おやすみなさい おつきさま
眠る前の読み聞かせにピッタリ!心地の良いリズムで身の回りのものに「おやすみ」と挨拶します。みんなも一緒に寝るからね、安心して眠っていいんだよ★
☆3つのおすすめポイント
- 広い緑のお部屋で、うさぎの子どもが眠りにつこうとしています。目を閉じる前に、ベッドから見える部屋の物や景色を、一つずつ確かめていきます。
- 「おやすみ お部屋」「おやすみ お月様」と、一つずつに挨拶をします。そして、うさぎの子どもも、眠りについていくのです。
- 小さな頃、眠りにつく前に、『まだ、眠りたくないな』『なんか目を閉じるのが怖いな』と思った事はありませんか?そんな子に、「大丈夫よ。お部屋のみんなも眠りに着くからね。安心しておやすみなさいね」と優しく語りかけてくるように感じます。
☆あらすじ
大きな緑のお部屋。床は赤色です。うさぎの子どもがベッドに入って眠ろうとしています。
うさぎは周りを見渡しました。お部屋の中には色んな物が沢山あります。
電話が一つ。赤い風船一つ。絵の額が二つ。それは、牝牛がお月様を飛び越す絵と、三匹のくまが椅子に腰かける絵。
子猫の二匹が、暖炉の前でじゃらけて遊んでいます。そこに干してある手袋が一そろい。
くしとブラシ・おかゆが一椀がテーブルの上のライトに照らされて置いてあります。
うさぎのおばあさんは、ロッキングチェアに座りながら、ゆったり編み物をしていましたが、騒ぐ子猫たちに小さな声で「しずかにおし」と言っています。
そんな様子を静かに見ていたうさぎの子どもです。
『おやすみ、お部屋。おやすみ、お月様。おやすみ、あかりさん。おやすみ、赤い風船。おやすみ、くまさん。おやすみ、椅子さん。おやすみ子猫さん。おやすみ、手袋。おやすみ、時計さん。おやすみ、靴下。おやすみ、くしとブラシ。おやすみ、誰かさん。おやすみ、おかゆさん。おやすみ、おばあさん。おやすみ、星さん。おやすみ、夜空さん。おやすみ、そこここで聞こえるお友達。』
うさぎの子どもはみんなに挨拶をしながら、ゆっくり眠りについていくのでした。
部屋の明かりも消え、子猫たちも眠っています。窓の外から月と星が、うさぎの子どもを見守るように優しい光を照らしています。
☆際立った特徴
1947年にアメリカで刊行された絵本で、イギリス、フランス、スウェーデンなど、世界各国で読み継がれてきた、現在に至るまでずっと支持され続ける、超ロングセラー絵本です。 日本語版の初版は1979年。今から眠りにつこうとする子うさぎが、目に映る色んなものに「おやすみ」を言います。
ページをめくるごとに、カラーとモノクロが入れ替わり、だんだんと時間が経過し、うさぎがだんだん眠くなっていく感じを、部屋を少しずつ暗くしていくことで表現しています。そして、穏やかに眠りにつくうさぎです。
アメリカでは1000万部以上売れているという、寝かしつけ絵本の定番中の定番です。英語の原文では、『GOODNIGHT CHAIR』『GOODNIGHT BEAR』といった風に、心地よい韻を踏んだ文章になっており、訳者の瀬田貞二さんが、その心地よいリズムを壊さぬよう、訳されています。
読む声・そしてだんだん暗くなっていく部屋の様子に、読んでいる子ども達も穏やかな眠りに誘われていくのかもしれません。
参考文献)KUMONがうた・読み聞かせを応援【ミーテ】世界で読み継がれるおやすみ前の定番(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.47)「おやすみなさい おつきさま」
☆書店員の感想
広い緑のお部屋で、うさぎの子どもが眠りにつこうとしています。目を閉じる前に、ベッドから見える部屋の物や景色を、一つずつ確かめていきます。
大きな緑のお部屋の中にあるベッド。そこでうさぎの子が眠ろうとしています。ここはうさぎの子の部屋なのでしょうか。大きい部屋で、幼い子どもが一人で眠るのは、日本ではあまり馴染みがない光景かもしれません。本書が作られたアメリカの生活スタイルで描かれているのですが、ちょっと想像を膨らませてみましょう。
