バナナこどもえん ざりがにつり
3歳頃からの読み聞かせにピッタリ!ザリガニと子ども達の釣るか釣られるかの真剣勝負!!子ども達が1匹のザリガニをめぐってケンカしますが・・・子ども達の心の成長を強く感じるストーリー。
☆読み聞かせ・声掛けのポイント
- 登場する子ども達の様々な感情を感じる作品です。ぜひ「この時どう思っているのいるんだろうね」とカッキーやあー君の様子から感じ取ってみましょう。
- ザリガニ釣りって楽しそうだね!やってみたいね!と、現実に結び付ける声掛けをしましょう!ザリガニ釣りへ行く前の読み聞かせにもピッタリ!細かい描写で描かれているのでシミレーション出来ます!
- あー君とカッキーのケンカの場面。自分だったらどうする?と考えてみましょう!
☆際立った特徴
- 水彩絵の具で描かれている。人物・背景の全てから温かみを感じます。
- ザリガニ釣りに出かける子ども達。ザリガニ釣りを楽しむ様子は力強さや迫力があり!
- 子ども達の真剣な目付きや「釣ってやるぞ!」という姿勢は、どの子も本気を感じます。
- 対するザリガニも、エサは食べたいが、決して人間に捕まるまいとする姿が、まるで本物を目の前で見ているかのよう。
- 釣れたザリガニをめぐってケンカ。2人の中に流れる緊迫感が伝わります。
- 大人が介入して白黒つけるのではなく、温かく見守り、自分たちで解決できるように導く先生の姿もとても印象的。
- そんな二人が出した結論は?最後は素敵な約束を交わします・・・★
☆ピックアップポイント
- ザリガニ釣りに出かけたバナナ園の子ども達。どうやって釣るのでしょう?子ども達の、真剣な釣り姿と、捕まるまいとするザリガニとの戦いは、どちらも生き生きとしていて迫力があります!
- ザリガニを見つけたあー君と、捕まえてあげたカッキー。どちらが家に持って帰るかをめぐってケンカします。まだ言葉の未熟な子ども達。感情を、言葉だけではなく、顔・体の向きなどで表現しています。この時、どんな気持ちだったのか、どのページからも伝わります。
- 大人が正解を促すのではなく、自分たちでお互いが納得出来る方法を考えます。ケンカしたことで強い友情が生まれます。
☆あらすじと書店員の感想
ザリガニ釣りに出かけたバナナ園の子ども達。どうやって釣るのでしょう?子ども達の、真剣に釣りをする姿と、捕まるまいとするザリガニとの戦いは、どちらも生き生きとしていて迫力があります!
温かな夏の時期。子ども達は半袖で登園してきました。朝から、こんな日はザリガニ釣りに行きたいぞ!考えてきたカッキーが、一目散に友達や先生の所へ行き、「今日はザリガニを釣りに行こうよ!」と誘います。子ども達にとってザリガニ釣りは初めてではなく、何度か経験している事の1つで、とても楽しい事を知っている様子です。『僕も行きたい!』『私も行く!』と男の子も女の子も、行く気満々です。さあ水筒とリュックサックと、バケツと木の棒を持って出発です!!
木の棒は、ザリガニ釣りには必需品。棒に糸を結び、エサのスルメも結びつけます。するとザリガニ用の釣竿の完成です!
子ども達の目は、準備から真剣そのもの。エサを小川にたらしたら、ザリガニを上手くおびき寄せます。しかし、ザリガニもエサのスルメは食べたいけど、簡単に捕まるわけにはいきません。「これは罠だ!」と気づかれたら、逃げてしまいます。子ども達と、ザリガニとの戦いは、釣るか釣られるかの真剣勝負なのです!
言い出しっぺのかっきーは、上手く釣れずにモヤモヤ・・・とした表情。周りの子ども達が次々に釣っていく様子を、羨ましそうに見ています。
すると、目の前にザリガニがいるのにも関わらず、素手で捕まえられず、うじうじしているあー君の存在に気がつきます。
触るのが怖くて捕まえられないあー君を見かねて、かっきーは代わりに捕まえてあげるのですが・・・。
ザリガニを見つけたあー君と、捕まえてあげたカッキー。どちらが家に持って帰るかをめぐってケンカします。まだ言葉の未熟な子ども達。感情を、言葉だけではなく、顔・体の向きなどで表現しています。この時、どんな気持ちだったのか、どのページからも伝わります。
始めはかっきーも、「これはあー君が見つけたザリガニで、俺は採ってあげただけだ」と頭では分かっていた様子ですが、一変します。
なんと捕まえたザリガニはバケツの中で脱皮してしまうのです。かっきーは、ザリガニを自分のものにしたくてたまりません。そして、自分より年下の気の弱そうなあー君に対して、「お前は見つけただけで捕まえてないんだから、これは俺のだ!お前は脱皮した皮を持って帰ればいい!」と強い口調で主張します。
もちろんあー君は、急なことに驚き、反論も出来ず泣き出してしまいました。
しかし、周りの子ども達はその様子を見逃しません。あーでもない、こーでもないと、自分たちの考えを、かっきーに言います。
しかし、かっきーは、とにかくザリガニを自分の物にしたくて、更に睨みつけるように顔を赤くして、「絶対にあきらめない!!」という思いで、あー君を睨みつけます。
しかし、あー君も負けてはいません。言葉では返さないものの、涙を止めて、ただ困った顔でかっきーを見つめます。そして、次第にあー君は、冷静になって「もういいや。いらないよ。かっきーにあげるよ。」とポツンと言いました。
驚いたのはかっきーです。あー君の態度があまりにも冷静で、自分が急に情けないような、なんだか恥かしいような。急に負けた気分になり泣きさしそうな表情になるのです。
かっきーは、あー君より年上です。プライドがあります。4歳のあー君に譲られて、持って帰るわけにはいかないのです。
さあ、この後はどうなるのでしょう。
大人が正解を促すのではなく、自分たちでお互いが納得出来る方法を考えます。ケンカしたことで強い友情が生まれます。
そっと二人の様子を見守っていた園長のななこ先生です。二人の目線になるようにしゃがみ、『どうすることにした?』と、何も知らないふりをして二人に問いかけます。
すると二人は、釣った所に返しに行くことに決めました。先生が入って、お互いに冷静になって、互いにとって平和的で平等な選択が出来ました。
先生は二人の肩に手を置きながら、しっかり二人が考えて、答えを出せたことを喜んだでしょうね。ニッコリと笑い合うカッキーとあー君の間には、強い友情の絆が生まれたようにも感じるシーンでした。
そして次の日です。雨が降っているので、今日はザリガニを小川に返しに行くだけ。そこには二人以外にも、友達の姿がありました。二人が小川にザリガニを返す姿を見届ける為でしょう。そして、バケツをひっくり返した時、ザリガニがスイスイ―ッと子ども達から離れて川の奥へ泳いで行きました。『もう捕まるまい!』とでも思っているのでしょうか。
しかし、かっきーとあー君は、逃げていくザリガニを見つめながら「次こそは、自分で釣ろうな!」と約束します。
いつか、きっと約束が果たされる時がやってきますね・・・★
- 作品名:バナナこどもえん ざりがにつり
- 著者名:文 柴田愛子 絵 かつらこ
- 出版社:童心社