かぜひき ころわん

ユーチューブで絵本専門書店員が詳しく解説しています

秋が深まってきた頃にピッタリ!風邪ひいていませんか?『手当て』の優しさを感じてください★

☆3つのおすすめポイント

  1. 犬のころわんが風邪をひいてしまいます。人間と同じように心配して看病するお母さん。子どもを思う気持ちはみな一緒ですね。
  2. ころわんは人生で初めての注射を体験します。お薬を飲んでゆっくり休んで、またいつものように、お友達と元気に遊べるかな?
  3. 色鉛筆で線の一本一本を丁寧に塗り重ねた画法。元気に走り回るころわん・注射を打ってもらい痛くて怖い気持ちをおさえているころわん。ころわんを寝ずに看病するお母さんの感情が、1本1本の線から伝わってくるようです。

☆あらすじ

北風がひゅるひゅるーと吹く冷たい日、ころわんは「ハクショーン!!」と大きなくしゃみ。しかし、「お母さん遊びに行ってきまーす」と出かけてしまいました。

お友達のちょろわんと遊んでいると、鼻水が・・・。「お家に帰って休んだら?」「平気平気!」でも今度は鼻水が、ぐすん、ぐすん、じゅるじゅ・・・。なんだかちょろわんの顔も地面も揺れて見えます。なんだか変だな。「ぼく、やっぱり帰るね。ばいばい・・・。」

お家へ帰ったころわんは、ぐったり横になりました。お母さんは心配です。「今日はやっぱり静かに休ませておけばよかった・・・。」

しばらくすると自転車に乗ったお医者さんが来ました。そうっとそうっと、ころわんを抱き上げ様子を見てから、「かわいそうに。風邪を引いたんだね。お薬を飲んでゆっくりやすみなさい。今日は注射をするよ。」と話しました。(ちゅうしゃって何だろう?)

ちっくん。「きゅん・・・。」

「よく頑張ったね。えらいえらい!お大事にね」とお医者さんは言うと帰って行きました。

お薬を飲んだころわんはゆっくり眠りました。お母さんは寝ないでころわんを見守っていました。

そして、何日かたちころわんは、すっかり元気になりました。「わんわんわん!お母さん遊びに行ってくる!」元気に外に行くと、お友達の猫やちょろわんが集まってきました。

「おくすり苦かった?」「ちゅうしゃ痛かった?」ころわんは病気の話をみんなに聞かせてあげました。そして、いつものように、ころころ駆け回って遊びました。

かぜひき ころわん 表紙

☆際立った特徴

風邪を引いたころわん。くしゃみしているのに遊びに行っちゃって悪化しちゃったのかな?ころわんがだんだん幼い人間の子どもに見えてきます。そして見守るお母さん犬。わが子が風邪をひいた時の自分と重なって見えてきます。

子どもは元気に遊んでいるほうがいい!でも、調子が悪いことに気が付かないで遊んでしままうこともあります。そこがまた子どもらしいから仕方がないかなあ。なんて思って見送る、ころわんのお母さん犬と共感して読みました。子どもが読めば、きっところわんに共感するのでしょうね。

読む人によって見え方・感じ方が違う絵本「ころわんシリーズ」。秋が深まった頃にピッタリの1冊です。

☆書店員の感想

人間に抱きかかえられているころわんが表紙に描かれています。そおっと怖がらせないように包み込んでいるのは、聴診器をつけた動物のお医者さんでした。優しい手で包まれるころわんは、少しびっくりしているような、でも安心したような、そんな表情です。

私は表紙を見た時に『手当て』という言葉がピッタリな絵だなと思いました。

”手を当てる”ことで、不安やストレス、辛さ、寂しさなどを和らげる効果が『手当て』にはあると聞いたことがあります。このお医者さんもきっとそうして、ころわんの気持ちに寄り添ってあげたんだろうなと感じました。

注射は痛そうでしたが、がんばったね、えらいえらい!と誉められたら、きっと嬉しかったでしょうね。

そして今度はころわんのお母さんが傍に寄り添って、ころわんを看病するのです。自分の体で包むように寄り添って休む様子を見ていると、ころわんのお母さんの愛情が伝わります。

お医者さんはお薬や注射で体を治し、お母さんがころわんの体と弱った心の回復を見守り寄り添う。双方が揃ったことで、すぐに回復したころわん。元気がいいころわんに戻った事がお母さんに取ったら1番のプレゼント。

そして、元気になったころわんは、お友達に病気だった時の事を話します。もしかしたら自慢げに話していたのかもしれませんね。そこがまた子どもらしいなって思いました。病気になった辛さより、病気になったことで体験した注射やお薬の話をする子どもは、きっと大事に看病してもらって嬉しかったというのが、心に残っているのでしょうね。

●本書の絵を描かれた黒井健さん。本書は全て色鉛筆で描いているそうです。率直に「信じられない!!」という気持ちです。どうやったらこんなに繊細に優しく表現することが出来るのでしょうか。絵のド素人の私には全く分析出来ません。線の1本1本が生き生きとしていて、まるで本物みたい。そして読者もふわっと包み込んでもらえるような優しさに満ち溢れているようです。

読んでいる私も、ころわんを見守る一員。その私を包み込んでくれるような優しさにあふれた絵本です。

かぜひき ころわん 裏表紙
 あれ、風邪うつっちゃったかな・・・
よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。