モラッチャホンがきた!
眠る前の読み聞かせタイムが大好きな子にピッタリ!モラッチャホンが君の隣にも来るかもよ♬
☆際立った特徴
- 謎の生き物「モラッチャホン」。悪者?怖い生き物?
- 寝る前の絵本タイムにピッタリの1冊。
- 絵の具の上からペンで線を描いて躍動感を出しているような描き方。色合いが独特で森の美しさや神秘的な雰囲気を感じる。
- 夜寝る前の絵本タイムはどの家も温かい明かりがポワッと光っているように描いている。”温かみのある空間”であり、”特別な時間”を表現している。
☆読み聞かせのポイント
- この本を読んだ後、「もしかしたらこのお部屋にもモラッチャホンが来ていたかもしれないよ」と話してみてください!小さな小さな妖精のような生き物です。人間には見えないだけで、もしかしたら側で一緒にお話を聞いていたかも・・・★嬉しい気持ちになります!
☆あらすじ
動物達が住む森がだんだん暗くなり、子ども達が眠る頃、3番地に住むウサギのエリザは一人で静かに本を読んでいた。
あっちの家でも、こっちの家でも、子どもはみんなベッドに入りおやすみ前の絵本タイム。
ドラゴンの冒険の絵本や、恐ろしい魔女が登場する絵本。海賊の絵本や可愛いお姫様の絵本を楽しんでいる。
どこの子ども達も、楽しくお話を聞いていた。
そんな時、モラッチャホンがどこからともなくやってきた。
エリザがお話に夢中になっていると、フワッとカーテンが揺れ、あっ!と思った途端、エリザが今読んでいた本が消えちゃった!
フクロウのお家でも、窓がガタ!と音がしたと思ったら、大事な本が消えちゃった。
リスのお家でも、風が激しく吹いたと思ったら、一番のお気に入りの本が消えちゃった!
それから毎晩事件が起こる。
あっちで6冊、こっちで5冊と、どの家の本も消えていく。
「もしかしたら泥棒がいるのでは?」エリザは謎を解こうと、よーく考えた。
ある晩エリザは泥棒の正体を暴いてやろうと、寝たふりをして待っていた。
すると窓から不気味な影が・・・。どんどん部屋中に影が広がる・・・。
「おどかしてもダメよ!もうやめて!みんなの大事な本をとらないで!」
見えない怪物にむかってエリザは叫んだ。
すると、「ごめんないさい!」と小さな小さな声がした。
それは小さな小さな生き物の”モラッチャホン”だった。
「悪いことだと分かっていたけど、僕にはパパやママがいない。誰も本を読んでくれないから」と涙を流して訳を話した。
可愛そうにと思ったエリザは思った。でもこのままではいけないよと教えた。
「人のうちにこっそり入ってはいけないよ。そして、勝手に本を取るのもいけない事だよ。」
二人はこれからどうしたらいいか考えた。そして、モラッチャホンがもらった本を全部元の家の、元の場所にそーっと返した。1冊残らず、一生懸命に。
そして本を返し終わると、森の動物達を集めてモラッチャホンがしてしまった事と、その訳をエリザが話し、モラッチャホンと一緒に謝った。
さて、それからは元通り。でも今までと少し違う事もあるよ。
それは、子どもがベッドに入り眠る前の絵本の時間になると、どこかの家でモラッチャホンは、その家の子ども達と一緒にお話を楽しんでいるという事。
みんなと一緒にお話を聞けて、とても嬉しそう。
☆書店員の感想
「モラッチャホン」というタイトルがとても面白いですよね。
イギリスの児童作家ヘレン・ドカティさんと絵本作家トーマス・ドカティさんはご夫婦だそうです。本書はイギリスではどんなタイトルで販売されているのか、すみません、私には分からないのですが、日本語で訳されているからでしょうか、「モラッチャホン」って「もらっちゃう」と「本」を掛け合わせた言葉に聞こえて、本書の中のモラッチャホンのキャラクターにピッタリだなと思ってしまうのは私だけでしょうか。たまたま・・・なのか、日本語訳をされた福本友美子さんの計らいなのか…。とにかくタイトルが面白いなと私は気になりました。
表紙を見てください。とても親しみやすくて可愛らしい絵本のタイトルと、ウサギと謎の生き物(じきにこの子がモラッチャホンだとわかるのですが)に惹かれて、私は本書を手に取りました。
きっと二人とも絵本が大好きなんだろうな。ウサギ(エリザ)が読んで聞かせてあげているんだろうなと、表紙からじんわりと優しさが伝わってきます。
本書は夜の読み聞かせの時間を「とても大切な楽しい時間」だと表現しています。
静かな森。おやすみ前のお話の時間の描き方がとても素敵だと思いました。それぞれの家のベッドルームで、子ども達は布団に入り、親がお話を聞かせ、子どもは耳を澄まして聞いています。子ども達は頭の中でお話を想像しながら、お話に入り込んでいるのがよく分かります。一人で読書を楽しむエリザもまた、本の世界に入り込んでいます。
それぞれの部屋に温かみを感じるし、読む人の声が読者まで聞こえてきそうです。自分がもし一人ぼっちなら・・・もしかして逆に孤独感で一杯になるかもしれません。
モラッチャホンが、勝手に本を取ってしまった訳。
一つの家だけでなく、みんなの家から次々に本を盗んでしまったモラッチャホン。もしかしたら、みんなの様子を見ていて、孤独感で一杯になったのかもしれませんね。みんなは家族に囲まれて、楽しそう、でも自分は真っ暗な外で一人ぼっち。
なんとも寂しくて、辛くて…仕方がない気持ちでいっぱいだったのかもしれません。
それならいっそのこと、みんなから奪ってしまおう!と悪い心がそっとモラッチャホンを突き動かしたのかもしれません。みんなの家から何冊も大切な本を盗み、自分の住み家に運んでしまいました。でも、きっとそんなことをしても心は満たされなかったのでしょう。
ウサギのエリザに「もうやめて!」と言われて、我に返ったモラッチャホン。訳を話す彼の眼には涙。孤独感と罪悪感と、寂しさで一杯だったんだな・・・と伝わってきます。
そして、みんなに悪いことをしてしまったと心から反省しました。
エリザとモラッチャホンが、これからどうしたら良いのか考えた結果・・・。森では素敵な変化が!!
盗んでしまった本たちは、全て残らずみんなに返しました。一生懸命働いて、そしてみんなに訳を話して謝りました。
動物達はとても優しく、モラッチャホンを許し、受け入れてくれました。そしてその日の夜から、どこかの家でモラッチャホンは眠る前の絵本タイムを一緒に過ごさせてもらえることになったのです。決まった家だけではなく、今日はこのウサギの家、明日は隣のフクロウの家と、その家の子ども達と一緒にお話を聞かせてもらえるようになりました。
一人で本を読むのも楽しいけど、誰かの声で優しく読んで聞かせてもらえる事も、また楽しさが違うのかもしれません。
もしかしたら、今あなたが本書を読んでいる間、モラッチャホンが横でそっと聞いていたかもしてませんよ。小さい妖精のような生き物ですからね。もしそうなら、なんだか嬉しいですね★
人生の中で親子で楽しむ絵本タイムはおそらく短い・・・です。ぜひ、沢山の絵本を一緒に楽しみたいものですね。
- 作品名:モラッチャホンがきた!
- 著者名:文 ヘレン・ドカティ 絵 トーマス・ドカティ 訳 福本友美子
- 出版社:光村教育図書