めっきらもっきら どおん どん
かんたは、ひょんなことから不思議な世界に吸い込まれ、おかしな3人組と楽しく過ごします。とっても不思議、だけどとびきり楽しいへんてこな世界。大人も子どもも一緒に楽しむのにおすすめの絵本です。
☆3つのおすすめポイント
- かんたが出会った、異空間。神社で歌っためちゃくちゃな歌が始まりでした。おかしな友達3人組と素敵な時間を過ごしたかんた。けれど最後はちょっぴり寂しくなって…。不思議な世界に不思議な友達。かんたと一緒にファンタジーを存分に楽しめます。
- おかしな3人組と出会った、日常とは違った空間、3人組の迫力ある描写が、とても印象に残る絵本です。迫力満点です!
- 35年前から愛され、読み継がれている絵本。現代の子どもたちにも楽しく読まれています。親子で異空間体験が楽しめます。
☆あらすじ
かんたは、天気のいい日に一人歩いています。ですが、遊ぶ友達が誰もいません。
神社まで来ましたが、誰もいませんでした。
しゃくに思い、かんたはめちゃくちゃの歌を大声で歌ってやりました。
「ちんぷく まんぷく… めっきらもっきら どおんどん」
すると、強い風が吹き、風と共に奇妙な声が聞こえてきました。3人の声のように聞こえます。
穴の中から声が聞こえてきたので、かんたは覗き込みました。すると…
穴に吸い込まれて、くるくると落ちていきました。
かんたは、夜の山に着きました。すると、向こうからへんてこりんな3人組が飛んできました。
へんてこりんな3人組は、かんたにとびかかって自己紹介を始めました。
もんもんびゃっこ、しっかかもっかか、おたからまんちん、という名前の3人組です。
かんたが、ばけものなんかと遊ぶもんか!と言うと、3人は大きな声で泣き始めてしまいました。しかたなく、かんたは一緒に遊び始めることにしました。
じゃんけんで遊ぶ順番を決めて、まずは、しっかかもっかかと遊びます。ちょっと小柄な女の子のようですが、空を飛べるようです。かんたの首に風呂敷を巻いて、モモンガーごっこをして汗びっしょりになり、楽しみました。
つぎは、おたからまんちん。ふくよかな体と、長い眉とひげが特徴のおじいちゃんのような風貌です。持っているお宝のたまを広げて、好きなものと交換してくれるようです。かんたはビールのおうかんをあげました。すると、おたからまんちんは「ビール王様の冠」と思ったようで、喜んでかんたには不思議な水晶玉をくれました。中にはきれいな海が見えます。
そして次は、もんもんびゃっこです。なわとび名人のもんもんびゃっこと、大笑いしながらなんと135回も縄跳びをして楽しみました。
さらにみんなで、空飛ぶ丸太に乗って遊びました。みんなはすっかり友達です。
たくさん遊んでお腹が空いたので、お餅のなる木を見つけて、お腹いっぱいお餅を食べました。ほっぺたが落ちそうなくらいに美味しいお餅です。
お腹がいっぱいになると、3人は眠ってしまいました。しかしかんたは一人で月を見ています。
なんだか心細くなってきて、だんだん我慢ができず、夜空に向かって…
「お、か、あ、…」と大きな声で叫ぼうとしたとたん!
3人は飛び起きました!
それを言ったらおしまいだよ!
言わないで!!
