ぼくのえんそく
普通の遠足より、もっと特別な楽しい遠足!?遠足シーズンにピッタリ!冒険が大好きなお子さんにもおすすめです☆
☆際立った特徴
- 遠足に行けなかった『ぼく』が主人公。
- 遠足に行けなかったぼく、そしてそのまわりの『気持ち』が分かるようになった『ぼく』。
- 行けない悲しみよりも、強くインパクトのある冒険。特別な遠足が体験できます。
- ファンタジーなお話が引き立つイラスト。迫力や笑いが満載。
- ものや人へのいろいろな『気持ち』を考える視点を得るきっかけにも。
☆読み聞かせのアドバイス
- 遠足に行くってワクワクですよね。そんな気持ちを思い出しながら、ページをめくり始めてみてください。
- ぼくが、いつもとはちょっと違う『ぼくのえんそく』へ向かいます。ジュースや虹などいろんな気持ちがあるんだね。みんなどう思っているかな、親子で話してみましょう。
- もしこんな遠足ができたら?楽しい遠足への想像が広がります。
☆あらすじ
とっても遠足を楽しみにしていた『ぼく』。しかし、遠足当日、ぼくは熱を出して寝込んでしました。
こんなんじゃ遠足に行けないけれど、行きたかったなぁ…
そう思っていると、行きたいぼくの『気持ち』が、体からにゅっと抜け出しました。
そして、遠足に行くことにしました。
すると、不思議です。いつもはねこの気持ちが分からないのに、いまは分かります。
一緒に遠足に行きたいんだね。一緒に行こう。ねこも連れて行くことにしました。
さらに、冷蔵庫のジュースの気持ちも分かり、水筒に入れていくことに。
そしてあまぐもの気持ちも伝わり、ぼくはあまぐもに乗ってみんなのいる遠足の場所へと向かいました。
あまぐもが進み、バスに追いついたところで、おひさまがやってきました。
あまぐもがいては、子どもたちの遠足が楽しめないと、おひさまはあまぐもを通せんぼしました。負けじとあまぐもも押し返しますが、押し問答。あまぐもがどんどん疲れてきてしまいました。
そこで、ぼくは水筒に入れてきた特製ミックスジュースをあまぐもに飲ませてあげました。
すると、あまぐもからいろんな味のジュースの雨が降り注ぎました。
するととってもカラフルな雨が降り注ぎ、子どもたちも大喜び。あまぐもも泣き止んで、白い雲になりました。
ジュース色の虹の橋もかかり、その下でお弁当。とっても楽しい遠足で、大満足で帰ってきたぼく。
遠足にはお休みしましたが、実はとびっきり楽しい遠足を満喫したぼくなのでした。
すると、あまぐもからいろんな色の雨が降ってきました。子どもたちも大喜びです。
あまぐもも泣き止み、真っ白な雲に変わりました。そして、空にはジュースの色をした虹がかかりました。
にじの橋の下でお弁当を食べて、すっかり満喫したぼくは、本当のぼくのもとへ帰ってきました。

☆書店員の感想
・遠足に行けなかった『ぼく』。遠足に行きたい気持ちが強くて…。行けない悲しみよりも大きくなった冒険。特別な遠足が体験できます。
遠足や運動会、学校の特別なイベントや家族との楽しいお出かけなど、とっても楽しみにしているときに限って…、体調不良だったり、悪天候になってしまったり。そんなことってありますよね。
この絵本のタイトルは、『ぼくのえんそく』です。みんなと一緒にワクワク楽しい遠足に行ったお話かと思いきや、体調が悪く遠足に行けないぼくの登場からお話が始まります。
みんなと行く遠足も楽しいですが、それ以上の特別な『ぼくのえんそく』が始まりました。
ぼくの体から『きもち』が抜け出して遠足に出かけるって、とってもユーモアたっぷりなお話ですよね。お子さんが大好きな想像膨らむお話だなぁと感じました。
ぼくが遠足に行けない悲しみより、壮大な冒険になります。特別な遠足の体験ができますよ。
・遠足に行けなかったぼく、そしてそのまわりの『気持ち』を汲み取った『ぼく』。ものや人へのいろいろな『気持ち』を考える視点を得るきっかけにも。
