パパ、お月さまとって!
鮮やかな絵と、ダイナミックな世界観!仕掛け絵本になっていて、いろいろな変化が楽しい絵本です。子どもの好奇心がぎゅっとつまっているような、夢溢れるお話です。冒険心溢れるお子さんにピッタリ!
☆3つのおすすめポイント
- お月さまとって!と子どもにお願いされたらどうしますか?子どもの夢をそっと応援するお父さんと、好奇心旺盛な女の子がキラキラと輝いています。
- とってもカラフル!貼り絵で作られたイラストが、繊細だったり、迫力満点だったりと変化が面白いです。
- エリック=カールさんの世界観がとっても素敵です。色合いや仕掛けに、何度も見たくなる描写です。
☆あらすじ
ある晩、モニカは外を見ると、窓から見えるお月さまがとても近くにあることに気づきました。お月さまと遊べたらいいな、とモニカはお月さまに手を伸ばします。
しかし、手をいくら伸ばしても、お月さまには届きません。
「パパ、お月さまとって!」と、パパにお願いします。
すると、パパは長いはしごを持ってきました。
高い山へ運んでいき、長いはしごを山のてっぺんに立てて、
どんどん上へとのぼって行きました。
パパはお月さまに、モニカがお月さまと一緒に遊びたがっていることを伝えました。
けれど、大きくて持って帰ることができません。
するとお月さまは、「だんだん小さくなるから、ちょうどいい大きさになったときに取りに来てください」と話します。
お月さまは、だんだんと小さくなっていきました。
そしてパパは小さくなった月を取りに行き、ついにモニカのもとへ、小さくなったお月さまを連れて帰りました。
モニカはお月さまと遊び、飛んだり踊ったり、抱きしめたりしました。
しかしお月さまはその間も小さくなり続け、そのうちになくなってしまいました。
それから少したってから、モニカはまた空にお月さまが浮かんでいるのを見つけました。
細い銀色のお月さまです。
そして今度は、お月さまはどんどん大きくなって、最後に満月になりました。
☆際立った特徴
はらぺこあおむしでも大人気のエリック=カールさんの作品です。
娘さんが小さい頃に「パパ、あのお月さまとって!」と言われて、取れないことを娘さんに話したカールさん。当時の娘さんにはそのことを理解することが難しかったので、「月の本」を何冊か描いてみたそうです。すると28歳と大きくなった娘さんから、その当時のパパの月の本を見ていると、はしごを使って月へのぼっていくお父さんと一緒に、私の気持ちものぼっていって…、今では気分爽快!と、言われたそうです。そこで、このお話が作られたきっかけになったそうです。
娘さんを思うカールさんの気持ちが1冊の素敵な絵本となって、今度はたくさんの子どもたちをワクワクさせてくれています。
カラフルで迫力のある絵風に、お月さまを取りに行くシーンなどしかけ絵本になっていて、とても面白いです。
絵本は29㎝✕21㎝の縦長の絵本です。仕掛けを開くとその絵本の大きさより大きくなるところもありますので、迫力満点です!