口を押さえようとしましたが、間に合いませんでした。
「おかあさーん!」
かんたの声が響き、夜空には日の光が差し込み、かんたはぐるぐると引き込まれて…
気付くと、かんたは神社に戻っていました。
ここはどこだろう?そう思っていると、お母さんの声がしました。かんたは駆け出しました。
あれからまた神社に行くけれど、あの声は聞こえないし、あの歌もどうしても思い出せない…、また会いたいな、と考えるかんたなのでした。
☆際立った特徴
1985年に月刊誌で発行され、1990年に単行本として出版された絵本です。
大人の方の中には、懐かしい!と思う方もいらっしゃるかもしれません。私もその中の一人です。不思議な体験をしたかんたと、楽しいへんてこな3人組。
不思議な世界での体験や、非日常の空間を素敵な絵で表現されています。子どものときには、一度は想像したことがあるかもしれないようなファンタジーの世界観が広がっています。私も、この不思議な世界を、絵本を読んで何回も体験しました。大人になって改めて読み、懐かしさと当時の思いがこみあげてきました。大人も子どもも一緒に楽しめる絵本です。
また、3人組の個性と迫力がすごいです!絵の描写もすてきなので、どんどん引き込まれていきます。
絵本の大きさは20㎝×27㎝の横長の大きさですが、途中で縦向きに見るページもあったりと、いろんな角度から楽しめる絵本です。
☆書店員の感想
●かんたが出会った、異空間。神社で歌っためちゃくちゃな歌が始まりでした。おかしな友達と素敵な時間を過ごしたかんた。けれど最後はちょっぴり寂しくなって…。不思議な世界に不思議な友達。かんたと一緒にファンタジーを存分に楽しめます。
かんたは、天気のいい日に外に出ますが、誰にも会えません。神社にきても、なんとなくシーンとしていて、歩いてきた町のなかもしんと静まり返っているように感じました。
かんたはめちゃくちゃな歌を大声で歌います。
この歌の最後に出てくる「めっきらもっきら どおんどん」という言葉が、絵本のタイトルになっています。とても面白い言葉だなと思いました。この「めっきらもっきら」という言葉は、この絵本を描かれた長谷川さんのインタビューにあるのですが、息子さんの保育園の送り迎えをしていた時に生まれた歌の言葉なんだそうです。自作で歌を考えて楽しむってとてもユニークですてきですね。
絵本の中の会話や、かんたが木の中に吸い込まれていくときも「おちる…おちる…、」とかんたと一緒に文字が落ちていくように描かれていたり、おばけたちが泣いている声など、出てくる言葉もユニークで面白く感じます。どんどん声に出して読みたくなる文章に思いました。
始めはばけもの!と3人組に対して思っていたかんたですが、順番に遊ぶことになり、一緒に遊ぶうちにどんどん仲良くなっていきます。始めの印象と、実際遊んでみては全然違うことってありますよね。空を飛んだり、不思議な水晶をもらったり、月に届きそうなくらい高くジャンプしてみたり…。どのページも和気あいあいとしていて、まるで読んでいるこちらも一緒に遊んでいるかのような楽しい気分になってくる描写です。みんなにっこにこ、友達と食べるお餅も、さらに美味しく感じたでしょうね。
お腹がいっぱいになると眠ってしまった3人組でしたが、かんたは遊びから少し落ち着き、ふと我に返ったのでしょうか。月を見つめて寂しくなってきます。楽しい空間でしたが、やはり帰る場所はお母さんのもとなのでしょうね。
たまらず「おかあさん」と叫んでしまったかんた。かんたの口をおさえようと必死に頑張る3人でしたが、間に合いませんでした。3人もまた、新しい友達との楽しい時間が終わってしまい、寂しく思っているのかもしれません。まだまだこれからも遊びたくて必死に口を押さえて止めようとしたのかもしれません。
かんたはあっという間に光に吸い込まれ、元の世界に戻ってきました。
不思議な体験、もう歌は思い出せないけれど、最後のページのかんたの手元にはビー玉のようなものが。かんたはおたからまんちんにもらった水晶球は持っているようですね。
また会いたいけれど会えない、もどかしい気持ちがつのります。読み手も、不思議な体験の余韻が残るような感じがしました。
●不思議な友達と出会った、日常とは違った空間、おかしな3人組の迫力ある描写が、とても印象に残る絵本です。迫力満点です!
