11ぴきのねこ
海で冒険したい子にピッタリ!ワクワクドキドキしたストーリーに出会いたい方におすすめ!
☆3つのおすすめポイント
- 11ぴきの冒険物語。それぞれが個性的で、みんなで協力する姿が見どころ。
- 怪物級の大きな魚の好きな歌は「ねんねこさっしゃれ」が、キーポイントです!
- シミジミした気分も、吹き飛ばしてくれるストーリー展開。
☆あらすじ
お腹がぺこぺこの11ぴきの、のらねこたちがいました。
1匹の魚を分けるにも、11匹もいれば食べる分は、ほんのちょっと。そこで、じいさん猫から良い情報を聞きました。
なんと、山の向こうの広い湖に、大きな魚がいるというのです。猫たちは力を合わせて、その魚を捕まえに行くことにしました。
お腹いっぱい魚を食べるために!
湖に来たものの、なかなか現れない大きな魚。辛抱強く待つことにしました。そこに急に飛び出したのは、”怪物級の大きな魚”!
お腹が減っている猫たちは、すぐに捕まえに行くのですが、大きな魚のパワーに撃沈。
諦めずに、次のチャンスの為に作戦を考えるねこ達。
そんな中、ギラギラ輝くおひさまに向かって、あの大きな魚が顔を出して歌を歌っています。
昔覚えた「ねんねこさっしゃれ」の歌でした。
敵は油断している!!と猫たちは飛びかかりますが、また撃沈・・・。3度目のチャンスは、ある夜にやってきました。
島の上で、大きな魚は眠っています。しめしめ・・・と近づき、追い打ちをかけるように猫たちは歌います。「ねんねこさっしゃれ」
その子守唄は大きな魚が好きな歌。すやすや深い眠りにつきはじめ、ねこたちは襲いかかります!!!
さぁ大きな魚は捕まえることが出来たのか。ねこたちはお腹いっぱいになれるのか。
☆際立った特徴
縦長のレイアウトを生かして、跳ね上がる大魚を獲物を仕留める様子や、大魚がギラギラ太陽に向かって歌う場面などが、ダイナミックかつ効果的に描かれています。
ペンやクレヨンで描いたような手書きのタッチと、ベタ塗りの色部分がマッチして、とっても優しい雰囲気をかもし出しています。
猫たちの表情も、一匹一匹みんな違ってユニークです。
じいさん猫の話を聞いているページだけでも、真剣な猫、面倒くさそうな猫、モノ言いたげな猫とさまざまです。シンプルな線だけで、これだけの表現力があるのはさすがです。
1回目の魚の捕獲に失敗した後の11ぴきの様子を見ると、それぞれの性格が、かなりよく出ています。悔しさが爆発して樽をパンチする猫、それに付き合う猫、足を負傷して寝ている猫もいたりして、ほんとに様々です。
本書で何度も登場する「ねんねこさっしゃれ」は、赤ちゃんを抱っこしたり寝かしつけたり、おっぱいをあげる時の【子守唄】です。
きっと大きな魚は、「ねんねこさっしゃれ」で、お母さんを思い出していたのでしょう。
「ねんねこさっしゃれ」は逆に大きな魚の弱点になり、猫達にそこを突かれたわけですが、弱肉強食の世界です。そんなこともあるな!と、シミジミした気持ちを吹き飛ばしてくれる、ハッピーなストーリー展開になっています。
後半でも「ねんねこさっしゃれ」の歌が出てきて、またシミジミとした気持ちにさせられるのですが、最後のオチでシミジミさを吹き飛ばしてくれます!
☆書店員の感想
ほのぼのとした表紙からは、想像もしなかったストーリーでした。最初は大きな魚を捕まえに行く冒険ストーリーかと思っていたのですが・・・
読んでいくと「ねんねこさっしゃれ」で、お母さんを想う大きな魚に「かわいい魚だなぁ。お母さんを思い出しているんだなぁ」とシミジミとした気持ちに・・・しかし、ページをめくると、猫たちがガブッと容赦なく大きな魚に襲いかかります。
切なく悲しかった私の心が、違う!悲しいストーリーじゃなくて、ドキドキワクワクなストーリーなんだなって、気持ちを引き戻してくれました。
読み終わった後は、大きな魚はいませんが、ねこ達の大きな”たぬきのおなか”が面白かった!と私をハッピーな気持ちにさせてくれました。
そして、何事にもめげない、諦めない猫達の姿に、とても勇気づけられました。
1人だったら猫達も怪物級の魚の獲得は無理だったかもしれませんが、11人揃ったら100万馬力!!11人揃えば、作戦のアイデアだってどんどん湧いてきます。
次は、どんな冒険をしてくれるのかなって、読み終わった後も、ワクワクがとまりません。
これは、私感ですが、描かれている太陽は大きな魚の”お母さん”を表しているのでは無いでしょうか。
もしかして死んでいるのかもしれません。どこかに生きているのかもしれません。
大きな魚にとって、いつも自分を見て、照らしてくれる存在の太陽を、自分のお母さんに見立てているのではないでしょうか。
本の中で、大きな魚は太陽に向かって顔を出して”ねんねこさっしゃれ”を歌っています。「おひさまが ぎらぎら かがやいています。」と文章にはあります。
しかし、私には、優しくふんわりと照らしてくれる太陽に見えてしまうのです。
著者の馬場先生は、どんな思いで描いたのでしょうか。それが知りたくて、私は何度も読み返してしまうのでした。
- 作品名:11ぴきのねこ
- 著者名:馬場のぼる
- 出版社:こぐま社