まずぼくの、遠足に行きたい『きもち』がぼくの体から飛び出します。そのあとねこやジュース、あまぐもといった、いつもは分からないものや生き物のきもちも分かり、ぼくはそのきもちに寄り添い、一緒に遠足を楽しみます。
遠足に行きたいねこ、水筒に入れてほしいジュース、遠足ではうとまれるあまぐも…。
みんなみんな遠足が大好き。遠足に行けていたらきっと気付けなかった。今日、遠足に行けなかったから、この残念で悲しい気持ちがとってもよく分かる… ねこやジュースは本当は遠足に一緒に連れて行ってあげられないけれど、今日は特別な『ぼくのえんそく』だから、一緒に連れて行こう、そんな風にぼくが思っているように感じました。
いつも自分が当たり前のように感じている感情も、実は反対の感情もあって、それはその立場になって初めて感じるときが多いですね。そして、感情があるかないか分からないけれど、もしかしたらほかの生き物やものにも感情があって、実はこう思っているんじゃないかな、など、そういった視点を持つことにつながるように感じました。
そして、もし自分がこのお話のぼくのように、なにか思ったように楽しめないときがあっても、ちょっと見方を変えることで実は楽しめることも多いのかもしれないように思いました。

・ファンタジーなお話が引き立つイラスト。カラフルでどっしり、ときにはしっとり、軽やかに…。場面ごとに絵の具で描きわけられています。迫力や笑いが満載。
熱が出て真っ赤な顔をしているぼく。そんなぼくから『きもち』が飛び出します。そのときの背景が黒色で、黄色や紫色、赤色などの色が散りばめられた中でぼくのきもちがにゅっと描かれていて、元気よく飛び出してきた感じが伝わってきます。
水筒に入っていくジュースたちも6色が一気に水筒に入り、中でどう混ざりあっているのかが気になります。
また、見開きいっぱいに描かれたおひさまの勇ましい表情。あまぐもと押し合うところでは、本のページの向きが90度回転し、本を縦にして見る場面があります。ここは一番迫力と熱気を感じます。
そしてあまぐもから降ってくる色鮮やかなジュース色の雨。空にかかったジュースの虹。その下には一緒に遠足に行くはずだった子どもたちの姿があって、高いところに大きな虹がかかっているようすが、迫力もあり、のびのびとした楽しい雰囲気で描かれています。ぼくが空を飛んでいるときもそうですが、下のほうに街の人たちや子どもたちが描かれていて、細かく個性豊かに描かれているところもありますので、ぜひじっくりすみずみまで見てみてください。意外な発見があるかもしれません。
また、この『ぼくのえんそく』は夢なのかな、とお話を読んでいると思いそうですが、最後に集合写真が描かれていて、その雲の上にぼくとねこ、水筒が写っています。みんなは残念だったねと声をかけてくれますが、ぼくには写真に写っているぼくがしっかりと確認できます。もしかしたら他の人には見えないのかもしれません。本当のところは分かりませんが、実際はどうなのかな…と最後考えさせる余韻も感じられますし、細かなところまで面白要素がたくさんつまっているなぁと感じました。集合写真には『みんなのえんそく』とも描かれています。みんなとの対比もありますし、ぼくのえんそくの登場人物たちもみんな集合していて、とても濃い写真です。絵本を読んでいるこちらも、何度見ても楽しめる写真の絵だなと思いました。
遠足って、なんだかワクワクドキドキ…。とっても楽しみですよね。
このお話のような特別な遠足も、一度体験してみたい…そう感じる楽しさがたくさん詰まった絵本のように感じました。
絵本を読み始めるときはぜひ、遠足に行くときのワクワクを想像しながらページをめくってみてください。『ぼく』の気持ちがよく伝わってくるように思います。
また、どんな遠足に行ってみたいかな?遠足でどこに行きたい?遠足でしてみたいことって何かな…?等、お子さんと話しながら読むと、さらにお話や遠足への想像が広がるように感じました。
作品名:ぼくのえんそく
著者名:作・穂高順也 絵・長谷川義史
出版社:岩崎書店