表紙はなんだか、こわそうな印象を受けます。かんたが耳に手をあてて歩いていますが、そのうしろではなにやらあやしげな黒い影…。裏表紙はその黒い影がつながっていて、手招きをしているようにも見えます。
しかし、内容はこわくはなく、むしろ異空間を思いっきり楽しむファンタジー溢れるもののように思いました。
かんたが神社でおおきな声を出して歌い、木に吸い込まれて落ちていきます。このときの絵も、吸い込まれて下のほうへ落ちていくようすが2ページつながって描かれていて、自分が本当に落ちているような、違う世界へ飛ばされているようなそんな感覚がします。
着いた先の夜の世界も、少し不気味な感じがしますね。
そして飛んできた3人。ページを開くと、ドドーン!!と3人がドアップで近づいてきて自己紹介を始めますが、かんたに思いっきり近づいているような目線で描かれていて、この3人の迫力がすごいです!私も小さいときにこの絵本を何度も読んだのですが、もんもんびゃっこの黄色い目に黄色い歯、ネコのような顔立ちが一番印象的で、忘れられませんでした。しっかかもっかかはオレンジ色のような長い髪に、ちょっと小さな女の子のような感じ、おたからまんちんはふくよかなおじいちゃんのような見た目で、長い眉とひげが印象的です。
この3人は、絵を描かれた降矢さんが、日本の民話からイメージを膨らませてキャラクターを考えたそうですよ。インタビューに書かれているのですが、はじめは名前も違うものにする予定だったそうで、作者の長谷川さんとお話をして、今のかたちになっていったそうです。そして、私が印象的に思っていたもんもんびゃっこは、「キツネ」だそうです。なるほど!と思いました。(笑)
そのような個性的な3人ですが、その個性が存分に描かれているような絵の描写に、どのページも惹かれます。3人が泣いているところは、もんもんびゃっこの足が長いこと!みんなでわんわん泣いている声が聞こえてきそうです。けんかや飛んでいるシーンも躍動感が感じられます。
おたからまんちんの水晶玉を覗くシーンがとても好きなのですが、暗い中に、水晶玉の光がぽうっと浮かび、もんもんびゃっことしっかかもっかかもとなりで水晶玉を覗き込んでいます。水晶玉はビー玉より少し大きいくらいの大きさで、中にはサンゴや黄色の魚がうつっています。神秘的で素敵な雰囲気の絵だな、と思いました。私も小さいころ、この絵で子ども心に水晶玉への憧れが膨らんだことを覚えています。(笑)
もんもんびゃっこと縄跳びをするところでは、ページが縦向きになっています。縄跳びが月にひっかかるように上へのび、高く二人で飛んで楽しんでいます。すごいジャンプ力が絵から伝わってきて、とても楽しそうです。
丸太遊びの勢いもすごいですし、お餅のなる木のお餅も美味しそう!食べているみんなの美味しそうな姿にも惹かれ、「ふうわり あまくて、ほっぺたがおちそう」という文章から、どんなお餅の味だろう、とよく想像していました。(笑)
絵は水彩画のように描かれていて、不思議な空間の感じや、3人組の雰囲気・勢いのある描写もとても印象的に表現されています。見れば見るほどに目に焼き付いていくような感じがします。
●35年前から愛され、読み継がれている絵本。現代の子どもたちにも楽しく読まれています。親子で異空間体験が楽しめます。
私の実家に、いつのころからかあった絵本が、この「めっきらもっきら どおんどん」でした。実家はかんたの住んでいるところよりもっと田舎でしたので、まわりに遊ぶ友達がいないというのは毎日でした。姉弟で遊んでいましたが、この絵本の世界に浸って遊ぶのも好きで、よく読んだ後に山に遊びに行っては、あの絵本のような世界につながるところはないのかな、と思っていた幼少期でした。(笑)
ですので、久しぶりに読んで、あの当時の記憶が不思議とよみがえって来ました。不思議なことに、登場人物の名前も覚えているものなのですね。
そして、今度は長男が「この本、保育園で読んだことあるよ、面白いよね」と言っていました。世代を超えて愛される絵本なんだな、と実感しました。
そして3歳の次男も、これ読んでと持ってきて、少し長めのお話で途中興味がないと終わらせてしまうこともあるのですが、絵の迫力や魅力を感じたのか、最後までじっくりと聞いていました。次男はおたからまんちんが好きみたいで、「おじいちゃん!」と喜んで指をさして言っていました。(笑)
一度読むとクセになる、とっても楽しい絵本・ファンタジーの世界だと思います。不思議な世界で楽しんでみたい方、ぜひ読んでみてください。
- 作品名:めっきらもっきら どおんどん
- 著者名:作/長谷川摂子(インタビュー) 画/ふりやなな(インタビュー)
- 出版社:福音館書店