おはなをどうぞ
大好きな人にお花をあげたい、そんな優しい気持ちに包まれます。いろんな動物たちやキレイなお花に囲まれて、可愛らしい、心温まるお話です。
☆3つのおすすめポイント
- メルシーちゃんと、お母さんの愛情がたっぷり詰まったお話で、大好きな気持ち、お互いの優しさが溢れます。とても温かい気持ちになります。
- 表紙から目を引く綺麗さ、お話のイラストも動物やお花が可愛らしく描かれています。
- メルシーちゃんのかわいい思い。お母さんへの愛情と、お母さんからの愛情、作者 三浦太郎さんの、娘さんへの愛情がギュッと詰まったお話です。
☆あらすじ
メルシーちゃんは、お母さんにあげるお花を摘みに行きました。
たくさん詰んで、急いでお家に帰ります。
その帰り道、うさぎに会いました。
素敵なお花ですね、と声をかけられ、少しうさぎにも分けてあげました。うさぎの可愛い花飾りになりました。
次に、ライオンに出会います。
またまた素敵なお花ですね、と声をかけられ、まだたくさんあるので、少しおすそ分けしてあげました。素敵なお花のたてがみになりました。
次は首の長いキリンさん。メルシーちゃんのお花が素敵で、キリンにもまた声をかけられました。
メルシーちゃんはビックリしましたが、首に花を巻いてあげました。
メルシーちゃんの手には、残り1本の花だけになりました。
最後の1本となったところで、なんと象に出会います。
最後の1本、お母さんにあげるお花がなくなってしまう…。
けれど、心の優しいメルシーちゃん。象にお花をあげました。
メルシーちゃんの手には、お花が1本もなくなってしまいました。
寂しい気持ちで、うつむきながらお家に帰ったメルシーちゃん。お母さんに涙ながらにお話します。
「お母さんにお花をあげようとたくさん摘んだけれど、全部あげてしまったの。」
それを聞いたお母さん。
「私のお花はメルシーちゃん、あなたよ、ありがとう。」と優しく抱きしめてあげました。
お互いの優しい気持ちが伝わり、メルシーちゃんに笑顔が戻りました。
☆際立った特徴
お母さんが大好きなメルシーちゃん、お花をあげたいから、たくさん摘んで帰ろう、とお花を詰む優しい女の子です。
お母さんのために摘んだお花を動物たちにちょうだいと言われ、少しづつあげるメルシーちゃんの優しさにも、じんわり温かい気持ちになってきます。
明るくきれいな色の配色と発色で、お花畑のシーンも可愛く、ハッピーな気持ちになるイラストです。
動物たちも可愛らしく、メルシーちゃんの表情も豊かで場面ごとの気持ちが伝わってきます。
絵本は21×21㎝の大きさで、24ページになっています。
☆書店員の感想
●メルシーちゃんと、お母さんの愛情がたっぷり詰まったお話で、大好きな気持ち、お互いの優しさが溢れます。とても温かい気持ちになります。
メルシーちゃんは、お花畑でたくさんのお花を摘みます。大好きなお母さんへお花をあげて、喜んでくれるのがとても楽しみで、お母さんの笑顔を思い浮かべて摘んでいるのだろうな、とイメージが湧いてきました。
嬉しい気持ちで家に帰る途中、次々と動物たちに声をかけられてしまいます。
キレイなお花をたくさん持っていたら、素敵ですものね。
お母さんにあげるためのお花ですが、メルシーちゃんはとっても優しい女の子です。動物たちに順番にお花をあげていきます。
小さな子どもだったら、「お母さんにあげるから、だめ!」と言いそうですが、ニコニコとあげていくメルシーちゃん。キリン、象にあげて、手元に無くなってしまうとうつむいて寂しそうな表情のメルシーちゃんに、なんだか切ない気持ちを感じてきます。
お花が無くなってしまったけれど、その経緯をお母さんに話すと、「わたしのお花はメルシーちゃんよ」と優しく声を掛けてくれました。
お花は無くなってしまったけれど、優しくギュッと抱き合う姿に、胸が熱くなり、安心感を感じます。
●表紙から目を引く綺麗さ、お話のイラストも動物やお花が可愛らしく描かれています。
表紙の、たくさんのお花を持ったメルシーちゃん。メルシーちゃんより大きな花束を持っていて、きれいな色に惹かれます。お花の色は6色しか使われていませんが、その分まとまりがあるような、色同士が素敵な組み合わせになっているような感じがします。
メルシーちゃんのお花畑も同様に6色のみですが、そう感じさせない華やかさがあります。
お花の形もいろいろあり、メルシーちゃんもまるで1輪のお花のように、可愛くちょこんと座ってお花を摘んでいるようで、このページ全体がメルヘンで可愛らしいです。
動物たちも、オレンジ色のうさぎがぴょんとはねて可愛いですし、ライオンのたてがみがハート型になっているのも、ここにも「愛」がある感じに思えて、いいなと思いました。緑色のゾウも大きいけれど、優しい印象です。
決してたくさんの色を使っているわけではありませんが、色の組み合わせがとても素敵です。
お家に帰って、お母さんとギュッとして、メルシーちゃんが寂しい表情から笑顔になるようすも、親子の絆が感じられる優しい雰囲気になっています。
●作者 三浦太郎さんの、娘さんへの優しい思いがギュッと詰まったお話です。
絵本の最後と、のら書店のホームページにも、三浦太郎さんの「お花をあげたい気持ち」について書かれていました。
娘さんとよくスーパーマーケットに行く三浦さん。お母さんにお花をあげたいから買って、とよくせがまれたそうです。やはり子どもはお母さんのことが大好きで、好きという気持ちが「何かをあげたい」という気持ちになってあらわれるようです。生まれて初めてお花をあげたい相手はきっとお母さんなのでしょう、お母さんの笑顔は一番幸せで、とても大切なものなのでしょう、ということが書かれています。
お父さんやお母さんから見ると子どもの笑顔が一番だと思うのと一緒で、子どももお父さんやお母さんの笑顔が大好き!と思ってくれているのでしょうね。息子たちに怒ってしまうことが多いなとふと思い、反省したのですが、子どものことを思い出すと、やっぱり笑顔の姿が思い浮かびますね。これからもたくさんの笑顔に溢れますように、何をしたら喜んでくれるのかな、そう思う気持ちが「大好き」ということなのですね。
そして、三浦さんのお話には続きがあります。休日に娘さんと、思い切りお花を摘むために南房総に出かけたそうです。腕いっぱいにお花を摘んだ娘さんを見て、三浦さんもなんだか優しい気持ちになったそうです。メルシーちゃんがお花畑でお花を摘む姿や、大きい花束を持つ姿が、三浦さんのお話されている娘さんのことと重なって見えて、とても愛情いっぱいに感じました。
そういえば息子たちも、保育園から帰ってきたら、何かを作ったとき一番に見せてくれたことを思い出します。そして、ニコニコの笑顔で、「これ、お母さんにあげる」と言ってプレゼントしてくれたこともありました。長男はよく似顔絵も描いてくれて、次男はおままごとのごちそうをよく作ってくれます。(笑)そんな些細な出来事も、毎日の生活の中で溢れているのですね。この絵本を通して、子どもたちとの日常の一コマも温かい目線で見られるようになるような気がしました。
三浦さんや娘さん、メルシーちゃんとお母さんの、みんなの優しさがぎゅっと詰まった、心が温かくなる優しい絵本です。
- 作品名:おはなをどうぞ
- 著者名:三浦太郎
- 出版社:のら書店