩に出かけてみてはいかがでしょうか。とても楽しそうで、心が温まるように思いました。

へびくんのおさんぽ 裏表紙
にむさん
  • にむさん
  • 現在4年生と年長の男の子、1歳の娘の育児に奮闘中です。
    兄が弟に、さらに最近では弟が妹に絵本の読み聞かせをしてくれるようになりました。子どもたちの姿から学ぶことも多い日々です。
    短大で介護の勉強をし、介護福祉士の資格を持っています。