一人で眠るには、なんだかちょっぴり心細いですね。目を閉じてしまったら、物音一つでも驚いてしまうし、もしかしたら怖さを感じる事もあるかもしれません。幼い子どもならなおさら。
それは、実は日本の生活スタイルでも、同じことなのかもしれません。子どもって、目を閉じるのを嫌がることがあります。大人は、さあ、寝よう!と思ったら目を閉じて、眠りにつくのを待つことができます。
しかし、子どもは眠るギリギリまで目を開けていて、限界ギリギリでようやく目を閉じて眠ります。もしかすると、目を閉じて眠る時を待つことは、子どもにとって、怖い事・不安な事・もっと遊びたいのになと寂しい事・・・なのかもしれません。
さあ、本書のうさぎの子は、眠る前に何をするのでしょう。
まず、ベッドに入って周りを見渡し、身の回りのものを一つずつ確かめていきます。どんな物がどこにあって、絵には何が描いてあって、おばあさんはどこにいて、子猫たちは何をしているのか。
確かめて分かったことは、目に映る物全てが馴染みのある物で、聞いたことのある音で、どれも安心できる物ばかりだという事・・・だったのかな?
「おやすみ お部屋」「おやすみ お月様」と、一つずつに挨拶をします。そして、部屋がだんだん暗くなっていくように描かれていきます。きっとうさぎがだんだん眠くなってきたという事でしょう。そして、挨拶が終わる頃、うさぎの子どもも、安心して眠りについていくのです。
まだまだ部屋が明るく、子猫たちがじゃれて遊んでいます。窓を見ると、今まで星しか見えなかった夜空に少しずつ月が登ってきました。もう、夜なんだな。眠る時間なんだな。と、うさぎの子は感じたのでしょうか。「おやすみ お部屋」「おやすみ おつきさま」と、うさぎの子が見た物に一つずつ語りかけていきます。口に出していたのかな?もしかすると心の中で語りかけていたのかもしれませんね。
少しベッドの上で動いてみたりするけど、うさぎの子の体はもう眠りにつく準備を始めています。「なんだか疲れたな。横になりたいな。」と体が言っているようです。ベッドの上で少し動きながら、「おやすみ」と身の回りのものに、1つずつ語りかけます。
だんだん、夜が深まってきました。子猫たちもじゃれるのを止めて、暖炉の前のじゅうたんでゴロンと横になっています。そして自分だけじゃなく、身の回りの物も、部屋にいた猫も、空の月も、みんなに夜が来て、”みんなと一緒に寝るんだ”と安心感に包まれていきます。そして暖炉の光と温かさが、心と体を包み込んで、うさぎの子は眠りにつくのです。
小さな頃、眠りにつく前に、『まだ、眠りたくないな』『なんか目を閉じるのが怖いな』と思った事はありませんか?そんな子に、「大丈夫よ。お部屋のみんなも眠りに着くからね。安心しておやすみなさいね」と、本書は優しく語りかけてくるように感じます。
部屋中の物に、ベッドから見える星やお月様に、「おやすみ」と語りかけていくのですが、返事はもちろん聞こえません。でも、うさぎの子にきっと全てが『おやすみ!うさぎの子★僕たちも眠るよ。だから安心してゆっくりおやすみなさい』と返事をしていたのではないでしょうか。
ゆっくりゆっくり時間が経過し、ゆっくりゆっくり月が登り。月明かりがうさぎを照らし、部屋が暗くなり、とうとううさぎの子は眠りにつきます。
本書を読む子ども達もきっと、うさぎの子と同じように眠たくなってくるのではないでしょうか。きっとそれは『眠ってもいいんだよ。みんなも寝るからね。安心して眠りなさい★』と本書からのメッセージが自然と読み手に伝わってくるからなのかもしれませんね。
- 作品名:おやすみなさい おつきさま
- 著者名:作 マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵 クレメント・ハード 訳 せた ていじ
- 出版社:評論社