☆書店員の感想
●お月さまとって!と子どもにお願いされたらどうしますか?子どもの夢をそっと応援するお父さんと、好奇心旺盛な女の子がキラキラと輝いています。
際立った特徴にも記述しましたが、著者のカールさんと娘さんとのやりとりがこの絵本の起源だそうですね。お子さんに、「お月さま、とって!」と言われて、「そんなことできないよ」と断ってしまうのは簡単です。できない理由を並べるのは大人は得意のように思います。けれど、お月さまを取るという子どもの好奇心に溢れた無邪気な夢は、今この一瞬にしか生まれないかもしれない。そんな子どもの気持ちを尊重して、絵本として作ってあげたカールさん。絵本の中では子どもの夢は無限大で、お月さまをとることができるし、一緒に遊ぶことだってできますね。
そんな風に、現実とは違ったかたちで娘さんの気持ちをかなえてあげたカールさんがとても素敵に思いました。
●とってもカラフル!貼り絵で作られたイラストが、繊細だったり、迫力満点だったりと変化が面白いです。
表紙をめくると、表紙の内側には色とりどりの星がページいっぱいに描かれています。色も形も模様も様々なところがとってもにぎやかで、満点の星空を見ているような、たくさんの個性のある子どもたちや、その子たちが持つ夢を表現しているようないろんなふうに見えてきます。
カールさんの絵は貼り絵で作られています。筆で色をつけた紙を切って貼り合わせているようで、指の1本1本や、月に上る小さなお父さんも細かく切って作られていますし、大きな月や山のごつごつとした感じも、切り絵の切り口や、重ね合わせた部分を活かして表現されています。
また、背景はお月さまが出ているので夜の設定なのでしょうが、真っ暗闇のような黒い描写ではなく、濃い青と黒が混ざった絵の具を筆につけ横に滑らせたような、横に走る筆の線が特徴的な夜空になっています。
そして、絵の中ではペタッと塗りつぶされている部分がほとんどなく、木も家も草もすべて独特の模様のような色がつけられた紙を切って作られています。そうして色を幾重にも重ね、いろんな色が使われている絵から重厚感や躍動感などを感じることができます。
最後に月が再び大きくなった絵では、2ページにわたって全体にドーン!とお月さまが描かれています。このお月さまも白とグレーと水色が重ねて塗られ、立体感のあるお月さまです。実際に目の前に月があり、お月さまを触れるような、身近に感じられるような描写のように感じました。
●エリック=カールさんの世界観がとっても素敵です。色合いや仕掛けに、何度も見たくなる描写です。
お父さんはお月さまをとって、と頼まれたあと、お月さまに届くくらいに長いはしごを用意します。このときのページがしかけになっていて、本を開いたページの中心からそれぞれ左右にページを開き、横にそれぞれ広がるようになっています。(扉を開くような、観音開きのような感じです。)しかけになるところは月の絵等は描かれておらず、開く方向に矢印が描かれていますので、めくりやすいと思いました。
そして開くと本当に長~いはしごなので、驚きです!
そして次には、そのはしごを使って月に向かってのぼっていくページも、しかけになっています。下から上に向かって開くしかけになっていて、しかけをめくると縦にページがのび、お父さんがだんだんとお月さまに向かって上っていく様子が描かれています。
現実にはありえないようなようすですが、上へ上へと上っていくお父さん。たくましくてかっこよく感じます。
そして、月に到達したお父さんとお月さまがお話しているシーンでは、ページをめくった時に自然と折りたたまれている部分が開くようになっているのですが、全部で3ページか4ページ分くらいあるような、大きなページへと広がるようなしかけになっていて、お月さまがとっても大きくページいっぱいに描かれていて、迫力満点です!
そして、お月さまが小さくなってから再びお月さまを取りに行き、小さくなったお月さまを持って帰ってきたお父さん。そのシーンも、ページが上から下へと開くしかけになっています。お月さまを取ってきたお父さん、とってもかっこいいです。そして、手に持てるくらいの大きさになったお月さまの変化が、非現実的だけれども夢に溢れていて、素敵で面白いと感じました。あんなお手軽な大きさになる月なら、一緒に遊んでみたいです。また、遊んでいるうちにさらに小さくなって消えてしまったお月さま。しばらくしてからまた空に浮かんで、だんだんと大きくなっていくお月さま。月の満ち欠けの神秘さが、女の子とのやりとりと、空に浮かんで大きくなっていく様子から強く感じられるように思いました。
このお話やカールさんのお話から、親の温かい愛と、子どもの夢の無限さがこの絵本から伝わってくるように思いました。
表紙・裏表紙から、絵の勢いと大きくダイナミックなお月さまが印象的で、一つの絵画のように感じます。絵もお話も、雄大さ・素敵な夢・希望、そしてお父さんの勇気・愛で溢れていますので、親子でエリック=カールさんの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
- 作品名:パパ、お月さまとって!
- 著者名:作/エリック=カール 訳/もり ひさし
- 出版社:偕成社